第9話 鬼塚と三鬼
夕方、愛嬌高校。
屋上のアジトには、番長の鬼塚、三鬼の成田、三鬼の初音の三人がそれぞれの位置でくつろいでいた。
鬼塚はソファに深く腰を預け、足を組んでいる。
成田は手すりにもたれ、腕を組んだまま外を眺めている。
初音は雀卓に腰をかけ、肘をついて顎を乗せていた。
初音「番長〜、1年代表戦どうだった〜?」
成田「鬼塚、あんたが出張っていったらよ、1年なんて萎縮してまともに潰し合いにもなんねぇんじゃねぇの?」
初音の軽い声に対して、成田はやや呆れたように言う。
だが鬼塚は、特に反論するでもなく、ソファに沈んだまま目を細めていた。
鬼塚は思い出していた。
田中と銀次。
他の新入生が空気に飲まれる中でも、あの二人だけは一切揺らがなかった。
恐怖も緊張もなく、まるで“日常の延長”のままそこに立っていた。
まだ直接ぶつかってはいない。
それでも鬼塚は、あの異質さをはっきり感じ取っていた。
ただの強さじゃない。
“底が見えないタイプ”の人間だと。
しばらく三人の会話が続いたあと、初音がふと思い出したように口を開く。
初音「ていうかさ〜、長口のやつ、まだ門番やってんの〜?この時間に来るやつなんていないでしょ〜」
三鬼・長口。
その巨体と寡黙さで、毎日ただ一人、正門に立ち続ける男。
役割は単純。
他校からの侵入を“物理的に止める”こと。
鬼塚は小さく息を吐いた。
鬼塚「そう言ってやるなぁ」
ゆっくりと視線を遠くへ向ける。
鬼塚「アイツは無口ででかいし、顔もイカついがなぁ……あれで愛校心は誰よりも強ぇ」
成田が鼻で笑う。
成田「まぁ、真面目すぎるのがあいつの面倒なとこだな」




