タオル
家に着き玄関を開けると子犬が尻尾を振りながら、お座りした状態でいた。
傘を玄関の内側の壁にしまっておく。
「ただいま。」
「わん。」
子犬に声をかけると嬉しそうな声が返ってきた。
スーパーで購入してきた子犬用のササミを出すと袋を開けて子犬に渡す。
子犬はササミをかじるとリビングに向かっていった。
「綾瀬さん、ちょっと待ってて。お風呂わかすから。」
「え?いいって、いいって。大丈夫だから。」
綾瀬は手を大げさに横にふった。
僕は黙って、ズボンの裾を少しあげて靴を少し乱暴に脱いでお風呂場に向かう。
急いでお風呂場を洗うと湯を入れる。
その足で2階にかけあがり、服を2着分とバスタオル2枚を用意する。
1着は綾瀬の分のため適当には選べない。
無難に薄いグレー色の何もロゴが入っていないパーカーと下はサイズを調整できるようにスウェットをだす。
スウェットはパーカーより少し濃いめの色。
僕は普段どおりにロングTシャツとジーパンを躊躇せず出した。
そして、ロングタオルを忘れてたことを思い出し適当に何枚か取り出す。
急いで元来た道を戻り玄関に行くと綾瀬が申し訳なさそうな顔をしていた。
「ごめん、待った?。湯がはるまで少し時間かかるから、その間タオルでふけるとこ拭いて」
「でも・・・。」
僕は綾瀬にロングタオルを1枚差し出すが綾瀬は受け取る素振りをしない。
僕は無言でロングタオルを突き出した。
「・・・ありがとう。」
綾瀬はおずおずとタオルを受け取った。
僕はリビングに行くとソファーに着替えとバスタオルと残りのロングタオルを置く。
玄関に戻ると綾瀬にリビングに行こうと誘うと、綾瀬は靴を脱ぎ靴下まで脱いでタオルで足の指先まで綺麗に拭いてから床に足をおいた。
リビングに入ると僕はロングタオルを、もう1枚渡し最初に渡したロングタオルを回収した。
僕自身もロングタオルを1枚取ると髪先が少し濡れていたので拭く。
少しの沈黙が流れる。
こういうときは、どんな話をすればいいのだろうか。
僕はロングタオルを肩にかけながら考える。
「この家に住んでどれくらい経つの?」
綾瀬はキョロキョロしながら僕の顔を見た。
「住み始めたばかりなんだ。ここから少ししたところにある大学に今年の4月から入学するから。」
「そうなんだ。じゃあ、この家に一人暮らし?。珍しいね学生で一軒家で一人暮しとか。あ、ごめん。なんでもない。」
綾瀬は首を少し傾げたが、すぐに引っ込めた。
僕の表情が良くなかったのか綾瀬は気まずそうな顔をした。
「お風呂見てくるね。」
僕は逃げるように風呂場に行った。
鏡を見る。
冴えない顔がそこにいつも通りにあった。
確かに学生で一軒家って珍しいかもしれないっと考える。
人付き合いが苦手なんです、なんて応えれるわけない。
ため息を一度つくとお風呂の湯が溜まったのを確認した。
リビングに戻ると綾瀬にバスタオルと着替え1着分を渡す。
「お風呂準備できたから。先に入って。場所なんだけど・・・」
「ううん。大丈夫。場所分かるから。お風呂借るね。」
綾瀬は案内しようとする僕に対して断りを入れたあとお風呂場がある方向に向かっていった。
僕はテレビをつけると子犬がササミをくわえて近寄ってきた。
頭を撫でてやると満足したのか床にベターって身体をつけてササミを前足で器用に抑えてかじる。
僕は台所に向かうと綾瀬がお風呂に入っている間にスーパーで購入した食品を冷蔵庫にしまった。
冷蔵庫には一人暮らしにしては少し量が多いくらいの食品が収まっている。
あまり食が太いほうではないが食品を買い込むこと自体が少し癖になってしまっている。
昔家族で住んでいたとき、冷蔵庫の中が食品でぎっしり詰まって育ってきたせいかもしれない。
ただただ、安心するのだ。
お風呂上りにコーヒーか紅茶のホットを出すために電気ケトルを箱から取り出す。
昨日湯を沸かすのにすーぱーで購入したのだ。
一度水洗いするとケトルに2人分の水の量を入れて台に乗せてスイッチを入れた。
小さい唸り声が聞こえる。
僕はインスタントコーヒーとパックになっている紅茶を取り出し、綾瀬に聞いてから入れることにしようと綾瀬が戻るのを少しだけ待った。




