第16話 田中vs轟
校舎の奥。
静まりかけていたはずの斬念高校に、再び重たい足音が響き始めた。
ザッ……ザッ……ザッ……
一人ではない。
二人でもない。
校舎の影から、ぞろぞろと“2年”の集団が姿を現す。
空気が一段、変わった。
さっきまでの1年とは明らかに違う圧。
須藤「……おいおい」
長谷川「まだ出てくんのかよ……」
米田「え、、ええ……」
仲谷は舌打ちする。
仲谷「めんどくさくなってきたな」
だがその横で、銀次だけは目を輝かせていた。
銀次「わぁ……♪ 今度はお兄さんたちだぁ♪」
まるで遠足の続きみたいな声。
田中はその前に一歩出る。
視線はブレていない。
田中「……来たか」
2年たちの群れの中心。
ゆっくりと、一人の男が歩いてくる。
肩幅が広い。
無駄のない体つき。
目つきだけで空気を押し潰すような男。
男は立ち止まると、腕を軽く鳴らした。
ゴキ……ゴキッ。
轟「俺は轟ってもんや」
低い声。
轟「何があったかは知らんが」
轟「うちのもんが世話になったらしいのお」
その視線が、地面に倒れた1年たちへ向く。
そして、田中たちへ戻る。
轟「で?」
須藤が一歩出ようとするが、田中が手で制した。
田中「俺が行く」
轟「ほう」
一瞬。
空気が沈む。
轟「お前か」
田中「文句あるなら受けるぞ」
轟はニヤリと笑った。
轟「ええ度胸や」
その瞬間だった。
ドンッ!!
轟が踏み込む。
地面が鳴る。
田中も同時に動く。
ドッ!!
拳と拳が真正面からぶつかる。
空気が割れた。
須藤「ッ……!」
米田「速っ……!」
長谷川「見えへん……!」
仲谷「マジかこれ……!」
田中は一歩も下がらない。
轟もまた、押されない。
轟「おもろいのお……!」
ドゴッ!!
轟の肘打ち。
田中は半身で受け流す。
そのままカウンター。
ドンッ!!
轟の肩が揺れる。
轟「……っ」
今度は田中が踏み込む。
バキッ!!
鳩尾。
だが轟も即座に反応する。
ガッ!!
膝蹴り。
田中の腹に入る。
二人同時に距離を取る。
静止。
一瞬の沈黙。
田中「……やるな」
轟「そっちこそや」
にやりと笑う轟。
“互角”
須藤「なんやあれ……」
米田「レベル違いすぎるやろ……」
長谷川「化物や……」
銀次は嬉しそうに見ていた。
銀次「たっくん、楽しそう〜♪」
轟が息を吐く。
轟「なぁ」
轟「今日はここまでや」
田中「……あ?」
轟「うちの1年が世話になったんは事実や」
轟「でもな、潰し合いのタイミング間違えたらキリないで」
轟は軽く手を振る。
轟「一回引け」
田中は少しだけ黙る。
そして。
田中「……そうか」
田中も拳を下ろす。
田中「俺らも目的は同じだ」
轟「ほう?」
田中「ナメられた分は返す」
轟「ええやん」
轟は笑う。
轟「次は本気でやろか」
田中「望むところだ」
二人は視線を外す。
緊張は残ったまま。
だが、戦いは一度止まった。
轟は2年たちを引き連れ、ゆっくり校舎へ戻っていく。
去り際。
轟「おい1年」
田中「……?」
轟「次来る時は“遊び”やないで」
田中「わかってる」
轟「ほなな」
完全に撤退。
―――――
静寂。
米田「……助かった、んか?」
須藤「いや、これ終わってへんやろ」
長谷川「絶対また来るやつや」
仲谷「だる……」
銀次は満足そうに伸びをする。
銀次「でも楽しかったねぇ♪」
田中「…まぁな」




