本当の自分
泉に着くと子犬を自転車から下ろしてバックを手に取った。
「ねぇ、藤井君。いつもの木よりも奥に行くと花畑あるの知ってた?。ちょっとそっちに行ってみない?」
綾瀬は泉のほうに指をさした。
「別にいいよ。」
僕は綾瀬のあとを追うように歩き出す後ろを着いていった。
いつもの木の横をずっと歩く。
草が生い茂っていく度合いが高くなり人が歩いている道がなくなっていく。
歩きにくくなっていく。
「もう、そろそろ・・・あ。見てほら。」
綾瀬は突然走り出した。
僕は小走りになり、綾瀬を見失わない程度に追いかけた。
「着いたよ。」
綾瀬は急に立ち止まる。
「うわぁ。」
綾瀬の横に僕は感嘆をもらした。
そこには色取り取り(いろとりどり)の花が咲いていた。
その中にはこれから咲こうと蕾状態になっている花もある。
ずっと奥まで続いている花達に僕は圧倒される。
「すごいな。」
「でしょ。あ、あそこに座ろう。ちょうど日陰になりそうな木もあるし。」
花畑を見渡せることができそうな木が2本ほどあって、シートをひいて座れそうだ。
「わかった。でも、よく知ってるね。」
木下にシートをひきながら綾瀬に問う。
「へへへ、実はですね。少し前見つけたの。そのときは、まだ蕾が多かったんだけど今日くらいに開くかなって。一応藤井君の家に行く前に確認しに行ったら開いてたからピクニックしようって言って良かったって思ったの。」
綾瀬は広げきったシートに腰を下ろし気持ちよさそうに背伸びをした。
「もしかして、その確認のために遅れたとか?」
「てへへ、そうなの。」
僕は綾瀬の行動にどうしようもないくらい温かい気持ちになる。
なんといえばいいのだろうか。
「藤井君には、全ての花が咲いてから本当は教えるつもりだったんだけど。待てなくて。」
綾瀬は、はにかむように笑った。
なんて素敵な人なんだろうか。
僕はジーンっとした心と永遠と広がる花畑に心がワクワクした。
「ありがとう。すごく心がワクワクするんだ。」
「きっと、それは『楽しい』という気持ちね。ねぇ、遊びましょう!」
綾瀬は花畑に向かっていく。
子犬も綾瀬についていって楽しそうに鳴いている。
僕はその姿を眺めていた。
今まで感じたことがない安らぎを覚えた。
僕もバックをシートの上に置くと花畑に向かった。
色んな花の中に綾瀬に教えてもらった花がいくつかあった。
アネモネやウグイスカグラやジンチョウゲ等色々咲いているが
綾瀬に教えてもらえなかったら、ただの雑草だと興味わかなかっただろう。
花の名前を覚えただけで、こんなにも探索して知ってる花探しをしている自分自身がそこにいた。
「この花の名前はなんでしょうか。」
たまに綾瀬は隣に来ると今まで教えてもらった花を触って学校の先生のように質問してくるが、あっさり答えると頬を膨らませた。
頭がいい人はやっぱり記憶力が違いすぎるっと言っては、何度か花の名前を質問されたがあっさりと答える。
たまに似た花があり間違えそうになるが、葉の形状などを見てギリギリ間違えずに答えた。
「どうして、そんなに記憶力いいのよ・・・。」
「そんなことないよ。ただ簡単なだけなんだよ。」
綾瀬は悔しそうに僕の頭を見た。
僕は、綾瀬が教えてくれたから覚えようと何度か花の図鑑を眺めたことを黙っておくことにした。
暇な時間があれば興味のある本や花の図鑑を購入して綾瀬にばれないようにベッドの下に隠して、たまに眺めていたことは一生の秘密にしようと思った。




