第26話 蟻塚vs白夜②
夕日に染まる愛嬌高校の校庭。
赤く伸びる影。
土煙。
そして――
地面には、蟻塚の兵隊たちが十数人倒れていた。
「ぐっ……」
「痛っ……」
呻き声があちこちから聞こえる。
白夜は肩で息をしていた。
制服はボロボロ。
頬は切れ、腕にもアザ。
さすがに消耗は激しい。
だが、その小さな身体は、まだ倒れていなかった。
対する蟻塚は、少し驚いたように目を細める。
蟻塚「……へぇ?」
兵隊たちを見渡す。
蟻塚「結構やるやん、お前ぇ♪」
白夜「ぜぇ……ぜぇ……」
肩で呼吸。
蟻塚「どうしたぁ??」
蟻塚が両手を広げる。
蟻塚「もうおしまいかぁ??」
兵隊たちが再びじわじわ包囲を狭める。
逃げ場はない。
完全包囲。
普通なら、ここで終わりだった。
だが。
白夜の口元が、不敵に吊り上がる。
白夜「……しゃーないのぉ」
小さく首を鳴らす。
ゴキッ。
白夜「そろそろ、本気でも出すかのぉ」
蟻塚の眉がわずかに動く。
その瞬間だった。
――ドンッ!!!
地面が爆ぜる。
白夜の姿が“消えた”。
蟻塚「!?」
次の瞬間。
バギィッ!!
兵隊一人の顔面に飛び蹴り。
さらに。
ドゴッ!!
肘打ち。
回転。
バキバキッ!!
一直線。
“突破”だけに特化した暴力。
白夜「どぉぉぉけぇぇぇぇ!!」
兵隊たちが吹き飛ぶ。
蟻塚「ッ!? 包囲が崩れ――」
遅い。
白夜はすでに一点へ全速力で突っ込んでいた。
誰も追いつけない。
スピード。
瞬発。
逃走経路の一点集中。
完全に“抜ける”ことだけを考えた動きだった。
蟻塚「待てやァ!!」
兵隊たちが追う。
だが。
白夜はもう校門へ到達していた。
タタタタタッ!!
小柄な身体が、夕暮れの校門を駆け抜ける。
白夜「ワハハハハハ!!!」
振り向きながら大爆笑。
白夜「ざまぁ見ろォ!!」
白夜「バーカ!! バーカ!!」
そのまま愛嬌高校の外へ飛び出す。
そして。
夕焼けの向こうへ消えていった。
沈黙。
グラウンドに残された蟻塚たちだけが、呆然としている。
蟻塚「……は?」
兵隊「……逃げた?」
兵隊「番長が?」
蟻塚の顔が引きつる。
蟻塚「いや待てや」
蟻塚「なんやあいつ!!」
兵隊「めっちゃ逃げ足速かったっす……」
蟻塚「そういう問題ちゃうねん!!」
―――――
一年校舎、廊下。
窓から見ていた田中、銀次、察知丸も固まっていた。
沈黙。
―――――
三年校舎、廊下側の窓。
そこから校門を見下ろしていた長口は、白夜が消えた方向を静かに眺めていた。
そして。
珍しく、小さく笑う。
長口「……変わってねぇなぁ、あいつは」




