王都の武器職人、ガルシア
その日、ガルシアはかなり不機嫌だった。
王都にシンドバットと呼ばれる冒険者が現れ、良質なミスリルの石が入ったという連絡があり、すぐにギルドに出向いたが、すでに王宮の魔導士がすべて買い占めてしまったらしい。
その日、商業ギルドにもミスリルの粉が入ったと戦闘防具を作っている弟のガンツを走らせたが、やはり、王宮の騎士団お抱えの武器職人が買い上げたそうだ。
武器職人にとって、喉から手が出るほど欲しいミスリル、王都でも1,2を争う武器職人である、ガルシアにもなかなか手に入らない剣の材料だ。
ミスリルの剣と言って思い出すことがある、王都に勤める騎士団に新しく入ってきた隊員の男が毎日白の警備が終わると熱心に武器を見にきていた。 男爵家の次男だと言う男はなかなかの美男子であったが、騎士としては優秀な人物でなかなか好感の持てる男だった。 変人と噂されている、頑固な老人にも、真摯な態度で、明るく笑いかけてくれる人物だった。 そんな彼が北の魔獣の森近くに大量の魔獣が流失したことで,王都からの魔獣討伐隊の隊長として、辺境伯領に出向くという。
挨拶にきたが、彼の剣をみたら、鉄に少しのミスリルが混じった剣だった。
そんな剣で魔獣と戦ったら、いくら優秀な水魔法の剣士でも魔獣に勝てるはずがない。
儂は、この店で一番良い、ミスリルが半分混じった、剣を餞別として渡した。
青年は恐縮していたが、これからの命がけの戦いに向かう、美しき美剣士を魔獣の餌にはさせたくないと、剣を受け取ってもらった。
その後彼は魔獣退治で目覚ましい成果を上げ、聖剣士として、国に認められたが、彼が店に来てくれた時、私は誇らしかった。 私の剣が彼によって聖剣になったのだ。
彼は子爵となり、魔獣の多い子爵領を治めているという。 王都で安穏に生活できるのは、彼が今も命を懸けて魔獣退治をしてるからだと思う。 それをなんだ、今の王都の騎士団は見目の良い剣ばかりをもとめたがる。 大金はだすからと、言われても、あいつらに剣を作るつもりはさらさらない。
出来ることなら、たくさんのミスリルを使い、もう一度聖剣と呼ばれる名剣を打ってみたい。
それが、生涯の自分の仕事になろうとも、かまわない。 心を込めて、作りたい。
自分の残り少ない情熱のすべてをかける、良質なミスリルがほしい。
でももう、私の手の届かないところにミスリルはいってしまったようだ。
もう自分はおわってしまったのか? ガルシアはがっくりして、今日も本日休業の札を出すのだった。




