メリーの姉、シェリーの憂鬱
一体私が何をした、というのだろう。 昨日も酷く人前で怒鳴られた。
店のオーナーが変わると言うことで、新しい人が店に送り込まれてきた。
どうやらここの持ち主である子爵様のお嬢様の店が、借金のかたにとられそうになっているらしい。
まだ正式に譲渡されたわけでもないのに、新しくこの領土の上にある伯爵家の貴族様の親戚というご婦人が我が物顔で指図して、従業員の何人かは、それに耐えきれず、やめた人もいる。
我が子爵領を支えてる、子爵様の魔道具屋が最近経営困難になっているらしい。
ご家族全員、優秀で仕事には熱心な家族で作られる商品には、定評があったが、魔道具を作る材料が、最近、伯爵領から、まったく入ってこなくなったらしい。 隣にも伯爵領はあるが、今まで取引が無く、魔道具の材料を買うことは、不可能に近いようだ。
借金のかた替わりをしてくれるいうことで、子爵領のお嬢様は、出来の悪い公爵様の親戚の男に嫁ぐことを、検討しているそうだが、すっかり気落ちして、ここ最近、店には姿を見せない。
私は平民だけど、洋裁技術を認められ、この領内で一番の稼ぎ処に勤めたという自負があったが、
そのプライドも新しく来た人によって、粉々になってしまった。
この洋裁店もお嬢様と一緒に身売りすることになるのだろうか?
そうなれば、私はまっさきに、店をやめさせられることになる。
そういえば、つい最近、メリーがこの前話してくれた通りの愛らしく、美しいお嬢様が、メリーの伝言をもって、私を訪ねて来てくださった。 この間、家に帰ってばかりなのに、何か家であったのだろうか?
2人で可愛いポシェットを作って、街で売り出そうと、楽しそうに話していたメリーに、私は、もうすぐメリーの憧れているドレスの店をやめさせられる、と悲しい現実を話さなくてはならない。
新しく来た店長代理の人に明日お休みをいただきたい、と話したら、なんなら、ずっと来なくてもよいわよ、といわれた。 もと、店長だった人から、こちらは、上手くやっておくから、心配しないで帰ってね。と言われた。 この店に来て、店長は平民の私に厳しくて、嫌われている、と思ったが、行儀作法、
ドレスつくりの技術、仕事が終わると、忙しい中、特別に私に教えてくれた。 今更気が付いても遅いけど、厳しかったが、芯のしっかりした、案外、優しい人だったのかもしれない。
シェリーは、途中、明日の馬車の予約をして、憂鬱で、重い足取りで街の下宿屋に帰るのであった。




