第5話 銀次vs成田
ドンッ!!!
成田が踏み込む。
その瞬間。
銀次「おそ〜い♪」
ヒュンッ。
銀次の姿が掻き消えた。
「消えた!?」
「またかよ!!」
次の瞬間には。
ドゴッ!!
成田の脇腹に銀次の蹴りが突き刺さっていた。
だが。
成田は微動だにしない。
銀次「わぁ♪」
ヒュヒュヒュッ!!
銀次が高速移動を始める。
右。
左。
背後。
天井際。
普通の人間なら視認すらできない速度。
ドドドドドッ!!
拳。
蹴り。
掌底。
一瞬で数十発。
成田の全身へ叩き込まれる。
教室中の一年たちは完全に置いていかれていた。
「見えねぇ……!」
「何発入った!?」
だが。
成田は笑っていた。
成田「ハハッ……!!」
銀次の拳を受けながら。
楽しそうに。
成田「いいなァ!!」
ドゴォッ!!
銀次の回し蹴りが顔面へ炸裂。
普通なら首が飛ぶ威力。
しかし。
成田は半歩下がっただけ。
銀次「わぁ……♪」
銀次が嬉しそうに目を輝かせる。
銀次「流石三鬼さんだねぇ♪」
成田「最高だぜ、銀次ィ!!」
ブンッ!!!
成田の拳が振り抜かれる。
速い。
さらに重い。
空気そのものが潰れるみたいな一撃。
銀次「っとぉ♪」
ヒュッ。
紙一重。
髪の毛だけが数本宙を舞う。
そのまま銀次が後ろへ跳ぶ。
成田はニヤニヤしていた。
成田「避けるだけじゃねぇか」
銀次「当たったら痛そうだも〜ん♪」
教室中が震えていた。
銀次は無傷。
だが。
誰が見ても分かった。
成田は、まだ余裕を残している。
その時。
ガラッ!!
教室の扉が勢いよく開いた。
長い髪。
鋭い目。
圧の強い女のような顔立ちの男。
教室が再び凍りつく。
「さ、三鬼……!?」
「今度は初音!?」
3年C組――初音。
初音「成田!!」
成田「あ?」
初音が睨みつける。
初音「あんた勝手に何してんのよ」
成田「別に」
初音「別にじゃない!!」
ズカズカ教室へ入ってくる。
初音「番長怒ってるよ! 早く戻りな!」
教室がざわつく。
「鬼塚が……?」
「成田、勝手に来てたのか……」
どうやら成田は独断で、一年各クラスのトップ候補たちを見て回っていたらしい。
初音「B組からE組まで荒らして、次はA組? アホなの?」
成田「だって退屈だったんだよ」
初音「ガキかアンタは」
成田はケラケラ笑う。
そして。
銀次を見る。
成田「銀次」
銀次「ん〜?」
成田「お前、かなり良いな」
成田の目が獰猛に細まる。
成田「次は捕まえてやるからな」
銀次「えへへ〜♪ やってみてぇ♪」
成田は満足そうに笑うと、そのまま踵を返した。
初音「ほら行くよ」
成田「へいへい」
二人の三鬼が去っていく。
だが。
教室には誰も声を出せなかった。
三鬼。
その格。
一年とは明らかに違う。
銀次は、ふぅ、と息を吐いた。
そして何事もなかったように田中の隣へ戻る。
銀次「楽しかったぁ♪」
笑顔。
余裕。
いつも通り。
……だが。
こめかみを、一筋の冷や汗が伝っていた。
田中だけが、それに気付く。
田中「……」
田中は静かに成田たちが去った扉を見る。
(三鬼の成田……)
(思ったより簡単にはいかなさそうだな)




