第19話 白星高校
須藤の言葉で空気が張り詰めたまま、一年A組は一気に騒がしくなる。
「またかよ!?」
「今度はどこだ!?」
「斬念の次って早すぎんだろ!」
須藤は荒く息を吐きながら言った。
須藤「校門前や」
須藤「白星高校の連中が、校門前に集まってる」
銀次「どうする〜?♪」
その瞬間。
察知丸の目が細くなる。
察知丸「愛嬌高校は、昔から“大阪最強”って言われてる」
察知丸「だからな、“愛嬌を潰した”って看板欲しさに狙ってくる馬鹿は多い」
長谷川「まぁ、名前売れるしな」
察知丸「乗り込んでくる連中も今まで大勢いた」
察知丸は窓の外を見た。
察知丸「でも、その度に校門で返り討ちにしてきた男がいる」
全員の頭に、同じ顔が浮かぶ。
銀次「あ〜♪ 長口さんだぁ♪」
察知丸「あぁ」
察知丸は続ける。
察知丸「愛嬌高校、裏門はいつも閉まってるだろ?」
米田「あー、そういやいつも閉門してるなー」
察知丸「去年までは開いてたらしい」
察知丸「でも長口さんが一言」
察知丸は声を低くして真似する。
察知丸「“裏門まで開いてたら守りきれん”」
一瞬静まる。
そして。
「いや怖ぇよその理由」
「どんだけ一人で守る気なんだよ」
「門番ってレベルじゃねぇだろ……」
銀次は楽しそうに笑う。
銀次「長口さんらしいねぇ♪」
ーーーーー
一年校舎、廊下側の窓。
そこから、愛嬌高校の校門が見える。
そして。
いた。
白星高校。
一年が50人以上。
校門前を埋めるように並んでいる。
「マジで多いな……」
「うわ……」
「これ校門突破する気か?」
一年たちがざわつく。
だが。
その校門の前には、たった一人だけ立っていた。
三鬼――長口。
腕を組み、微動だにしない。
まるで巨大な壁。
田中は静かに目を細める。
田中「……どう動くか、見ものだな」
銀次は窓に張りつきながら笑う。
銀次「わくわくするぅ♪」
―――――
校門前。
白星高校の先頭に立つ男が、ニヤニヤしながら前へ出る。
「ここが愛嬌かぁ?」
「思ったより普通やな」
「一人だけとか、舐めてんのか?」
笑い声。
白星の連中がじわじわ前へ出る。
だが。
長口は動かない。
視線だけが、静かに相手を見ていた。
白星のリーダー格が眉をひそめる。
「……なんやおっさん」
長口「帰れ」
低い声。
短い。
それだけ。
白星側が一瞬静まる。
そして爆笑した。
「ハハハ!!」
「なんやこいつ!!」
「一人で止める気か!?」
長口「……」
無言。
だが、その圧だけで空気が重くなる。
白星の一人が苛立ったように前へ出る。
「舐めんなや!!」
拳を振り上げ、突っ込む。
その瞬間。
ドゴッ!!
視界がブレるほどの速度。
長口の拳が、男の顔面へ突き刺さっていた。
「ッッッ!?」
男の身体が宙を舞う。
そのまま地面を転がった。
沈黙。
白星側の笑いが止まる。
長口は腕を下ろす。
長口「……帰れと言った」
声色は変わらない。
だが。
今の一撃だけで、“格”が理解できてしまった。
窓から見ていた一年たちが息を呑む。
須藤「……うお」
米田「エグ……」
仲谷「見えんかったぞ今」
銀次だけが目を輝かせていた。
銀次「長口さん強ぉい♪」
だが。
白星側も止まらない。
リーダー格が顔を歪める。
「上等や!!」
「全員で潰せェ!!」
50人以上が、一斉に校門へ雪崩れ込む。
その瞬間。
長口が、初めて一歩前へ出た。
地面が、沈む。
そして――
長口「……通さん」




