愛と怒りの王都、2
私は今どんな顔をして王都を歩いているのだろう。
キット怒りをあらわにして歩いているのかもしれない。
砂漠だらけの領土でも、家族に囲まれて、私は怒りを感じたとこがない。
凶悪な魔獣にさえ、早く安らかに土に戻ってくれと、祈りにも似た気持ちで、剣を振るう。
人間社会の理不尽さに比べれば、私の生き方は幸せなのかもしれない。
王家がどれほどのものなのか? もう、話の次第では魔石の供給をストップするか?
私はそう思ってしまった。 この顔のまま、私の剣を作ってくれた武器職人のガルシアに会うわけにいかない。 私はいったん泊ってる宿に戻り、気分を落ち着かせてから、彼の店を訪ねることにした。
娘がくれた、ミスリルの袋をにぎりしめ、家族の顔を思い出した。
皆、元気にしているだろうか? 思い出すだけで顔をゆるみ、私は微笑んでいた。
私は気を取り直し、懐かしい王都の冒険者ギルドのそばにある、武器店そばまで歩いていた。
思い出せば、懐かしい都、私がまだ男爵家から王都に出てきて、王の率いる騎士団に入ったとき、カルロスさんは私の上官であり、すぐれた水魔法の騎士であった。 彼は何かと厳しい貴族社会の末端の男爵出の私を厳しくも、あたたかい公平な目で見てくれた水魔法の先輩であり、私の師匠でもあった。
最初に男爵家から出て王都の武器屋を覗いている私に声を掛けてくれたのも、上官のカルロスであった。
そんな懐かしい思い出を胸に私は、目的の武器屋にたどり着いた。
武器屋は見たところ、まったく昔と変わらなかったが、店の前に並んでいる剣がまるでない。
もう店を閉めてしまったのかと、訪れるのが、遅すぎたのかと、しばらく武器店の前に佇んでいると、店が開き中から懐かしい顔が出てきた。 ガルシアさん、久しぶりです。私は彼に最敬礼の騎士の挨拶をした。 彼はジッーと私の顔を見ていたが、おお、アーノルドか、懐かしいのう、と顔を崩し、いつもの笑顔を見せてくれた。 立ち話もなんじゃ、さっさと店に入れ、私は店の中に通された。
彼が茶を入れてくれてる間に店を見回しても、武器がどこにもない。
私は彼の入れてくれる茶を飲みながら、訪ねた。
王都の軍の武器商人に材料がすべて買い上げられ、儂の店までなかなか、入ってこないと彼はいった。
儂も落ちぶれたものだ、 昔は聖剣士の武器を作ったともてはやされ多くの軍人の注文をこなしていたが、だんだん、剣も飾りに近い物の注文が増え、仕事の依頼を一切受けなくなった。
私は武器職人じゃ、真の武器しか作らないし作れない。 アーノルドや、私が作ったその剣を見せてくれ、私は剣を抜き彼の目の前に剣を差し出した。 彼は眩しそうに剣をゆっくり見て、作り方の魂と使う側の魂が一つになった良い剣じゃ、と自分の作った剣を、眺めた。
貴重なミスリルがあればのう、 おぬしに私の全魂をこめた、剣を一振りだけでも、作りたいがのう、
彼はため息をついた。
私はここで彼に娘から預かったミスリルの粉の入った袋を彼の前においた。
彼は良質なミスリルの粉を見て、大変驚いていたが、私は彼に家族の剣をお願いした。
そうか、王都を去る少し前に紹介してくれた、あの美人の女性騎士と結婚したのか?
しかし、おぬしはまるで変わらないなぁ。 美しく爽やかな青年のままじゃ。 いや、前より男前があがって、凛々しさが増した、素晴らしい男になったのう、儂は年をとって、もう、老いぼれじゃ。
この粉で、妻と息子の剣を作れと言うのか? ガルシアは聞いたが、アーノルドはさらに懐から、大き目のミスリルの石を3つほどだした。 ガルシアは驚いたように目を剥いたが、アーノルドはさらに驚くべきことをガルシアにつげた、 娘の土魔法でこれよりもはるかに大きなミスリルの岩を3つほど出した、もし剣の依頼を引き受けてくれたら、3つを息子のジェラルドがここに運ぶので、ぜひお願いします。 私たち家族の剣を作るのは、ガルシア、あなたしかいない。 アーノルドは深々と頭を下げた。 ガルシアはこの言葉に一瞬たじろぎ、答えをためらったが、この仕事が自分の終生最後の大仕事になるかもしれない。 今でも魔獣退治をして、真摯にこの国を守っている、親しい男の家族及び、アーノルドに名剣を授けたい。 ガルシアはもう一度アーノルドの剣をみつめ、手に取り、依頼を引き受けた。 ミスリルの粉は,となりで武具屋をやっている、弟に届けられた。
弟のガリアもこの粉をみて、これで、軽くて魔物の爪を通さない、渾身の武具を作ると、アーノルドの立ち姿を丹念にながめた。 ガリアはこれでアーノルドたちの武具を作るつもりのようだ。
アーノルドは静かにガルシアとガリアに言った。 無理な願いを通してくれて感謝している。
期間は設けない。 注文の剣を作ってくれたら、残ったミスリルの岩の返還は求めない。
思う存分、納得いくまで、いつまでも待っている。 と 再び 頭を下げた。
夕食はここで食べていけ、あいかわらずの、ごった煮じぁがのう。
3人はごった煮の鍋の前で、心ゆくまで、酒を飲み、昔の話に始まって、今まで長く会えなかった友と話に花を咲かせた。




