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第31話 成田vs三木

ボクシングジム。


薄暗い空間に、ミット音が響いていた。


パンッ! パンッ!


成田は入口で無表情のまま立っている。


周囲の練習生たちがざわついた。


「誰だあれ」

「目つきヤバ……」

「不良か?」


五十嵐はリングを指差す。


五十嵐「見ろ!!」


リングの上。


鍛え抜かれた男がシャドーを打っていた。


五十嵐「日本ウェルター級チャンピオン!」


五十嵐「三木だ!」


無駄のない肉体。


鋭い動き。


明らかに“プロ”。


三木は成田を見ると、少し笑った。


三木「なんすか?その目つきの悪いガキは」


五十嵐「さっきスカウトしてきた!!」


五十嵐「ちょっとスパーリングしてやってくれ」


三木は軽く肩を回す。


三木「まぁ、潰れてもいいなら」


成田「……別にいいぞ」


数分後。


ヘッドギアやグローブ等を装着し、リングへ。


五十嵐が三木にヘッドギアを渡す。


三木「俺はいらねぇよ」


そして…ゴングが鳴る。


カンッ!!


三木が軽く左を出す。

距離を測るジャブ。遊び半分のタッチ。


次の瞬間。


――パァン!!


乾いた音が響いた。


三木の頭が横に弾け飛ぶ。


「……は?」


誰かが声を漏らした。


成田の左ジャブ。

踏み込み、腰の回転、引き戻し。


全部が異様に速かった。


三木の表情から笑みが消える。


「お前……」


言い終わる前に、右ストレート。


ガードの隙間を撃ち抜かれ、三木の身体がロープまで吹き飛んだ。


三木「ぐっ……!」


慌てて距離を取ろうとするが、

成田はすぐに詰める。


素人には見えなかった。


「なんだよ……あいつ……」


ジムの空気が変わる。


ボディ。


鈍い音。


息が詰まる。


顔が下がった瞬間、右のアッパー。


脳が揺れる程の衝撃が突き抜けた。


三木「っ、ぁ……!」


三木がリングへ崩れ落ちる。


完全に舐めていた。


気づいた時にはもう遅かった。


体が動かない。


成田はそこで初めて口を開いた。


「悪いな。素人ではないんだ」


リングが静まり返った。


ジム中が凍りついていた。


五十嵐だけが、震えながら成田を見ている。


成田はヘッドギアとグローブを外す。


そして。


成田「……これでいいだろ」


それだけ言って、リングを降りる。


五十嵐「ま、待て!!」


成田「興味ねぇよ」


そのまま出口へ向かう。


扉が閉まる。


静寂。


そして。


五十嵐は震える拳を握り締めた。


五十嵐「私の目に狂いはなかった…!!」


五十嵐「……絶対に」


目がギラつく。


五十嵐「絶対にものにしてやる……!!」

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