(……アルベート達が戻って来るまでに、終わってくれたら良いんだけど、ね)
「ていと、の、ときとく、らべて、やっぱ、のぼり、つらい……わっ!!」
そう言って次の石壁に足をかけた瞬間、足場が崩れ落ちあわや滑り落ちる所であった晶子。額から流れ落ちる汗を拭う事も出来ず、息を潜めて音も無く落ちていった瓦礫を見送った。
(……あっぶなかった……)
直前に掴んでいた石壁部分が頑丈だったおかげで大きく体制を崩す事は無かったためホッと息を吐き、忙しなく鳴り続ける心臓を落ち着かせようと何度も深呼吸を繰り返す。
この高さから落下してしまえば、例え晶子の力でも無事では済まないだろう。
(ハーミーズとは和解? が出来てるから、帝都の時と違って風を操っても平気かもしれないけど……絶対に大丈夫! って言える自信ないし)
なにより、あの応用を試したのは、見張りの目を避けて皇帝の私室から逃げ出すときの事。今と状況の緊迫感がまるで違うのもあり、不用意に不確定要素のある行動は控えるべきだと思い至ったからだ。
そうして暫くその場に留まっていた晶子だったが、上層の方から落雷のような音が轟いたのに驚き一瞬手から力が抜けてしまう。
「おぎゃ!?」
ふわっと浮き上がる感覚に全身から血の気が引いた晶子は、奇声を上げながら慌てて腕を伸ばし壁に爪を立てた。
力が入り過ぎていたせいで僅かに爪が剥がれかけたようなピリッとした痛みが走るが、それよりも体を何とか固定しようと必死になって壁に身を寄せて張り付こうとする。
「あ、あああああぶあぶあぶぶぶbbbb」
震えにより言語化も出来ない呻き声を上げ、鼓動は先ほどよりも早鐘を打つ。危機一髪の状況を何とか乗り切った晶子は、このままでは上層で起きている戦闘の余波で振り落とされかねないと、急ぎ壁登りを再開した。
(まーじで今危なかったんですが!? 瞬時に壁を掴めたから良かったものの、今ホンットに堕ちるかと思ったんだけど!? てか指!! 爪!! 剥がれ取れるかと思ったわ!!)
ジンジンする指先を一瞥し、その地味な痛みに涙目になりながら晶子は壁を登っていく。
(……にしても、さっきの爆音はハーミーズの魔法か? 雷っぽいエフェクトがあるのって風だよね? 鑪さんの秘技は土属性オンリーだし、他の属性魔法にもそれっぽいのはなかったはず。あるとするなら、魔道具達の秘技くらいかな)
WtRsには雷や電気といった属性は存在しない。つまりあのゲームの元となっているこの世界の魔法にも、それらの属性魔法はないはずなのである。
それらしきエフェクトや名前を持つ秘技・魔法がある事にはあるが、大抵は風属性魔法、もしくは光属性魔法に分類されていた。
WtRs内で最も有名な例を挙げると、荒れ狂う嵐を呼び起こす風魔法・トルネード、天より悪しき者を焼き焦がす雷を招来する光魔法・ホーリーライトニングといった具合である。
(って、今はそんなのどうでも良いんよ!! 早いとこ合流しないと!!)
止めていた手を再び動かして上を目指し始める晶子。しかし、いくら急ごうともたかが知れており、中々近づかない目的地に焦燥だけが募っていく。
(どうしよ……今からでも中に戻って階段使う? いやでも、この暴れ具合からして仮にゼファーちゃんがトラップシステムを止めてたとしても、緊急事態ってので勝手に作動する可能性もある。そんなのにぶち当たったら逆に時間をとられる可能性も……あ~もう!! 頑張れあたし! 何とか状況を打破する方法を捻り出せ!!)
「~~♪」
額から流れ落ちる汗を拭いもせず、ただ悶々と考え込みながら手と足を動かしていた晶子の耳に、名前を呼ぶようなハミングが聞こえた。
「この歌……!」
「晶子! おま、なんっちゅーとこにいんだよ!?」
「アルベート! それに、天使ちゃん!!」
顔だけ振り返って辺りを見回した晶子は、今しがた通り過ぎたフロアの中から飛び出して来た天使型魔道具と、それに抱えられているアルベートを見つけてぱっと表情を明るくする。
「どうしてここに?」
「居住区にいた人間達を避難させてたんだよ。ゼファーの嬢ちゃんが中枢のあるエリアなら戦闘してる上層と距離もあるし、なにより他のフロアと違って造りが多少頑丈なはずだからってな」
(確かに。なんてったって施設の底の部分、おまけに一番大事な中枢がある区域なんだから、頑丈なのも当たり前だわな)
避難場所としては妥当だなと思い、アルベート達がこの階にいる理由にも納得した。そんな晶子に、天使型の魔道具が手を伸ばしてくる。
「! もしかして」
「連れてってくれるんだとよ。というか、何でお前はこんな所よじ登ってんだよ」
「端的に言うとハーミーズに置いて行かれてさ。追いかけようと思って転送装置使おうとしたんだけど、何でか使えなくなっててさ」
差し出された手を取る前に、晶子は外壁を登っている訳を話す。出来るだけ簡潔に説明をしたが、アルベートは意味が分からないと言わんばかりに終始首を傾げていた。
「鑪があぶねぇって知って、すっ飛んで行っただぁ? あのハーミーズがか??」
「そうなのよ。不仲アピールを自分でしてるわりに、なんだかんだ仲間の事は大事なのかわいいよね~」
なんてハーミーズの行動に思わずほっこりしてしまった晶子だが、あまりにも暢気な様子にアルベートが呆れたと言わんばかりに溜息を吐いた。
「んな事言ってる場合じゃねぇだろ……あの飄々とした掴みどころのないハーミーズがそんだけ慌ててるんだ、相当やばいってこったろ?」
「はっ! たしかに!? ごめん天使ちゃん! 大至急上の居住区まで連れてって!!」
「♪~♪~!!」
こんな所で話をしている場合ではないと状況を思い出した晶子が伸ばされた手を取って壁をければ、天使ちゃんと呼ばれた魔道具はその勢いのまま高く飛び上がる。
片手にアルベート、もう片方の手に晶子というなんともアンバランスな状態にも関わらず安定感は抜群で、瞬く間に最上階よりも遥か上空へと到達した。
「おぅっわ!? ま、前に運んでもらった時にも思ってたけど、君って力持ちだね~……」
「~♪」
晶子の言葉に天使が自慢げなハミングを返したのに苦笑すると、そのまま居住区を見下ろした。
「ひどい……」
居住区にあった家々は激しい戦闘によって跡形も無く破壊され、魔道具達と人間達が丹精込めて育てていた菜園も無残な姿になっている。
床も巨大なクレーターがいくつも出来上がっていて、今にも崩落してしまいそうだ。
「っ! 晶子、あれ見ろ!!」
冷静に居住区を見回していたアルベートが、ある一点を指さして叫ぶ。指差された先に視線を向けた晶子は、そこにあったものに口元を引き攣らせた。
「なっ、なんっじゃありゃぁ!?」
居住区の中心部、そこに高く聳えるようにして一本の塔が——正確には、ラニアの取り巻き達が変わり果てた姿となって積み上がっていた。
施設内にあったと思われる謎の機器に無理矢理溶接され、更に縦に積み上げられた魔道具達。
「ア、ア、ああ、あああ、あ、アア、ああ、あ、あ、ア」
「grvくytyvsd」
「wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
「ヒ、ヒヒ、h、hh、ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ、キヒ、ききkkひ」
虚ろで無機質な表情を浮かべる者、意味のない言葉を繰り返す者、不気味な笑い声を上げる者など様々ながら、時折何かを叩き潰すようにして体のあちこちに接続されている極太ケーブルを振り回している。
(な、なんであんな姿に!? ついこの間までは普通だったのに!!)
予想だにしていなかった取り巻き達の姿に困惑する中、晶子の視界に何かが飛び回っているのに気が付いた。
よく目を凝らして見れば、その正体は晶子よりも先に飛び出して行ったハーミーズだった。
「スクリューカッター!!」
ハーミーズは掌の上で小規模な竜巻を発生させると、取り巻き達に向かって放つ。竜巻は凄まじい速さで向かって行くも、振り下ろされた一本のケーブルによってあっさりと霧散した。
「居合刀技・四閃!!」
それを見逃さなかった鑪がハーミーズの後ろから現れて秘技を閃かせると、巨大生物のように動き回っていたケーブルは本体から切り離され、バラバラにされた。
「「「「「「「「「「xfwcいみゅんtybrてvrc“#$$U&%jyd!!」」」」」」」」」」
体の一部を斬り落とされた事に激怒したのか、取り巻き達は一斉に理解不能な言葉の羅列を叫ぶと、他のケーブルを上へと伸ばす。太くふとく束ねられたケーブルはその先端を鑪とハーミーズの方へ向けたかと思えば、物凄い勢いでマナエネルギーを集束させていく。
(っ! あれはダメ!!)
「鑪さん、ハーミーズ!! それを施設に当てちゃダメ!! 衝撃で崩壊する!!」
膨大なマナの気配に晶子がそう叫べば、強力な技が来ると見越して回避の構えをとっていた鑪とハーミーズがハッとしたように顔を上げた。
「くっ……!」
「くっそ!!」
今にも弾けそうな程に高まっているエネルギーを確認し、鑪達はすぐさま攻撃を受け止める防御形態に移る。
そしてその行動を待っていたかのように、取り巻き達は十分に集まったマナエネルギーを躊躇いもなく鑪達に向かって照射した。
「あかんあかんあかん!!」
「晶子!!」
呼び止めるアルベートの声も無視して、晶子は天使から手を離すと重力に任せて落下する。
幸い、晶子が飛び降りる気配を察していたのか、いつの間にかやや高度を落していた天使のおかげで怪我をする事無く着地する事ができた。
まだ少し残っていた草地を転がりながら落下の衝撃を緩和し、瞬時に体勢を整えた晶子は胸元で静かに輝き続けるブローチを引き千切る。
「まにあ、え!!」
掌の中で錫杖へと形を変えたその石突を力いっぱい床に叩きつければ、罅割れた石タイルの隙間を晶子のマナが流れていく。
幾重にも枝分かれする川のようになったマナは鑪達の足元にまで流れ切ると、瞬時に半透明の膜を形成し二人の英雄を包み込んだ。
直後、ドーム型になったマナの膜に放出された大量のエネルギーが直撃した。
しばらく均衡を保っていた二つのマナの力。だが過剰な力同士のぶつかり合いによって高められたエネルギーは行き場を失い、やがて大きな爆発を起こす。
「ぐっ……おまえら、無事かー!?」
凄まじい土煙に視界が遮られる中で聞こえて来たアルベートの声に、晶子は口元を覆いながら前を見据えた。
(ギリギリ、間に合ってたよね? レーザーがぶち当たるところは見えてたし、破れられたような感覚も無かったけど……)
鑪達の反応がない事に一抹の不安が過ったが、段々と晴れてくる視界に映った背中にホッと息をついた。
「よかった……二人共無事で」
咄嗟の事だったゆえ、あのマナエネルギーに耐えうるだけのシールドを張れるかは一種の賭けだった。だが無傷な様子の二人を見て、なんとかシールドを発動させられたのだとホッと胸を撫でおろす。
「ありがとう晶子!」
「助かった。礼を言う」
傷一つ無く危機を脱した二人がこちらを振り向いて感謝を述べるので、晶子は手を振りながら気にするなと言外に告げた。
(にしても、これマジかぁ……)
取り巻き達と距離が離れている為にその全容が良く見えた晶子は、あまりの悍ましさに眉を顰める。
晶子が彼らと最後に顔を見せた時には、まだ意識も自我もはっきりとしていて、受け答えも問題なく行えていた。しかも、たった二日前の話である。
(あれから大して時間が経ってないのに、一体何時こんな姿になったの? そもそも、こんなデカブツ、どこに隠れてたわけ??)
元魔道具研究所は存外に狭い。最上層には言わずもがな攫われて来た人間達の居住区があり、一つ下の階は魔道具達に演説をした広間や魔道具達の休息用スペースが置かれ、中層は食糧庫などのエリアとなっている。
そのさらに下にラニアのアトリエがある層が重なり、ゼファーのいる中枢を中心とした物置部屋が乱立している。
どこも元は研究用の実験体を収容する拘束部屋であったり、解剖を行う手術室だったようだが、それらしい痕跡は何一つ残っていない。
(こんなデカさのもんを置ける場所なんて、この施設にはない……!!)
不意に、晶子の視界の端にある場所が映る。取り巻き達の背後に隠れるようにしてある、ラニアのアトリエへと繋がる大穴だ。
(まさか、あそこから? でもあそこには、シャニ―ツリーが……いや、あの部屋はツリーを含めてもかなりの広さがあった。それにこいつらは縦には長いけど、横はそれほど大きくも無い。上手く収めれば隠し通すには十分)
シャニ―ツリーがあったのはアトリエの中央ではあったが、晶子の考えている通り然程幅をとらない者であれば十分収納できる程度の広さはあった。
となれば必然と、取り巻き達をこのような姿に変えた者は限られてくる。
(ラニア……)
アトリエの場所を知るのは部屋の主であるラニアと研究所の核であるゼファー、そして直々に案内された晶子だけだ。
晶子自身が取り巻き達に部屋を教えた事は無いし、ゼファーにも口酸っぱく言い含めた事もあって彼女が話した可能性は低い。
(って事は、やっぱりラニア自らが取り巻き達をアトリエに入れたって事になる? そうじゃなきゃ、この研究所内でこんな大掛かりなもん作ってたらすぐにバレるし、隠せるわけないもんね)
魔道具達は研究所の各所に損傷や劣化が酷くなっていない場所が無いかを定期的に見回っている。著しい損壊が発見されれば速やかに修理工の魔道具が動かなければならないため、必ずどの階も誰かしらが最低二体はいるのだ。
それが唯一免除されているのが、アトリエのある二階部分なのである。
(まじかよ……こんなタイミングで彼女に裏切られんの? 冗談きついんですけど……いやまあ、裏切りとはちょっと違う……いやあたしに敵対するようなことしてるんだから裏切りであってるか??)
ラニアの行動原理が謎過ぎて裏切られたと言って良いのか分からず困惑する晶子。
「———————」
「ん?」
その時、不意に晶子の耳に取り巻き達の声が聞こえた。それは他の者達と比べても比較的鮮明で——。
「いだい、なる、アクラニャ―————その、しんずい、を、みよ——」
「われわれ、こそ、このよ、の、すべて、を、しょうあ、く————」
「きゅ、さい、を————じんる、いに、しんせい、を、あたえ、ん」
「ちつじょ、も——へ、いわ、も————われらのて、のう、ち、に」
「そして——きょがくの、とみ、も————」
聞こえて来た一つ一つの単語に、晶子は無意識に手を握り締める。
(これって……)
同時に、まだ若干の自意識が残されている様子の彼らを見て、一つの仮説に思い至った。
(こいつら、まさかとは思うけど……元アクラニャー研究所の研究員達?)
かつて慈善を謳いながら身よりなき者達を兵器へと改造した悪しき所業、その一旦を担っていた者達の成れの果てがこの姿だとしたら。
(……アルベート!)
晶子は未だ空の上にいるアルベート達に向かって念話で語り掛ける。
(どうした晶子)
(あのデカブツの後ろに穴があるの見える?)
(……おう! あのでっかいやつだな?)
(その先に、壁一面本棚になってる広い部屋があるの! 多分ここが魔道具研究所だった時の資料とかが保管されてると思うから、その仲からアクラニャー研究所の所属者リストを探してきて!)
書斎の本棚の中にはそれらしいものは何も残されていなかった。それは誰かが処分したのかもしれないが、もしそうでないとしたらどこにあるか。
(所属者リストぉ~? そんなもん、なんで今必要なんだよ?)
(良いから! 確かめたい事があるの!!)
(ったくよぉ、相変わらず人使いの荒い奴だこって……ちょいとばかし時間がかかっちまうかも知れねぇぞ!?)
「はは……あんたが帰って来るまでには終わらせとくわ!」
そう言って、晶子は鑪達を覆っているシールドを解除すると、天高く錫杖を掲げた。
瞬時に錫杖の先へ空気の塊が形成され、丸い球体の中では不規則に稲光が走る。
「エアロバースト!!」
空気の球を取り巻き達に向けて撃ちだせば、ハーミーズの時と同じようにケーブルの一本が叩き壊そうと動き出した。
しかし、ケーブルが触れたその瞬間空気の球は膨張したように膨らみ、巨大な爆発を起こした。
「「「「「「「ギギギギイッギギイッギギイギギギギギギギ!!」」」」」」」」
軋むような音を鳴らして、取り巻き達が悲鳴を上げる。今の爆発は取り巻き達の体の一部とケーブルを幾本か吹き飛ばしたようで、中には爆発に巻き込まれて物言わぬガラクタになり下がった個体もいるようだった。
(行って!!)
(あいよ!)
晶子の合図とともに、アルベートは天使に指示を出すと目にも留まらぬスピードで穴の中へと急降下していった。
(おわ!? こいつぁシャニ―ツリーか!? こいつ絶滅したって聞いたことあるが、実在してたのか!?)
聞こえて来たアルベートの驚愕する声に、晶子は大事な事を告げるのを忘れていたと頭を抱えた。
(そうだったアルベート! その木はラニアが大切な人から貰った物らしいから、傷付けちゃ駄目よ!! 偉大なる大冒険者はそんな事しないと思うけど!!)
(あああああ、あたぼーよ!! お、俺様は大大大冒険者のアルベート様だぜぇ!? 人様のもんを取ったりはしねーよ!)
(焦り過ぎな??)
希少植物を目にして自称トレジャーハンターの血が騒いでいたらしく、晶子からの忠告に少々挙動不審な返事をしたアルベートに思わず苦笑する。
「晶子、アルベートに何をさせようと?」
シールドを解除しながら隣に並び立った晶子に、鑪が目線も寄こさず問いかけてきた。
「ある仮説に思い至ったから、その答え合わせが出来るものを探しに行ってもらったの」
「仮説?」
「それはまた説明するから。今は目の前に集中して」
「……相分かった」
未だ蟠りが残ったままゆえ素っ気ない態度になってしまったが、そんな晶子に文句の一つも言う事無く鑪は素直に引き下がる。
(うっ……大人げないとは分かってるけど、やっぱまだ色々整理がついて無いから堪忍してちょーだい……)
どことなく触覚が下がっているように見えてしまったせいで若干の罪悪感を覚えたが、それはそれだとして晶子は無視を決め込んだ。
「それで——二人共、まだいける?」
「無論」
「はは、心強い味方が来てくれたからね。ここで踏ん張らなきゃ、英雄の名が廃るってもんだろ?♪」
問いかけに言葉少なく答えて刀を構え直した鑪と、軽口を返しながらお手製ハープにマナの弦を張り直すハーミーズ。やる気十分な様子の英雄達を見て、晶子はふっと笑いながら巨大な敵を見上げて錫杖を肩に担いだ。
(……アルベート達が戻って来るまでに、終わってくれたら良いんだけど、ね)
情報も何もかもが足りない未知数な相手に、知らず知らずのうちに冷や汗が流れ落ちる。
(とにかく、やるっきゃない!!)
目的の物をアルベートが持ち帰ってくれるまで時間を稼がなくてはと気を引き締めた晶子と鑪達に向かって、爆発を免れた数本のケーブルが叩きつけられた。
次回更新は、6/12(金)予定です。




