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第六話 文学少女(他称天使)攻略作戦〜思考編〜

 土日を挟んで、憂鬱なる月曜日が始まる。だが、今日はいつもにも増してその憂鬱さが増大していた。


「いやー、二章に入ってからがめっちゃ面白くてさ。この土日で最後まで一気に読んじゃったよ」

「うん」

「いやー、まさか一章のラストで死んだ伯爵が最終章のキーになってくるなんて……今思い出してもやべえ」

「うん。この作者は、よくそういう手法を取り入れてるよ」

「へえ、他の作品も気になってきたな」

「じゃあ、明日持ってくる」

「マジで!? やった!」


 マジで!? やった! じゃねえよ!!

 ここ数日のアタックがジワジワ効いてきたのか、風羅(ふうら)さんも普通に受け答えできちゃってるし。いや、単に好きな本の話だからかもしれないけど。その証拠に、めっちゃ嬉しそうだし。興奮からか微妙に顔赤いし。もう天使というより大天使だし……。

 そりゃそうだよな。好きな本の話題を共有出来るんだから、めっちゃ嬉しいに決まってる。


「いやー、やばいっすなー。これは、負け戦フラグですかな?」


 蹴珠(けだま)よ。急に出てきて、テンション下がるようなこと言わないで。


(りゅう)、この世にフラグなんてものはないぞ」


 霧茅(きりがや)よ、それは同意しかねるぞ。


「……例によって、木窯(こかま)はいないのな」

「彼女には、永遠の眠りについてもらった」

「って、柳が言っていたと、後で(れい)に言っておこう」

「マジっすか!? 霧茅先輩、マジそれだけは勘弁っす!」

「お前、最近調子乗ってるらしいからなあ。玲さんに一発締めてもらうぜ」

「ひええええ」

「お前ら、邪魔しに来たんなら帰れ」


 全く。あちらさんは本の話題で夢中になってるらしく、こっちに視線は寄越さないが、こちらのやり取りが聞こえてないとは限らんのだぞ。

 ……つか、だったらここで作戦会議するなって話でもあるが。


「にしても、柳と同じ意見というわけじゃないけど、これは中々難儀しそうだな」

「本当ですなあ。にしても、今日も小夜(さや)たんかわゆす」

「合ってるけど、ぶっ殺すぞ」

「すんません」

「まあ、取り敢えずファーストコンテストは大事にしないとな」

「"コンタクト"な。ファーストコンテストって何だよ」

「第一印象だろ?」

「ちげえよ! "第一印象"がファーストコンタクトだよ!」

「なるほど、じゃあファーストコンテストって何だ?」

「それをさっき訊いたんだよ! つか、そこまで引っ張るネタでもねえからもういいよ!!」


 はあ、憂鬱な月曜の朝から漫才とは。ため息しかでねえよ。


「まあ、とにかく第一印象が大事なのは周知の事実だとして、じゃあどうするかだよな」

「ソンナノカンタンデスヨー。コレヲツカエバイチコロネ。ハロー、フウラ。マイネームイズ、リン、クガワ。ナイストゥゥミィトゥゥゥ!」

「霧茅、どうすればいいと思う?」

「そうだな。急に話しかけても微妙な空気になるだろうしな」


 霧茅の言うとおりだ。

 上園(かみその)が初めて風羅さんに話しかけたあの日、上園が会話を繋げるのに難儀していたこと、また風羅さんが困惑していたことは、この目でしっかりと見ている。

 結局、上園はゴリ押しでいったが、同じことを俺も続けてやる訳にはいかないだろう。つか、俺にそんな力は残念ながらない。

 つまり、自然な形で自然に話しかけることが大事になってくる。第一印象は大事だ。ここでしくじり、警戒心を持たれれば、後々面倒なことになってくるだろう。


「話しかけて知り合ってからは、本の話題で少しずつ近づけばいいけど。問題は、その知り合うキッカケなんだよなあ」

「何か学校行事とかは?」

「学校行事か……いや、暫く何もなくね? 修学旅行は去年の秋だったし」

「じゃあ、授業とかで班作って発表系は?」

「席的に同じ班になる確率は低いな」

「うーん、中々ないもんだなー」

「いや、一つありますぞ」


 自信満々で、蹴珠は言った。

 まあ、いつものことだが。


「球技大会ですぞ!」

「蹴珠。うちは球技大会は男女別なのは知ってるだろ」

「……そうでしたかな?」

「そうです」

「むむむ」


 ちなみに、男子は野球とサッカー、女子はバレーとバスケットだったりする。


「じゃあ、他の方法を考えるか」

「他の方法なあ……」

「九賀羽殿。風羅殿は、友人はいないわけではないのですな?」

「ないのですな? ああ、たまに不地方(ふじかた)さんタイプの人と喋ってるのを見るよ」

「では、その友人を利用すればよいのでは?」


 なるほど、とポンと手を叩いたのは霧茅だ。


「友人づてなら警戒されることもないし、上手くいけばそのまま親密な関係に繋げられる可能性もあるな」

「いや、それはない」


 友人づてに本が好きだからという理由で風羅さんまで辿り着くのはいいが、そこに行き着くまで、つまりその風羅さんの友人とどう知り合えと?

 結局、同じ問題にぶち当たるなら、わざわざ遠回りせずに最初から風羅さんと直接知り合うことを想定して作戦を練った方がよくないか?


「なあ、蹴珠、その友人とはどう知り合うんだ?」

「えっ、それは、まあ、流れといいますか、火七海殿の時と同じように勢いで」

「火七海さんの時は、不地方さんという木窯の友人がいたし、俺ら側にも明確な理由があっただろ。それに、相手が火七海さんだからこそ上手くいったようなもんだし」

「う、うむ」

「でも、今回は違う。それとも、前回と同じように俺が風羅さんのことが気になってるってカミングアウトしろと? それこそ、第一印象的に博打だ」

「うぬぬぬ……」


 風羅さんの友人と知り合うというのは良い考えだ。でも、それは今じゃない。今後、何処かで。今よりもずっと必要となる場面が出てくるはず。


「確かに、凛の言うとおりかもな。輝耶(かぐや)さんの時は上手くいきすぎた感じがするし、次も大丈夫だという考えで小夜さんの友人に特攻するのは辞めた方がいいかも」

「結局、タイミングの問題なんだよな。さて、だとするとどうやって風羅さんと知り合えばいいのか……」


 上園と風羅さんは、ぎこちなさはまだ残っているが、本の感想を嬉しそうに、楽しそうに言い合っている。

 俺も、あの場に立てるのだろうか?

 もし立てたら、それはどんな気持ちなのだろうか。


 …………。

 俺が、あの場に立つ?

 ずっと、見ているだけだった俺が?

 思い起こせば、ずっとそうだった気がする。

 前に出て行かない性格。内気とは少し違う。優しいとも少し違う。

 どうして? 俺は、何故今もこの位置で満足しているのだろうか。


「じゃあ、俺たちはそろそろ行くな」


 霧茅の声に我に戻り、俺は二人を見送った。

 何故、そんなことを不意に考えていたのか。

 もやもやした感覚を残したまま、俺は一限目の授業の準備を始めた。


あとがき


蹴珠柳


推薦図書『世界と夢が交錯して俺と生徒会長が肉体運命交錯(ディスティネーション)


ある一点を除けば、良くも悪くも普通のハーレムラノベですな。だからこそ、嫌いな人は嫌いだと思う。

しかし、その一点にさえハマれば、たちまちあなたも運命肉体交錯(ディスティネーション)したいと思いますぞ。

その一点って何かって? それは自分で探さないと意味がありませんな。

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