怒
昨日と同じように子犬に起こされた。
1階に降りると顔を洗う。
鏡が冴えない顔が僕を映す。
洗濯機にタオルを無造作に入れると朝ごはんを作り
一緒にドックフードをいれた犬用の受け皿をリビングに置いた。
テレビをつけると天気模様をキャスターが伝えていた。
『本日は一日雨ですので傘を忘れないようにしてください。』
キャスターは淡々と予報を伝えると違うコーナーに入った。
僕は朝食を食べ終えると片づけをして出かける準備を始める。
3日分の食料と日用品の買足しをするためにだ。
前の住人が置いていったのか透明な傘があったので、それを拝借し靴をかいた。
ポタポタと雨の音が聞こえてきた。
どうやら降り始めたようだ。
さすがに子犬は家に置いていくことにし、僕は家を出て傘をひろげた。
スーパーマーケットに入店すると色々なものを買い出た。
帰りがけ泉の横を通る際綾瀬のことを思い出す。
『また、あの泉で』と言っていたが、まさか今日は居ないだろう。
雨の日なのだから。
僕は悩んだ末泉に立ち寄ることにした。
泉の奥へ進むと、人影がみえてきた。
傘をさしている様子も無い。
「誰だ?」
大きい声で問いかけた。
もしかしたら、雨の音でかき消されてしまっているかもしれない。
もう少しだけ近づく。
「・・・君」
人影から声が少し聞こえたが雨で聞き取れない。
でも綾瀬の声に似ている。
少し早足で人影に近づいた。
顔が見えるとこまで近づくと、やはり綾瀬だった。
「綾瀬・・・さん?」
「あ、やっぱり藤井君だ!」
傘もささずに雨にさらされながら嬉しそうに綾瀬は笑顔で僕をみた。
「な、何してるの!?」
僕はポケットからタオル生地のハンカチで綾瀬の顔を拭った。
そして傘の中に入れる。
「藤井君来てくれたんだね」
綾瀬は僕からハンカチを受け取ると
ニコニコしながら手や足を拭き髪を少しだけふいた。
「今日一日雨なのに何してるの?風邪でもひきたいの?傘は?本当なにしてんだよ」
僕は少し大きい声で綾瀬に向かって言い放った。
綾瀬は身体を少しビクッとさせると申し訳なさそうな顔をする。
フツフツと湧き上がる感情をコントロールできずに、僕は綾瀬に対して
眉間にシワを寄せて問い詰める。
「怒ってるの?藤井君」
「怒ってる?この僕が!?」
上目遣いで少し涙目の綾瀬に僕は戸惑いを感じた。
これが怒っているという感情なのだろうか。
勝手に増幅されていく嫌な気分。
地団太を踏みたいっというヤツの気持ちが今ようやく分かる。




