笑顔
少したったあと僕の服を着た綾瀬がリビングにやってきた。
「服まで本当ありがとう。身体温まった。私の服どうしようか・・・。」
少し頬を赤くさせた綾瀬は笑った。
「やっぱり少し服大きかったね。ごめん。この家乾燥機ついてるから乾燥させるよ。」
裾をあげて少しだけ手を出している綾瀬を見て僕は改めて女性の小ささを感じる。
綾瀬から着ていた服を受け取ると僕もお風呂を入ろうと着替えとバスタオルを持ち綾瀬に背中を向けた。
「僕もお風呂入ってくるから。お風呂上がったらコーヒーか紅茶飲もうか。それでまで、ゆっくりしてて。子犬でも構ってて」
「うん。あ、そういえば。いつまで私のこと『さん』付けなの?」
僕は振り返ると綾瀬は僕に指をさした。
「藤井君期待しとくからお風呂上りから呼び捨て。」
綾瀬は楽しそうに笑った。
よく笑う人だ。
僕は困った顔をして、逃げるようにお風呂場へ向かった。
脱衣所で綾瀬の服を乾燥機に入れてスイッチを押す。
僕は携帯を取り出し服を脱ぐとカゴの中に服を入れて時計を外して風呂場に入りシャワーを浴びて浴槽につかる。
あったかいーー。
背伸びをする。
呼び捨てかぁ。
今までに女性を呼び捨てなんてしたことがない。
むしろ、こんなに話したこともない。
何よりも、綾瀬は呼び捨てをこだわりすぎているような気もする。
僕は思いっきり浴槽に頭までつかると
顔を出してお風呂場を出てバスタオルで身体を拭いて着替えを来て
携帯の画面確認をして時計をした。
現状メールも着信もなし。
バスタオルを肩にかけると、リビングに向かった。
綾瀬は面白そうに子犬のササミを奪ってみたりあげてみたりと楽しんでいるようだ。
「お待たせ。飲み物ホットがいいよね。コーヒーと紅茶どっちがいい?」
「おかえりなさい。紅茶がいいなぁ。紅茶好きなの。」
綾瀬は振り返って僕を見た。
「砂糖とかミルクは?」
「なくても平気!」
僕はその返答を聞くと台所に向かいケルトが湯ができているサインを確認して
昨日買ったマグカップを取り出す。
来客を考えておらず1つしか買っていないことを思い出す。
「あ、私このマグカップでいいよ。」
後ろから声が聞こえて振り返ると棚に置いてある子犬柄のマグカップを指差す綾瀬が立っていた。
横にはササミを銜えた子犬がいる。
「あ、これは前の住人のやつで。」
「いいの。私このマグカップでいいの。」
僕の説明を遮ると棚からマグカップを綾瀬は取り出して僕に差し出す。
「わかった。」
僕は受け取るとマグカップに紅茶のパックを入れてお湯を注ぐ。
「ありがとう。」
綾瀬は犬柄のマグカップを取ると子犬と一緒にリビングへ向かう。
僕も後ろから付いて行った。
ソファーにお互い座ると綾瀬は出来立ての紅茶を一口飲む。
僕は猫舌のため冷ますためにテーブルに置いた。
「そういえば、藤井君はなんでさっき怒ってたの?」
「うーん。テレビでよく言ってる『心配』に・・・ちか・・・いと、おも・・・う。」
考えながら答える。
「心配?」
綾瀬は不満そうにオーム返しをした。
「それよりも、綾瀬さ・・・。綾瀬は、どうしていつも笑顔でいられるの?」
僕は話題を変えるように話をふったが綾瀬の顔が笑顔なのに目が笑っていないように感じ呼び方を変えた。
綾瀬は満足したような顔になる。
「だって、藤井君全然私に笑顔見せないんだもの。とっても勿体無いから。その分私がたくさん笑顔で居ようと思って。」
綾瀬は僕の目を見て話そうとしたので僕はそれを拒否するように立ち上がり窓に向かう。
「雨あがりそうだね。乾燥もそろそろ終わるだろうし。傘貸すから帰りなよ。」
僕は窓を開けるとジメジメとした匂いがした。
「えぇ。そうね。」
綾瀬は僕の横に来て空を見上げて目を閉じた。
雨の音を静かに聴いているようだ。
僕は黙って同じ動作をする。
シンッとした中に何か心を落ち着かせる優しさを感じた。
「綾瀬。あのさ、雨が降ったりする日もあるあるかもしれないから、泉で会うじゃなくて直接この家に来ると良いよ。」
目を開けると綾瀬に向かって自分なりの笑顔を見せた。
綾瀬は目を開けると少し困った顔をしたあと頷いた。
「わかった。ありがとう。」
僕は窓をしめた。




