第23話 長口vs星滝
愛嬌高校・校門前。
鉄柵は歪み、地面には無数の亀裂。
すでに校舎内の戦いは決着がついていた。
だが――
ここだけは、まだ終わっていない。
ドゴォッ!!
長口の拳が振り抜かれる。
星滝が身体を捻り、紙一重で回避。
そのまま横へ滑るように移動する。
星滝「っぶなぁ……!」
笑っている。
だが額には汗。
呼吸も荒い。
対して長口は、重い呼吸こそしているが、足が止まらない。
一歩。
また一歩。
巨大な壁みたいに前へ出る。
星滝の戦い方は、徹底したヒット&アウェイだった。
踏み込み。
打撃。
即離脱。
真正面からは絶対に打ち合わない。
ドッ!!
星滝の蹴りが長口の脇腹へ入る。
鈍い音。
だが。
長口は止まらない。
星滝「うわ、マジで硬っ……!」
次の瞬間。
ブォンッ!!
長口の拳が空気ごと薙ぎ払う。
星滝が飛び退く。
ほんの少し遅れていたら終わっていた。
星滝「それなんよなぁ……」
息を吐く。
星滝「一発が重すぎるんよ、お前」
長口「……」
無言。
ただ前へ出る。
―――――
高二の頃から、二人は何度も喧嘩していた。
白星高校が攻める度。
星滝は門番の長口とぶつかる。
だが結果は毎回同じだった。
“星滝は、いつも門を通れない”
―――――
星滝が舌打ちしながら踏み込む。
ヒュンッ!!
拳。
蹴り。
肘。
連撃。
速い。
だが。
長口は耐える。
受ける。
前へ出る。
そして――
長口「……終わりだ」
ドンッ!!
拳。
たった一撃。
星滝のガードごと吹き飛ばした。
「ッッ!!?」
星滝の身体が宙を舞う。
そのまま――ドンッ!!!
地面に墜落する。
沈黙。
空気が固まる。
長口は拳を下ろした。
星滝は地面へ仰向けのまま、数秒黙っていた。
やがて。
「……ハハ」
小さく笑う。
星滝「長口、やっぱお前つえぇなぁ」
口元の血を拭う。
星滝「一体いつになったら、お前に勝てるんだか」
長口は静かに息を吐いた。
長口「……今回はかなりやばかった」
星滝「お?」
長口「毎回、差が埋まってきてる」
長口は星滝を見る。
長口「次は負けるかもな」
少しだけ間を置く。
そして。
長口「まぁ、負ける気はないが」
星滝が吹き出した。
星滝「ハハッ、相変わらずやなぁ」
その時だった。
後ろから足音。
田中と銀次が、校門前へ歩いてくる。
銀次「終わってたぁ♪」
田中は周囲を見渡す。
壊れた地面。
倒れた白星の連中。
そして、仰向けの星滝。
田中「……あんたが白星の副番長か」
星滝は身を起こした。
星滝「おう」
星滝は二人を見る。
その目が少し細くなる。
銀次「ん〜?」
星滝「最近、“愛嬌一年は弱い”って噂」
星滝「大阪中に広がっとるやろ?」
田中「……!」
銀次「え?」
星滝は肩をすくめる。
星滝「白星が動いたんも、その噂が原因や」
星滝「“愛嬌の一年なら簡単に潰せる”ってな」
田中と銀次の表情が変わる。
銀次「……えぇ〜?」
田中「そこまで広がってたのか」
星滝「そら広がるやろ」
星滝は苦笑する。
星滝「“代表戦で鬼塚にビビり散らかしてた一年”なんて話、他校からしたら格好の獲物や」
田中は眉をひそめる。
田中「……クソみてぇな広まり方だな」
銀次「なんかヤだねぇ〜」
星滝「愛嬌は大阪最強、それは周知の事実」
星滝「だからせめて、1年だけでも潰したい」
星滝「どこも自分らの学校の"格"をあげたいんや」
そして、ニヤリと笑った。
星滝「……まぁ、俺はこのバケモンにリベンジしたかっただけやけどな。無理やったけど」
銀次「三鬼の強さは身に染みてるよ〜♪」
田中「……」
銀次が成田とやり合った時を思い出す。
結局、もう1人の三鬼(初音)が止めにきたからよかったものの…
もしあのまま続けていたら…
俺の銀次が怪我をしたかもしれない……
星滝「そうかー」
星滝「まぁでもなぁ」
星滝「今日来た理由、それだけちゃうねん」
田中「……?」
星滝は立ち上がる。
そして。
少し楽しそうに言った。
星滝「うちの番長、“白夜”が後で行くってよ」
空気が変わる。
長口の目が細くなる。
長口「……白夜が動くのか」
星滝「あいつの指示やねん」
長口「?」
星滝「愛嬌1年だけでなく、2年と3年全員に喧嘩売ってこいって言われたんや」
星滝「元々負けるのは分かっとったはずや」
星滝「ただあいつは戦闘狂や」
星滝「自分の部下の仇っちゅう名目やと、気持ちよ〜く暴れられるやろ」
ニヤリ。
星滝の笑みが深くなる。
田中は黙ったまま、校門の外を見る。
銀次だけが、嬉しそうだった。
銀次「わぁ♪ なんか楽しそうな人来そう〜♪」
長口「……厄介なのが来る」




