過去
「ごめんなさい!お待たせしました。」
玄関を開けた綾瀬は申し訳なさそうに頭を下げた。
「いいよ。泉に行こうか。バック持ってくるから。」
僕は何か言いかけて口を閉じてリビングに向かった。
子犬を床に置くと僕の足元をスリスリしてきた。
人と関わらないようにして生きてきて、他人に何も思わなかったのに
来てくれるって綾瀬に思った自分。
そして、それが当たり前だと思った自分。
それで、来なくて残念だと思った自分。
深呼吸するとバックをもつと子犬を抱きしめて玄関に向かう。
「本当にごめんね。」
綾瀬は再度謝る。
「いいから、泉行こう。」
僕は靴をはいて自転車のカゴに子犬を入れて歩き出す。
綾瀬は慌てて後ろをついてきた。
歩くのを止めると綾瀬が歩くのを止める。
「隣歩こうよ。」
「・・・うん。」
僕は笑って綾瀬を呼んだ。
綾瀬は僕の隣に行くと黙って歩く。
「本当に気にしてないから。」
僕は綾瀬のほうをみると分かったっと綾瀬は小声で答えた。
「ねぇ、藤井君って高校どこに行くの?」
「羽山高校だけど。」
綾瀬の質問に即答で返すと驚いた顔をして目を見開いた。
「え?羽山って、あの羽山高校?優秀な子達が集まる羽山高校?え?ちょっと待って。藤井君何番で羽山高校受かったの?」
「何番って1番だけど・・・。」
慌てた様子の綾瀬は驚愕の顔をした。
風化しそうな勢いで驚愕した状態で瞼を何度も閉じたり開いたりした。
「いい子ちゃん中のいい子ちゃんがココにいるってこと!?。中学どこ?」
「えっと。この辺からだと3時間くらいのところ。」
「遠すぎ!。実家から通ってて高校のためにこっちに来たってこと?」
混乱した様子の綾瀬はまくしたてるように僕に質問をする。
「そうだね。中学は実家から通ってた。高校はどこ受けたらいいか分からないから先生に全て任せてたら羽山高校になったんだけどね。」
綾瀬は頭を抱えるとズルイっと口を尖らせた。
どうやら、羽山高校は優秀な高校で僕はあまり勉強をしないで受験したことを伝えると綾瀬は血の気が引いたのか青白くなったと思り次の瞬間には僕の頭らへんを見た。
「どういう構造してるの?羨ましい。」
「普通だよ。ただ、遠くの高校に行きたかっただけなんだ。実家から通うことができない高校に。」
僕は素直に答えると綾瀬は眉間にシワを寄せた。
「実家から通うっていう選択を選びたくなかった、てこと?」
「そうだね。」
綾瀬は静かになった。
気に障るような答え方をしたのかと思い考えていると綾瀬は片手を挙げて太陽を遮る仕草をした。
「親は一人暮らしになること何も言わなかったの?」
「中学のときから塾とかでご飯別々だったから自分で作ることも多かったから。それに中学の成績について悪くなかったのもあって特別何か言われたり干渉されたりしなかったけど。」
「なにそれ。」
綾瀬は一言そう言うと片手を下ろしてスカートを握った。
綾瀬の顔を覗きこむと唇を噛みしめ悔しそうな顔をしていた。
顔を下に少しの間向けたと思うと僕の顔を見てさっきと違って笑ってみせた。
「そっか。うんっと、今は親と連絡取ったりは?」
「ないかな。メールしたりするけど変事返って来ないし。あまり、僕と話すのが好きじゃないんだって。育て方を間違えたのかなって言われたこともある。何を考えているか分からないから恐いんだって。弟のほうが素直で可愛いって。弟を愛でているのを遠くで眺めてることほうが多くて・・・」
綾瀬は僕の裾を引っ張った。
僕の話を遮ると首を横に振った。
「そんな顔見たくて聞いたんじゃない。」
底冷えしていく心に気が付く僕。
無表情だったのだろうか。
「だから、羽山にしたんだ。」
「わかった。もう、わかった・・・。」
綾瀬は顔を歪ませて少し泣きそうな顔をした。
僕はクルクルと表情が変わる綾瀬を少しだけ羨ましく思った。
「もう少しで泉だよ。」
「・・・うん。」
裾を握り締め下を向いている綾瀬を歩かせて泉に向かった。




