第33話 ボウリング
同時刻――愛嬌高校。
夕方の校舎。
1年A組では、田中と銀次が帰り支度をしていた。
銀次は机に頬をつけたまま、じとっとした目で田中を見る。
銀次「最近、たっくんと遊べてない〜……」
田中「毎日一緒にいるだろ」
銀次「それとこれとは別ぅ〜」
ウルウルした目。完全に構ってモードだった。
田中は軽くため息をつく。
田中「じゃあ、カラオケでも行くか」
銀次「やったぁ〜♪」
一瞬で機嫌が直る。
そのタイミングで、教室のドアが開いた。
C組代表・米田が顔を出す。
米田「おう田中!銀次!今日暇か?ボウリング行こうぜ!」
銀次の視線がスッと細くなる。
米田「な、なんだよ!俺なんかしたか!?」
焦る米田。
田中が断ろうとした、その時――
ガララッ!!
勢いよく反対側のドアが開く。
B組代表・須藤。
須藤「米田!田中と銀次、誘ったか!早く行こーぜ!」
その後ろにはD組代表・長谷川、E組代表・仲谷。
銀次の目がさらに潤む。
銀次「……ぐすっ」
田中は頭をかく。
田中「……あー。じゃあ、行くか」
―――――
夕方の繁華街。
ネオンが灯り始めた通りを、六人が並んで歩いていた。
須藤「久々だな、こういう遊び」
米田「今日は絶対俺が一位取るからな!」
長谷川「お前フォーム変やから無理やろ」
仲谷「つーか普通にダルい」
銀次だけは田中の隣でまだ少し不満そうだった。
銀次「本当は二人がよかったぁ〜」
田中「…まぁな」
そんなやり取りをしながら、六人は目的地へ辿り着く。
小ぢんまりとした、寂れたボウリング場。
だが――
入口周辺の空気が妙だった。
不良たちがあちこちにたむろしている。
タバコ。
座り込み。
睨みつける視線。
明らかに一般客が入りづらい空気だった。
「……なんか治安終わってんな」
長谷川が呟く。
須藤「まぁ、こんなもんだろ」
不良たちが、愛嬌の制服に気づく。
こちらをじろじろ見ている。
学年バッヂを確認してから話しかけてきた。
「今俺ら使ってんだけど?」
「お前ら愛嬌の1年か?」
米田「あ?そうだけど?」
一瞬の静寂。
そして――爆笑。
「ハハハ!」
「マジで1年かよ!」
米田「あぁ?なんか文句あんのか!?」
不良の一人がニヤつく。
「愛嬌の1年ってよ、歴代最弱なんだろ?」
「番長にビビって、一年同士で喧嘩もできねぇ腑抜け集団らしいな」
空気が少しだけ変わる。
田中「……またそれか」
米田「違うわ!俺らは親友だから争わねぇだけだ!」
須藤「おい、恥ずかしいこと言うな」
銀次「僕とたっくんは親友以上だけどね〜♪」
田中「……バカ」
長谷川「出たよバカップル」
仲谷「もういいって、それ」
軽口を叩く愛嬌一年たち。
不良たちの顔から笑みが消える。
「……調子乗ってんな」
「愛嬌ってだけでイキってんじゃねぇぞ」
次の瞬間――
ドンッ!!
一人が踏み込む。
しかしその瞬間。
田中は半歩だけ下がった。
相手の拳を流し、そのまま腕を差し込む。
ガッ。
体勢が崩れる。
そして――
ドゴッ!!
鋭いカウンター。
不良の身体が壁に激突し、倒れる。
空気が止まる。
田中は静かに拳を下ろした。
田中「弱いかどうかは――」
視線を上げる。
田中「お前らで確かめてみろ」




