課題
「今日はアネモネを送るの?」
花畑でやっとお目当ての花を見つけて写真を撮る僕に綾瀬は横に座った。
「そうだね。ちょっと探すの手間取ったけど、綺麗だなぁと思って。」
「どんどん藤井君花覚えてきたね。ビックリするくらい。少しその記憶力欲しい。」
綾瀬はニカッと笑うとアネモネを愛おしそうに触った。
僕はその姿につい写真を撮ってしまった。
「あ!!今勝手に撮った!」
綾瀬は脹れた顔で僕を見て、つい僕はその脹れた頬をプスッと押した。
思ったように脹れた頬が萎む。
それが面白くて笑ってしまう僕。
「もうもう。」
綾瀬はそっぽを向くと子犬のところへ行ってしまった。
僕は携帯でメールを送る準備をして、いつものように母親にメールを送る。
ただ今日は一言だけ付け加えて。
『毎日返事がないか確認している自分がいます。最初に送った花をご存知ですか?』
僕は送信ボタンを押すと立ち上がり綾瀬のご機嫌取りに向かう。
「ごめんって。怒らせるつもりはなくて」
「嘘だよ。怒ってない。」
綾瀬はこっちを向くと本気じゃないと無邪気な顔を見せる。
「それにしても、お母さんからメール来ないね。いっそのこと電話しちゃうとかどう?」
綾瀬は思いついたような人差し指をたてた。
「いや、それは、その、勇気がいるというかなんというか」
「家に帰ったら必ず今日中に電話すること!これは私からの課題です。」
歯切れの悪い僕の言い分に綾瀬は先生のように左手を腰にそえて少し屈み気味に言う。
そして言い訳を言いかけた僕より先に綾瀬は近くに咲く青い草花を指差した。
「さて、この花の名前は何でしょうか?」
「えっと、なんとかフグリ」
突然の質問で思い出せそうで思い出せない状態で僕は頭をかいた。
「オオイヌノフグリでした。はい、答えれなかったし家に帰ったら必ずお母さんに電話ね。」
綾瀬は勝ち誇ったように僕に指を差した。
「人を指差しちゃいけませんって学校で学ばなかった?」
悔しくてそんなことしか言えない僕だったが、花の名前を言えなかったのは事実で僕は帰ったら速攻図鑑で花を確認しようと思うと同時に母親に電話するのかと少し気が重くなる。
「そんなにイヤ?」
もろに顔にでていたのか綾瀬は困った顔をするので僕は首を横に振って苦笑する。
「大丈夫。」
僕は背伸びをするとシートへ向かうと横になった。
綾瀬も一緒にシートの上に横になる。
「天気もいいし。きっと大丈夫。」
木から零れる光に僕は目を閉じて心地よい気分に浸る。
そのあと、僕が図鑑で知っている花を見つけては綾瀬に先ほどの腹いせではないが
何回か質問していく。
だが全て答えられてしまい僕の勝つ予感が1つもないことを思い知らされる結果になったのは言うまでもない。
そして、いつより少し早めに綾瀬は帰って行った。
きっと母親に電話させるためだと思う。
僕は深呼吸すすと子犬を自転車のカゴに入れて家へ向かった。




