マチスの息子達、望郷
マチスは宿を出て、再び馬車に乗り、ついに目的の公爵領にたどりついた。
ここから一時間ほどしたところに、息子達が住む街がある。
マチスはこの街でたくさんの食べ物を買った。 今日は息子達と一緒に、夕食を楽しもうと、パン、チーズ、果物、肉、野菜、ワインなど、抱えきれないほどの食べ物を持ち、息子たちの住んでいるアパートを探した。 息子たちのアパートは街のはずれにあった、路地裏のここの一角だけが、高級とは程遠い取り残された地域のようで、マチスは、初めて見る息子達のアパートを眺めた。
アパートには誰もいないようで、隣の大家らしき人が出てきて、3人は仕事にいったので、夜にならないと戻らないと言った。 息子たちの父だというと、今月は家賃が遅れているので、払ってくれ、と催促された。 家賃一か月、200ギガ、息子達3人は安い家賃のところに住んでいた。
マチスはため息をついた、これでは、私を迎えに来れないはずだ、まさかこんな生活をしているなんて、大家さんに鍵を貰い部屋に入り見回したが、10畳ほどの部屋にキッチンはあったが、家具といえば、机と椅子戸棚がおいてあるだけだった。
戸棚のようなものがあったので、開けてみたが、薄い毛布は端の方にあるだけであった。
マチスは買ってきた食料を机に並べ、肉と野菜でかんたんなスープを作り、息子たちの帰りを待った。
外がだんだん暗くなり、部屋の明かりが白い魔石量が切れかけているのか、ぼんやりともるだけだった。
子爵領は確かに砂だらけの貧乏な領であったが、魔石、魔獣の肉はレイナお嬢様の領の農民たちが安い値で街に卸してくれ、比較的豊富であった。
野菜はカリス家の領に住むレイナお嬢様のおじいさんが提供してくれるし、4か月に一度は魔獣狩り報奨金で買った野菜を無料で提供してくれている。 辺境伯に見放された、2つの子爵領主が何とか、協力して自分たちの領土を守ってきた。 そこにお嬢様の病が治り、天使のような土魔法でこの2つの痛んだ領を癒してくださろうとしている。
この部屋の惨状をみて、私は3人の息子を我が領に連れ戻そうと思った。
しばらくすると、ハロルドとビリーが部屋に戻ってきた。
私を見てかなり驚いたようだが、末っ子のビリーは泣きながら私を抱きしめた。
ハロルドは何を勘違いしたのか、親父、店を閉めてこちらに来るなら、誰か使いの者にでも頼んで、伝言でもよこせ、まだ用意が出来ていない、と焦って私に言った。
まあ、話はミゲルが帰ってからゆっくりする。 ミゲルは遅くなるのか?
今日は王都まで石材運びで3往復すると言ってたので、遅くならなければ戻らないと言ってた。
あの子は長男として、しっかり責任を果たす子だ。 自分の責任でこの公爵領に連れてきた弟達のために、誰より頑張っているのだろう。
ビリーがスープから美味しそうな匂いがしている、お腹が空いたと、笑った。
私はたくさん買ったマルパンを半分にきり、 肉と野菜をいれた、子爵家でごちそうになった、サンドイッチというものだ、と息子達に説明して、サンドイッチをテーブルに置いた。
サンドイッチとスープを出すと、2人は欠食児童のように、むさぼるように食べた。
体の大きなハロルドはよほどお腹が空いていたのだろう。 サンドイッチを持つ手がとまらない。
次から次に口に運んでいく。 ビリーにいたっては、泣きながら、スープを飲むので、時々むせている。 パンは山ほど買ってきたが、、、こんな食べ物にも苦労してる息子達を見て、マチスは言葉につまるのであった。
そのころ、長男のミゲルは、暗い気持ちで皆の住むアパートに向かいつつあった。
末のビリーが、一度故郷に帰りたいと言ったのを却下したが、あの寂しそうな顔を思い出し、主任に
前借を頼んだが、すぐに断られ、それなら、3人の給料をもう少し上げるように頼んだが、断られた。
逆に今度貴族様の息子がこの仕事がしたいと,言ってきた。
彼は優秀で石の研究をしているが、色のついた石を造りたいと、主任に言ってきている。
その人を雇いたいので、嫌ならやめてもらってもかまわない。
貴族様の息子を雇えば、コネで仕事も回ってくるだろう。
お前たちみたいな貧乏領では、コネはつかえないし、ビリーは特に使えない。
何かといえば、暗い顔をして、雑用がかりなのに、石の研究実験を熱心に見ていたので、今日も怒鳴り飛ばしてやった。 平民のくせに、石の研究なんて、100年はやいんだよ。
末の弟のことを、散々に言われ、おまけにまた、自分たちの領が貧乏だとばかにされた。
不満があるなら、やめてもらってもかまわない、 その言葉にミゲルは怒りでこぶしを作り、それを固く握ってがまんしていた。
帰りに食料品を買って帰るの約束だったが、なぜか、近くのパン屋のパンが売り切れていた。
一人のこの地では見慣れない老人が、残りのパンを全部買って行ったらしい。
腹を空かせている弟達に夕飯はなしだと言うのは、心苦しい。
自分もあの故郷に帰りたい、でも、貯金もなく、父親に何も土産も持たずに帰れない。
どう考えても、帰りたいけど仕事のない故郷には帰れない。
ミゲルは重い足を引きずるように、自分のアパートにもどるのであった。
ドアの側まで行くと、親父の陽気な笑い声が聞こえる。
弟たちも、何か言いながら笑っている。 空耳か?
ドアを開けたミゲルに父親は言った お帰り、ミゲル
驚いていると、弟たちが自分に夕飯の食事をもってきてくれた。
まずは飯を食え、 それから、お前たちに話がある。 ワインもチーズもある、酒でも飲みながら、これからの話をしよう。 親父は力強く息子達に言った。




