愛と怒りの王都
ファーブル子爵当主のアーノルドは、馬を走らせ王都に向かっていた。
胸にはしっかり、娘レイナからもらったミスリルの砂の袋を抱き、馬を走らせていた。 自分に黙ってついてきてくれる、理解ある美しい妻、最近逞しくなった息子のジュラルド、皆大切な家族だが、レイナは、アーノルドにとって、特別な娘だった。
昨日のあの子の涙を見た時、私はどうしてよいかわからなかった。
ダメな父親だな。 せめてレイナの希望する水魔法の知人を我が領に連れて行きたい。
風魔法の方は最強なジェラルドがいるし、今度来てくれた石職人さんの中にも使える人がいる。
水魔法のかたは、私の大切な師匠であり、恩人なので、今回の王都行で、逢えたら長らくの不義理を詫びたい。 何しろ、魔獣の多い領土に、妻、息子達を残し、王都に泊りがけで行くことは考えられなかった。
今回は、ジェラルドの風魔法が強化されたようなので、私も王都で会いたい人に会ってこようと思う。
ジュラルドにいつもより、すこし高めの宿を教えられ、今回はそこに泊まることにした。
その宿では、身なりはいつもの冒険者風であったが、私は冒険者には、見られなかった。
宿の皆はうやうやしく頭をさげる。 どうやら、私は上級貴族に見られているらしい。
早馬を飛ばし、3日目、私は王都にたどり着いた。 着いてから軽い食事を食堂でとったが、従業員の態度がいつもと違っておかしい。 皆、うやうやしく、頭を下げて、遠巻きに見てる。
私は思わず、ツヤツヤの髪に手をあてた。
食後私はいよいよ、心に思う、水魔法の部下に会いに王都の護衛部隊本部に出向いた。
驚いたことに護衛本部の軍人は、皆見た目がよく、無骨な軍人は見当たらず、私が軍にいた時とは様変わりしていた。 皆、一応に私に敬意を払う、軍人なりの挨拶をしたが、私の師匠であるカルロス大尉は、どこにもいなかった。 カルロス大尉はご不在か? と聞くと若い騎士がもう10年前に隊をやめたという。 私は、軍部に行き、彼の所在を調べた。
隊でもう一人、逢っておきたい部下がいた。 彼の名はローリー、王都より南の男爵家の3男で、稽古熱心で真面目な男だった。 同じ男爵ということで、とかく下に見られる彼を私は気遣ったが、
彼は風魔法の名手だが、気が優しいところがあって、軍の生活にはあまり馴染めなかった。
私が子爵領を王家から賜った時。自分も付いて行きたいと懇願してくれたが、魔獣の多い砂だらけのよいところのない領だったので、あえて、連れて行くことはしなかった。
ついでに彼の所在も聞いたら、彼はまだ、この王都の軍部にいた。
喜びもつかの間、若い騎士が案内して連れていかれたのは、軍部の奥にある、暗い倉庫であった。
こんなところに、ローリーが? 私は、一人、ポツリと椅子に座るローリーに声をかけた。
ローリーは、私に気づき、足を引きずりながら、私のところに来て、騎士として、最上級の挨拶をした。
ローリーその足はどうした? 何でも、稽古で足を折り、そのまま朝まで、練習場に閉じ込められ、
手当が間に合わなかったということだ。 私には誰がやったか、心当たりがあった。
男爵を馬鹿にしてた、南からきた、侯爵家の上官か? 隊長の私がいなくなったとたん、ローリーは、
彼の標的になったのだ。 私は、カルロス大尉にお前のことを頼んだが、、、
ローリーは、カルロス大尉にはお世話になりました。 王家の親戚であると言う侯爵家の上官に勇敢にも、抗議してくれ、彼を除隊させましたが、そのためにだんだんと立場が悪くなりました、
私のために、私をこの隊に残す代わりに御自分は、責任をとって、辞めました。
一体カルロス大尉やローリーにどんな責任があるのだと言うのだ。 私は隊長もご存じ通り、貧乏男爵家の3男で、隊をやめても帰るところはありません。 風魔法はありますが、足を引きずり歩く私に仕事はありません。 私をかばって隊をやめた、カルロス大尉が残してくれた仕事です。
ローリーは泣きながら、私に微笑んだ。
普段はこんなくらい倉庫の中で備品整理の仕事をして、隊が移動するとき、荷物運びの仕事をしていると知り。私は怒りに震えた。
ローリー、今私の子爵領では、風魔法の人が必要だ。 危険な目には合わせない。
よかったら、私の領にこないか?
私はカルロス大尉の居場所も調べてきた。 彼は今一人で暮らしているという、良かったら、2人でカルロス大尉のところを訪ねよう。 ローリーは意を決したように私を見て、隊長について行きます。と、うなづいた。 明日の朝、ローリーと軍部の前で待ち合わせをした後、私は軍部を去ろうとしたが、途中、今の隊長につかまって、輝くように美しい聖剣士様、私にその聖剣で稽古をつけてくださいと、頼まれたが、
私は急いでいるので、失礼する、と言って断った。 私は今怒っているのだ。稽古などつけたら、命の保証などはない。 私は足早に軍部をあとにした。




