第35話 無念高校②
ボウリング場内。
田中と武藤が、真正面から睨み合っていた。
そして気づく。
武藤「……お前、日愛中学の田中だな」
ゴキッ。
拳を鳴らす。
武藤の身体は岩みたいだった。
分厚い腕に脚。
対する田中は、静かに構える。
田中「…あぁ」
次の瞬間。
ドンッ!!
武藤が突っ込む。
速い。
ブォンッ!!
右フック。
空気が鳴る。
だが。
田中は半歩だけズレた。
スカる。
武藤「チッ!!」
すぐに左。
さらに膝。
連撃。
重い。
一発一発が凶器だった。
だが――
当たらない。
田中は重心を崩さないまま、攻撃をいなす。
逸らす。
田中「力任せだな」
武藤「ッ!!」
苛立った武藤がさらに踏み込む。
ドゴォッ!!
渾身の右ストレート。
だが、その瞬間。
田中の身体が滑るように回転した。
受け流し。
そして。
カウンター。
ドンッ!!
鋭い拳が、武藤の顎を撃ち抜く。
武藤「がっ……!?」
岩みたいな身体が宙に浮く。
そのまま後ろへ倒れ込み――
ドォンッ!!
ボックス席のソファへ激突した。
空気が止まる。
「武藤さん!!」
無念兵たちが慌てて駆け寄る。
武藤は口から血を垂らしながら、無理やり身体を起こした。
武藤「……チッ」
ギロリ。
部下たちを睨む。
武藤「俺に構うな!!」
血を拭いながら怒鳴る。
武藤「お前らはさっさとあのちっこいのをやれ!!」
視線の先。
レーン脇では、銀次が無念兵たちを蹴散らしていた。
ヒュンッ!!
銀次の姿が横へ流れる。
次の瞬間。
ドゴッ!!
膝蹴り。
さらに回転。
バキッ!!
「ぐぁっ!!」
無念兵の一人がレーン上を滑っていく。
銀次「わぁ〜♪ ボウリングみたぁい♪」
銀次はストライクを出したあと、楽しそうに笑っていた。
銀次「ん〜♪」
その時だった。
武藤の周囲にいた、“空気の違う四人”が動く。
ザッ。
一歩前へ。
空気が変わる。
銀次の目が少し細くなった。
銀次「……あの四人、少しヤバそう〜♪」
振り返り、須藤たちを見る。
銀次「おねがい〜♪」
その瞬間。
四人のうち一人が笑った。
「いいぜ」
さらに前へ出る。
「丁度、お前らも四人」
ニヤリ。
「これはゲームだ」
もう一人が首を鳴らす。
「タイマンといこうじゃねぇか!」
空気が張り詰める。
須藤が前へ出た。
拳を鳴らす。
須藤「おもしれぇ」
その前へ現れたのは、細身で鋭い目をした男。
雀田「俺は無念高校四天王――雀田だ」
須藤「愛嬌1年B組代表、須藤だ」
ニヤリ。
須藤「ゲームだぁ?」
拳を握る。
須藤「後悔しても遅いぜ?」
―――――
別方向。
長谷川の前へ、冷めた目の男が立つ。
烏丸「同じく四天王――烏丸」
長谷川「1年D組代表、長谷川だ」
肩を回す。
長谷川「1年と思って舐めるなよ」
―――――
仲谷の前には、柔らかい笑みを浮かべた熊みたいな大柄な男。
鳩山「同じく四天王の鳩山だよー」
鳩山「よろしくねー」
仲谷「あーよろしく」
気だるそうに首を鳴らす。
仲谷「俺は1年E組代表、仲谷」
だが目は笑っていない。
―――――
そして。
米田の前。
四天王の中でも、最も落ち着いた空気を持つ男が立っていた。
鷲峰「同じく四天王」
静かな声。
鷲峰「リーダーの鷲峰や」
米田「俺は1年C組代表、米田だ!」
そして数秒後。
米田「……え?」
固まる。
米田「俺、リーダーとやるの?」




