第3話 田中vs南山
南山が首を傾ける。
ゴキ、ゴキッ。
関節の鳴る音だけで、周囲の一年たちが息を呑む。
南山「先に言っとくぜ」
ニヤリ。
南山「オレに同じ技は二度通じねぇ」
田中「……」
南山「見切って、潰す。それがオレの喧嘩だ」
銀次「なんかイキってるぅ♪」
南山「チビは黙ってろ」
銀次「たっくんに負けるくせに〜♪」
教室がざわつく。
だが南山は笑ったままだ。
南山「寝言は寝て言え!!」
ドンッ!!
爆発みたいな踏み込み。
一瞬で田中の間合いへ入る。
「速ぇ!」
「南山の本気だ!」
右ストレート。
空気を裂く拳。
だが――
パシィッ。
田中が片手で止めた。
南山「……ッ」
田中「軽いな」
その瞬間。
南山の左膝が跳ね上がる。
脇腹を狙ったカウンター。
だが田中は半歩ズレるだけで回避。
さらに。
同じ軌道。
同じ速度。
同じタイミング。
ドゴッ!!
田中の膝が、まったく同じ角度で南山の脇腹へ突き刺さった。
南山「ガッ!?」
吹き飛ぶ。
だが。
着地と同時に南山が笑った。
南山「見切ったァ!!」
再び突進。
今度は田中の膝を完全に読んでいる。
避ける。
潜る。
そのまま拳を叩き込む――
はずだった。
田中「……なるほど」
ヒュン。
「!?」
田中の動きが変わる。
さっきの南山の動き。
その“先”を読むように。
南山の回避先へ、最初から拳が置かれていた。
ドォッ!!
南山の顔面が跳ね上がる。
「なっ……!?」
「今の何だ!?」
南山が後退する。
鼻血。
だが目は見開かれていた。
南山「オイオイ……」
南山「なんで読める?」
田中「お前が使った技だろ」
南山「は?」
田中「見たから分かる」
教室が静まり返る。
察知丸ですら、メガネを押し上げながら固まっていた。
察知丸「……異常だろ」
南山が舌打ちする。
南山「なら――これはどうだァ!!」
瞬間。
南山の拳が乱舞した。
高速。
連打。
フェイント混じり。
一発ごとに軌道が違う。
「うおっ!?」
「速ぇ!!」
だが。
田中は避けない。
全部見ている。
ギリギリで躱し。
受け流し。
そして。
一発。
また一発。
徐々に。
南山と“同じ動き”になっていく。
南山「……は?」
銀次が嬉しそうに笑う。
銀次「始まったぁ♪」
次の瞬間。
ドドドドドッ!!
田中の拳が炸裂した。
完全に同じ型。
同じリズム。
だが――威力だけが違う。
南山「がァッ!!?」
腹。
顎。
鳩尾。
連続命中。
最後に。
ドゴォッ!!!
真正面からのストレート。
南山の身体が宙を舞い、教室後方へ吹き飛んだ。
壁激突。
沈黙。
シーン……。
誰も喋れない。
南山が白目を剥いて倒れている。
田中はゆっくり息を吐いた。
田中「……見切るだけかと思ったら、割と強かったな」
銀次「たっくん、かっこい〜♪」




