第30話 色違いのゴースト
2階の廊下に出ると、1階よりも白色の濃いゴーストや、赤や青、黒のゴーストが徘徊していた。中には僕たちに気づいた個体もいたが、教室内の発光する魔力塊を忌々しそうに眺め去っていった。
「本当に安全地帯なのか。よし、2階も飛ばすぞ」
朽ちかけた机を剣と拳で破壊し、階段を作る。にしても、これだけ劣化するほど月日が流れているのに何故今日まで取り壊されなかったのだろうか。
10段以上積み上げ、あとは【バーストナックル】を発動させるだけとなった所で、セシリアから少し休みたいと提案された。
女子二人は心身共に疲弊しているので、まだまだ余裕のある僕とロイドが外に出て偵察に向かう。白いのはただちょっと硬いだけだったが、色違いのゴーストはなんと火や水、闇属性の魔法を使って攻撃してきた。特に火球はヤバい。ボロい旧校舎に燃え移ったら大惨事だ。
水球や闇の球は回避し、火球は拳で相殺する。ロイドも同じように対処していたが、そのせいで僕がエンチャントした剣の氷が徐々に砕け、火球によって完全にはがれてしまった。
「ありゃ……溶けちゃった」
「強さも大体わかったし、引き返そうか」
安全地帯に戻ると、残った二人が黒板に地図を描いていた。どうやら3階の見取り図と比較して、元凶の居場所までの道のりを考えていたのだろう。
「お帰りなさい!元凶の場所がわかりましたよ!」
「マジっすか⁉」
「ええ。邪悪な魔力を探った所、音楽室にいるようですわ。ただ……」
「施錠されていて鍵がないと入れないみたいなんですよー」
「「……壁を壊せばよくない(っす)か?」」
その一言によって場が凍りつく。旧校舎だし、壁が壊れてもゴーストのせいにすればよいと説くと、セシリアとトワイライト嬢はドン引きしながらも同意してくれた。
3階に上がる前にロイドから剣を受け取ったトワイライト嬢は、3節ほどの詠唱を唱え、剣に星のような煌めきを付与した。
効果を確かめるために2階で試し切りを行ったところ、ゴーストの魔法も容易く弾き体を両断することが出来た。光属性に近い性質のようで、数体斬っても効果が切れていない。
3階には緑や黄色のゴーストが追加され、エンカウント数も2階より増えていた。とはいえ強さはさほど変わらず、戦い慣れたためスムーズに倒していく。
十数分後、他の教室よりも重厚かつ鎖と鍵で施錠された扉――音楽室の前に着いた。扉のすぐ横を軽く叩いてみると、防音室のためか頑丈で分厚いことがわかった。
「さあ、解体作業開始だ!まずはロイド、壁に穴を空けてくれ」
「承知したっす。【ソニックファング】!」
距離をとってから突進し、速度を乗せた突きが放たれる。戦技+エンチャントで強化された一撃により剣が深く突き刺さった。その周辺に拳を叩き込んで穴を広げていき、剣を引き抜く。ちょうど腕が入りそうな隙間が出来たので拳を挿入し、【バーストナックル】を発動!
閑散とした旧校舎に爆発音が響き渡る。煙が晴れた先はさっきまで壁だったガレキと、その先でピアノを弾いていたであろう女の霊が動揺して固まっていた。
『ギャァァァッァ!壁が爆発したーっ⁉』
「失礼しまーっす!おたくがゴーストの親玉で間違いないでしょうか」
知性がありそうだったので挨拶してみたが、女はプルプルと震え出していた。
『ふざけんじゃないわよあんた達!生かしては帰さない!!』
やれやれ、所詮は魔物。僕の顔を見るや否や親の仇と言わんばかりに襲い掛かってきた。




