買出し
生暖かい何かが顔に触れ僕は払いのけようとした。
払いのけても少しすると、また生暖かいものが触れる。
なんだかベタベタする。
はぁはぁっと耳元が音がする。
嫌な予感がして目を覚ますと子犬が僕の上に居た。
「わん!わん!」
元気そうな声。
最悪な目覚めだ。
子犬をどかせて携帯を見る。
母親からの着信履歴もメールも来ていない。
当然か。
僕も何も思って昨日メールなんてしまったんだろうっと溜息をつきそうになったため
深呼吸に切り変えた。
寝る前に近くに置いた腕時計を見る。
いつもより少し早めに起きたようだ。
「お前は元気だな。」
僕は大きな欠伸をすると子犬を撫でる。
少しひんやりする床に足をつけると、そのまま1階に降りて
バックからタオルを取り出し洗面台に向かう。
ドアの開閉だけは気をつけて行った。
昨日みたいなことが起きることだけはごめんだ。
また、子犬を挟んで甲高い音を聞くのだけは避けたい。
洗面台の鏡に映る僕を見る。
前髪が瞳の下にまでのびている。
いつも通り冴えない顔。
弟に無表情で恐いって言われたことを思い出して
すぐにタオルで顔をふいて買出しの準備を行う。
子犬はその間相手をしてほしいのかじゃれてついてくる。
バックから服を出そうとすると、その服をくわえて走り出したり
返せっと言っても言うことを聞かない。
邪魔ばかりして普通よりも準備に時間がかかってしまった。
ただ腕時計をくわえたとき、僕が焦ったのを感じたのか
すぐに床に置いて座った。
ふっと鼻で笑うと腕時計を拾って右腕につけた。
「お前って嫌なやつだな・・・。」
僕は子犬を見下ろした。
子犬は見上げて、そらそうとしなかった。
僕が先に目線をそらすと財布と携帯を持って玄関に向かった。
嫌な奴は自分か。
僕は靴をはくと玄関を開けた。
子犬は玄関の入り口でちょこんと座ると、じっと僕を見た。
自分も連れていけっといわんばかりだ。
「いいよ。こいよ。」
子犬に手をふると子犬は尻尾を振って僕の横に来た。
玄関の施錠を行い自転車のカゴに子犬を入れて乗る。
走り出すと、晴天のせいか夏のような暑さを感じ始める。
ギラギラと太陽が照りつける。
僕はなるべく日陰をのある方を選んでスーパーに向かう。
スーパーに着くと子犬をカゴに入れたまま店内に入る。
最近のスーパーは凄いなぁっと歓心をする。
日用品から食材まで、あらかた揃うようになっており
数日分の食材と必要最低限の日用品を購入して店外にでる。
子犬は大人しくカゴの中で待っていた。
先ほど購入した水のペットボトルを出すと、子犬を床に置き
片手に水を出すと美味しそうに飲んだ。
カゴに買い込んだものを入れると子犬と一緒に歩いて元来た道を帰る。
子犬は大人しく僕の隣を歩く。
たまに、色々なものに興味を示すが走りだす様子はない。
案外頭の良い子犬なのかもしれない。
ただ、泉の横を通ったときだけは様子が変で
行きたいけど行きたいけどっと僕のほうをチラチラっと見ながら我慢するかのように
少し泉のほうを行っては戻ってくる。
僕は頭を掻く。
あとで、泉に連れて行くか。
少し早めの足取りで自宅に着くと冷蔵庫に食材を入れ
ある程度日用品を片付ける。
元々前の住人が綺麗好きだったのか、残っている私物に乱れが無い。
片付けやすく助かるなぁっとぼやきながら僕は子犬用の受け皿に水を入れた。
子犬は美味しそうに飲んだ。
バックの中身を片付けると、飲みきった子犬用の受け皿を洗って拭バックに詰め込む。
水のペットボトルも忘れず入れると子犬を抱きかかえる。
さて、泉に連れて行くか。
僕は家を出て自転車のカゴに子犬を入れて僕は軽い足取りで走り出した。




