第29話 旧校舎調査
旧校舎に入ると、真っ暗闇が奥まで続いていた。通路は3メートル程で、ランタンの光では遠くを見通せないほど長い。幽霊を当てもなく探すことは困難であり、いつどこで現れるかわからないという不安を駆り立てられる。
トワイライト嬢によれば、ここで活動していたオカルト研究会は並のゴースト程度なら対処可能だったのが、3階の方から強力な幽霊が現れ、攻撃され負傷したとのこと。さらに、強力な幽霊に呼応したのかゴーストが大量に発生しているらしい。
「他に聞きたいこと、ありますか?」
「大体わかったっす。ちょーど出てきたし」
ロイドが指差したのはどこかの教室。閉じていたドアや壁を白い塊がすり抜け、ふよふよ浮いてこちらに近づいてきた。あれがゴースト。とはいえ速度は非常に遅くあくびが出るほどで、僕たちに触れる前にセシリアが放った矢が体を貫いた。光属性を付与した弓矢ならば、通常の物理攻撃の効かないゴーストにも有効だ。だが湧いた数は尋常じゃなく、射撃をくぐり抜けて迫るゴーストたちは僕と、星形の魔法弾を放つトワイライト嬢が相手をした。
「『天より来たりしほうき星よ、悪なす者を打ち砕け――〈ステラバレット〉!』殿下、武器なしで大丈夫なんですか!?」
「問題ない。【バーストナックル】!」
十体近く集まったゴースト達に戦技を放つと、拳先が爆発し、一気に吹き飛ばした。てっきり爆発のような強力なパンチかと思いきや、本当に爆ぜるとは思わなかった。反動は【鉄の拳】のおかげで手の甲がプスプス焦げただけで、それもセシリアから〈ヒール〉をかけてもらい完治した。
先に進もうとしたが、戦闘に参加できずしょげた様子のロイドの姿が気になった。魔力を剣に纏わせれば霊体にもダメージを通せるはず――と思ったが、ダンジョン演習で魔法は一度も使わず、魔力を用いた身体強化もしていなかった。きっと魔力操作が不得手なのだろう。
手助けしようと彼から剣を受け取り、吐息を吹きかける。息がかかった瞬間、刀身に氷が纏わりついた。
「えっ⁉け、剣が凍ったんすけど⁉」
「これで攻撃できるだろ?」
「あっ確かに……。ありがとうございます!!」
攻撃手段を得たことでテンションが上がり、元の調子を取り戻した。次に現れたゴーストに向かって跳びかかり、あっという間に切り刻んだ。
しばらく進んでいると、ゴースト達が教室内に待機しており、全部倒して制圧すればその場に発光する魔力の塊が生まれ、他の個体が入れなくなることに気づいた。何だか陣取りゲームのような感じで不自然だと思うのは気のせいだろうか。
「これで3回目……埒が明きませんわ。早急に2階に進むべきかと」
「そうしたいのはやまやまですが、廊下を走って抜けるのは危ないですよ。背後から襲われたら大変ですよ」
一気に進みたいセシリアと慎重に動きたいトワイライト嬢の意見が対立する。どちらの言い分も理解できるが、時間をかけるわけにはいかない。何せ現在は大体夜7時~8時といったところ。長時間探索したくない。
どうしたものかと悩んでいると、ロイドが机を縦積みし始めた。
「何やってんだ……?」
「ふっふっふ、オレひらめいちゃったんすよ。ここって旧校舎じゃん?――天井、ぶち抜けばよくないっすか」
……思わず天井を見上げる。確かに老朽化によって脆くなってることが見て取れる。そして、ちょうど破壊に適した戦技もある。僕は机を階段状に積み上げ天井付近まで登り、【バーストナックル】を発動。
ドォォォン‼
「ひゃあっ‼何なの……!」
「……そういうことですか」
天井は見事に壊れ、2階に直通の縦穴が出来上がった。先行して上がると、爆音につられたゴーストが出迎えてくれた。感謝の証に魔力を纏った拳をプレゼントすると、欲しがりさんが次々現れた。
1階のと比べて多少硬くなった気がするが、難なく制圧し、安全地帯となった。3人を引き上げ、ショートカットに成功した。
素敵な提案をしてくれたロイドに感謝だ。




