第40話 銀次vs鷲峰
ボウリング場中央レーン。
周囲には、倒れた無念高校の連中。
その中心で。
銀次と鷲峰が向かい合っていた。
鷲峰「お前……日愛中学の銀次やな」
銀次「わぁ♪ 僕って有名人?♪」
鷲峰「大阪に住んでて知らんやつはモグリや」
静かに拳を構える。
鷲峰「やけど、最近まで中坊やったやつが乗り込んでくるのは無茶やで」
銀次はニコッと笑った。
銀次「無茶かどうか――」
ゆっくり足を開く。
銀次「確かめてみなよ♪」
次の瞬間。
ヒュンッ!!
銀次が消える。
鷲峰「ッ!」
横。
後ろ。
前。
視界の外を、小柄な影が高速で駆ける。
翻弄。
完全にペースを握られていた。
鷲峰「……チッ!」
拳を振るう。
ブォンッ!!
だが空振り。
鷲峰「さっきの奴といい、お前も逃げ回るんか?」
その瞬間。
パァンッ!!
拳。
銀次のパンチが、鷲峰の頬へ綺麗に入った。
鷲峰「ッ!?」
銀次はもう数歩後ろへ下がっている。
銀次「攻撃もするよ〜♪」
鷲峰「……上等!!」
ドンッ!!
鷲峰が踏み込む。
だが。
当たらない。
右。
左。
膝。
回し蹴り。
全部。
紙一重で避けられる。
銀次は、まるで踊るみたいに動いていた。
数分後。
鷲峰「……はぁ……はぁ……」
肩で息。
汗が頬を流れる。
対して銀次は、まだ笑っていた。
銀次「ん〜♪」
首を傾げる。
銀次「こんなものなの〜?」
鷲峰「てめぇ……!!」
額に青筋。
だが。
そこで鷲峰は、ふっと深呼吸した。
鷲峰「……いかんいかん」
ゆっくり息を吐く。
鷲峰「一旦冷静になるわ」
空気が変わる。
怒気が消える。
目だけが鋭く細まった。
鷲峰「キレてたら攻撃が単調になるからな」
拳を構え直す。
鷲峰「すまんな」
静かな声。
鷲峰「こっからが、本来の俺や」
銀次の笑みが少し深くなる。
銀次「……楽しめそう♪」
その瞬間。
ドンッ!!
鷲峰の動きが変わった。
無駄がない。
鋭い。
先ほどまでの力任せとは別物。
ヒュッ!!
拳が銀次の鼻先を掠める。
銀次「おっ♪」
さらに蹴り。
回転。
追撃。
銀次が、初めて大きく距離を取った。
鷲峰「お?」
口元が吊り上がる。
鷲峰「もうそろそろ当たりそうやな」
銀次は、数秒黙っていた。
そして。
不敵に笑う。
銀次「ん〜……」
銀次「確かに、このままだといずれ捕まっちゃうねー」
銀次「だから――」
銀次の目が細くなる。
空気が変わった。
銀次「ひとつ、ギアを上げるね♪」
鷲峰「……あ?」
そして。
小さく呟く。
銀次「……Second」
その瞬間。
銀次が“消えた”。
鷲峰「!?」
直後。
ドゴォッ!!
膝蹴り。
真正面。
鷲峰の顔面へ、完璧に突き刺さる。
鷲峰「がっ――!!」
身体が吹き飛ぶ。
壁へ激突。
鷲峰(……冷静になって)
床へ手をつきながら、ゆっくり顔を上げる。
鷲峰(かなりこいつの速さに慣れてきたってのに――)
銀次は、少し離れた場所へ着地していた。
ニコニコ笑っている。
鷲峰(更に速くなりやがった……!!)
数秒。
沈黙。
やがて。
鷲峰「……チッ」
血を拭う。
鷲峰「化物め」
銀次「あー!!」
頬を膨らませる。
銀次「ひどいー!!」
だが。
次の瞬間。
鷲峰は、両手を上げた。
銀次「……?」
鷲峰「あかん」
ため息。
鷲峰「降参や、降参」
銀次「えー!!」
露骨に不満そう。
銀次「せっかく速くなったのにー!」
鷲峰「もう捕まえれる気が1mmもせぇへん」
ボロボロの顔で笑う。
そして。
鷲峰「それに――」
視線を向ける。
隣のレーン。
鷲峰「気絶したら、うちのボスの戦いが見られへんしな」
銀次もそちらを見る。
田中と武藤。
二人の戦い。
武藤は押されているように見えた。
銀次「あー」
ニコッ。
銀次「まぁ、たっくんが負けるわけないけどね〜♪」
だが。
鷲峰は、小さく笑った。
鷲峰「分かってへんなぁ」
銀次「?」
鷲峰の目が細くなる。
鷲峰「ボスは――」
鷲峰「まだ、本気やない」




