第37話 長谷川vs烏丸
ボウリング場の奥。
長谷川は肩で息をしている。
制服はすでにボロボロ。
対する烏丸は、ほとんど乱れていなかった。
烏丸「やはり弱いな。愛嬌一年よ」
低い声。
余裕すら感じる。
長谷川「……だ、か、ら!」
長谷川が踏み込む。
長谷川「舐めるな!!」
ドンッ!!
渾身の右。
さらに左。
連打。
だが――
ヒュンッ。
烏丸は最小限の動きで避け続ける。
長谷川の拳は、空を切るだけだった。
烏丸「遅い」
その瞬間。
ドゴッ!!
烏丸の拳が、長谷川の腹へめり込む。
長谷川「がっ……!?」
身体が折れ曲がる。
肺の空気が一気に吐き出された。
膝が床へつきかける。
烏丸は静かに見下ろした。
烏丸「もう無理するな」
長谷川「……ッ」
震える脚。
それでも。
長谷川は歯を食いしばり、ゆっくり立ち上がる。
烏丸の眉がわずかに動いた。
長谷川「俺は……」
息が荒い。
視界も滲む。
それでも、拳だけは下ろさない。
長谷川「俺は、田中たちの足を引っ張りたくねーんだ……!」
沈黙。
烏丸は数秒、長谷川を見つめた。
そして。
烏丸「……そうか」
次の瞬間。
バギッ!!
拳。
蹴り。
肘。
一方的だった。
長谷川は何度も吹き飛ばされる。
何度も床へ叩きつけられる。
それでも――
長谷川「まだ……!」
立ち上がる。
また倒される。
それでも。
長谷川「まだ……終われねぇ……!」
立つ。
その姿は、もはや意地だけで動いていた。
だが。
限界だった。
ドゴォッ!!
最後の一撃。
長谷川の身体が吹き飛び、レーン脇へ転がる。
ピクリとも動かない。
完全に気絶していた。
静寂。
烏丸は、倒れた長谷川を見下ろす。
そして、小さく息を吐いた。
烏丸「……撤回しよう」
その目に、先ほどまでの侮りはなかった。
烏丸「愛嬌一年――」
短く笑う。
烏丸「随分と、骨のある連中だ」




