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不遇王子は脳筋になりたい  作者: 田中恵人
第一章 学園生活リスタート
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第32話 無能王子の評価

 旧校舎の幽霊をぶち殺してから数日後、授業の課題を進めるためエルシオンと図書館に来ていた。ここには何千冊もの本が蔵書されていて、司書なしでは目当ての物を絞り込むのも一苦労だ。ま、僕は転生前入り浸ってたから大体の本の場所がわかるので、サクッと見つけ手に取り、ブースへと移動する。

 

 「殿下、この魔法陣の術式は――」

 「抽出と再構築かな。この部分を組み込めば――」

 参考図書を片手に書き進めること数十分、ひと段落したところで、エルシオンが話しかけてきた。


 「手伝ってくださりありがとうございます。正直、ここまで詳しいとは思いませんでした」

 「役に立ってよかったよ。というか、良かったの?誘われてたの勉強会に参加しなくて」

 「……殿下。あれは勉強の場ではありません。学業を名目に交友関係をアピールする場であり、課題の進歩にはむしろ邪魔まであります」

 「そうなんだ。知らなかった……」

 僕、無能王子として見られてたから、勉強会誘われたことないんだよね。まあ、今から誘われても行かないけど。エルシオンは去年一度だけ学期末試験で学年首位になったことがある。彼に頼った方が効果的だろう。いつか真面目な勉強会を開いてみるのもいいかもしれない。

 学校の終業を告げる鐘が鳴り、作業を中断する。エルシオンを送るため学生寮へと向かう道中、生徒達のうわさ話が耳に入る。

 

 「ねえ、あれクルーガー様じゃない?何で無能王子といるんだろ」

 「馬鹿。その呼び方はダメだって。レオナルド殿下が言ってたでしょ」


 「あの二人、並ぶと絵になるわ~」

 「わかる。知的コンビって感じ」


 最近、学園内で伊達メガネをかけ始めたからか、僕に対する評価がマシになった気がする。あまり自覚はなかったが、僕もエルシオンも容姿は整ってる方だ。これまで見かけなかった組み合わせが話題を呼んでいるのだろう。

 

 「時代はインテリメガネか。エル、お揃いだね」

 「戦闘スタイルは真逆ですけどね」

 

 学生寮は白を基調としたシンプルだが洗練されたデザインで、どことなく温かさを感じさせる。せっかくだし入ってみようと思ったが、エルシオンにここまでで大丈夫と告げられ、帰ってしまった。


 一人で校門を抜けようとすると、目の前に数人の男子生徒が道を塞ぐように立ちはだかった。こちらをニヤニヤ見つめていることから、標的が僕であることが一目瞭然(いちもくりょうぜん)だった。

 

 「……どういうつもり?」

 「無能王子が調子乗りやがって。気に食わないんだよ!」

 そう言って、ガタイのいい一人が殴りかかってきた。顔面目掛けて飛来した拳に左手を添えて受け流し、空いた胸へカウンターを叩き込む。打ち所が悪かったのか、口から血を垂れ流し、その場に倒れ伏す。その光景を見た残りの生徒は、仲間をやられた痛みと、僕に対する恐怖で震えていた。

 

 「お前ら、頭大丈夫か?」

 自分で殴っておいてなんだが、王族に殴りかかるって正常な判断ができるやつなら絶対にやらないよな。薬物にでも手を出してたのかな?

 思わず口調が崩れてしまったことに動揺していると、負傷した男を取り巻きがせっせと運び始め、学園の外へと走り出していった。


 「あいつら貴族だよな……この国大丈夫かな」

 人の世において理由なき暴力を振るってはいけない。当たり前だと思っていたが、流石は異世界というべきか。倫理観が培われてないのか、はたまたヒトという種が暴力で支配された歴史があるからか……

 とにかく、良くも悪くも有名人になった以上、行動一つひとつに気を付けなければ。僕だけならともかく、こういうのは身内もターゲットにされることが多い。一応、兄さんにも共有しておいて何かしら対策を立てなければ。

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