魔の森にて
瘴気がきつい。 魔の森に入って、ジェラルドは顔をしかめた。
父や母は魔力が強いため、瘴気を寄せ付けないが、まだ、自分はそこまでの魔力を持たないので、風の魔力を使い、シールドを張って周りの瘴気を払いながら、動いている。
以前はもっと遠くまでシールドが張れて、討伐隊を7人ほどはガードできたが、今は自分一人、動くのが精いっぱいになってきている。 約束の魔リンゴの木まで、もう少しだ。
今日は魔獣の動きが大人しい。 父も母もその以上な雰囲気に警戒感を持っている。
10年ほど前には魔の森の魔獣を狩ることは、なかった。 狩りは魔の森から、出てきた、畑や森を荒らす魔獣だけであった。 そのため父や母は他の領地に行き、魔獣を討伐して、それなりの金貨を得ていたのだ。 今は自分の領土の魔獣を狩るので手一杯だ。
20年ほど前には、今のように魔獣多くなかったのは、魔の森を司る聖獣の存在があったからだ。
以前の火の魔法の持ち主の領主が、魔獣が多く出現するので、火魔法も使い手を多く雇い、魔の森の半分を焼き払ったからだ。魔の森を半分焼き払えば、魔獣の数も減るという、考えて、その方法をとったのだ。 それと同時に魔兎、魔鹿、魔猪、魔牛などの魔獣の草食系魔獣の食料となる、魔の森のまわりの草原も焼き払うという、無茶ぶりをしたのだ。 これにより、畑などに出没する魔獣は減少して、領主の魔獣退治という、煩わしい仕事から、解放されると、思ったようだ。
魔の森を半分残した理由は、瘴気を吸収して、それを浄化する草や木が存在する。 人間が食べても無害で反対に体に良い草花は薬草としての効能があるものが多い。 それらの草や花を食べた魔獣にも人間の体にとって有効な成分が、あるので、それを取りに集まる冒険者も多くいて、魔の森なので冒険者は2度と戻らない人がおおかったようだが、の領土周辺は活気に満ちていた。
魔の森を半分焼き払ったことで、豊かであった領土の土地が急速に砂漠化して、魔の森は今まで以上に瘴気に満ちて、毒草が増え、それを食べた魔獣の肉は人間には食べられない肉になってしまっている。
また、比較的おだやかな草食獣系魔獣が減り、狂暴な肉食獣ばかりが増えてしまった。
彼等の食料がなくなれば、人間も襲いかねない。
王国でおおがかりな魔獣討伐が行われた時、父、アーノルドの活躍は目まぐるしく、子爵の爵位と形ばかりの恩賞として、前の子爵が税が払えなくなり、国に返した、使い物にならない領土を貰ったのだ。
魔リンゴの木の下に着いたジェラルドは、3つほど実っていたリンゴを風魔法で落とした。
木の葉もついでに落ちてきたが、葉の中に黄ばんだ色の葉が混ざっていた。
リンゴの実を鑑定したが、どうやら、まだ毒はなく、体には良い成分があるようだ。
このリンゴも近い将来、自分たちの口に入らなくなる。 ジュラルドはため息をついた。
さらに森の中を進むと、蜂蜜のとれる、エリアがあった。 魔草は半分ほどに消滅して、花は元気がなく、萎れているものも多かった。 風魔法で魔蜂を払い、蜂蜜をほんの少しだけ,瓶につめた。
魔の森は確かに異常だった。 死の森のように静かだった。 父や母はこの先にある、聖獣の住んでいたという、祠の様子を見に行きたかったようだが、瘴気がひどく、引き返してきた。 魔の森の聖獣は死に絶えてしまったのか?
このままでは毒のある魔獣がこの森から出て、人間を襲う可能性が高くなる。
瘴気をまき散らし、ほんの僅か豆などがとれる畑も消え、20件ほど、総勢40人ほどの住民達も住む場所を追われるかもしれない。 今まで一度も感じたことのない恐怖をアーナルドは感じた。
家族3人はそれぞれの思いを胸に異常な魔の森を引き上げていった。




