第25話 蟻塚vs白夜
一年校舎。
廊下側の窓。
そこから、校庭の様子が見えていた。
田中、銀次、そして察知丸。
三人は無言で戦いを見下ろしている。
ドゴッ!!
白夜が一人を蹴り飛ばす。
速い。
とにかく速い。
小柄な身体が、まるで弾丸みたいにグラウンドを駆ける。
白夜「どけどけどけぇ!!」
バキッ!!
肘打ち。
回し蹴り。
数人が吹き飛ぶ。
だが。
田中は眉をひそめた。
田中「……あれが白星高校の番長か」
銀次「ちっちゃいねぇ♪」
田中「もっと迫力あるやつかと思ってた」
その横で、察知丸が丸眼鏡をクイッと上げた。
察知丸「見た目でナメられることは多かったらしい」
察知丸「だが、喧嘩は鬼ほど強い」
田中は再び下を見る。
だが。
現状は明らかに押されていた。
白夜はスピードで場をかき乱している。
それでも。
囲まれている。
逃げ場がない。
人数が多すぎる。
蟻塚たちは、それを理解した上で動いていた。
白夜「うわっ!?」
横から蹴り。
さらに背後から掴まれる。
動きが止まった瞬間――
ドゴッ!!
蟻塚の兵隊の拳が入る。
白夜「ぐっ……!!」
銀次「あぁ〜、なんか苦戦してるねぇ♪」
田中「……弱いな」
その時。
察知丸が静かに言った。
察知丸「喧嘩には“相性”がある」
銀次「相性〜?」
察知丸「喧嘩のタイプは、大まかに三種類に分けられる」
指を三本立てる。
察知丸「パワータイプ」
一本。
察知丸「スピードタイプ」
二本。
察知丸「そしてテクニックタイプ」
三本。
田中は黙って聞いていた。
察知丸「この三つは、三すくみの関係にある」
察知丸は窓の外を見ながら続ける。
「パワータイプはスピードタイプに弱い」
「どれだけ拳が重かろうが、当たらなけりゃあ意味ねぇからな」
「そして、スピードタイプはテクニックタイプに弱い」
「どれだけ速く動こうが、見切られたらおしまいだからな」
「最後に、テクニックタイプはパワータイプに弱い」
「どれだけ技術が高くとも、圧倒的な腕力の前には通用しないからな」
パワー<スピード<テクニック<パワー
銀次「……へぇ〜♪」
田中 (そういうもんなのか……)
グラウンドでは、白夜が再び数人を吹き飛ばしていた。
だが、その度に包囲が狭まっていく。
察知丸「例えば田中、お前はテクニックタイプ」
田中「……だろうな」
察知丸「あぁ」
そして。
察知丸は銀次を見る。
察知丸「銀次、お前はどう考えてもスピードタイプだな」
銀次「わぁ〜♪」
嬉しそうに笑う。
察知丸「で、あの白夜も同じスピードタイプ」
銀次「なんかじゃんけんみたいだねぇ♪」
察知丸「まぁ、必ずしもその相性だけで強さが決まるわけじゃねぇ」
察知丸「さらに、それぞれ得手不得手がある」
察知丸「パワータイプは集団戦が得意だ」
察知丸「力で周りを巻き込みつつ蹴散らすからな。逆にタイマンは苦手な場合が多い。動きが読まれやすいからな」
察知丸「テクニックタイプは中間」
田中を見る。
察知丸「集団戦もタイマンも、そつなくこなせる万能型」
そして。
察知丸の視線が白夜へ向く。
察知丸「スピードタイプは、タイマン最強格が多い」
察知丸「だが――集団戦が苦手だ」
その瞬間。
白夜の動きが止められる。
後ろを取られた。
前を塞がれた。
そして。
ドゴッ!!
横から拳が叩き込まれる。
白夜「ッッ!!」
察知丸「囲まれると、“スピードを活かす空間”がなくなるからな」
銀次「なるほど〜♪」
銀次は楽しそうに窓へ張りつく。
銀次「それで白夜ちゃん、あんなに苦戦してるんだぁ♪」
田中は腕を組みながら、静かに戦況を見つめる。
田中「……相性なんて考えたこともなかったな」
察知丸「まぁ、お前は万能型だからな」
そして最後に。
察知丸は丸眼鏡を光らせた。
察知丸「集団戦を最も得意とする蟻塚相手に――」
グラウンドで、白夜が再び包囲される。
察知丸「白夜がどう立ち回るのか」
察知丸「……見ものだな」




