第24話 第4層ファーム
第4層は第3層とさほど変わらず、鬱蒼とした森が広がっていた。数分歩いていくと、木々の奥から何かが爆走する音が聞こえた。陣形を組んで待ち構えていると、茶色の毛皮に覆われ、体高1.8m程の牙が発達したイノシシ――フォレストボアがこちらに突っ込んできた。
僕は盾を構え、真正面から待ち構える。僕とフォレストボアがぶつかる直前、地面から土が盛り上がり、フォレストボアが躓いた。減速した瞬間、僕、ロイドがそれぞれ拳・剣を叩き込む。
速度が減衰したとはいえ、巨大なイノシシの突進による衝撃が腕に伝わる。骨が軋む感覚を見て見ぬふりをし、拳を振り抜く。
動きが止まったフォレストボアの首に大鎌が振り下ろされる。あっさりと首が飛び、死体が霧散した。
「お、肉ドロップした」
「どの部位かわからないっスね。まあ、鍋にでもぶちこめばいいか」
「毛皮と牙は……かさばりそうだが、一応持っていくか」
その後も狩りをしながら移動する。この階層には樹木に擬態するトレント、罠を駆使する猿の魔物トリックエイプ、群れで狩りを行うグレイウルフなど、動物系の魔物が生息しているようだ。それぞれかなりの脅威だったが、虫に比べれば精神的にマシだ。苦戦はしたが大怪我を負うこともなく討伐できた。
第5層への階段にたどり着いた時、2日目が終わろうとしていたのでキャンプを開始。和気あいあいと過ごし、3日目の朝が来た。
「今日は第5層に行けるわけだが……お前らどうする?」
「先に行くのは反対かな」
「俺も同感ですね。情報を集めていませんし」
「うーん……仕方ないっスね。気を取り直して、昼過ぎまでファームするっス!」
方針を決め、来た道を引き返し昨日見つけていたグレイウルフの縄張りへと突撃する。ヤタガラスにはフィールドボスを警戒して待機もらい、僕、ロイド、エルシオンの3人で攻めかかる。
『大地よ、礫となりて敵を打ち砕け――〈ロックブラスト〉!』
エルシオンによって生み出された岩塊が見張りの1体を粉砕。それを合図に飛び出した。僕の剣を渡し二刀流となったロイドが最前線の2体を斬り裂き、奥から嚙みついてきた1体を殴り飛ばす。
「ハハッ、コツが掴めてきたぞ!」
「どんどん行くっスよー!」
「ったく、少し落ち着けよ。援護が間に合わないだろ!」
鋭い爪が僕たちに激突する前に、風の刃がグレイウルフを両断する。眼鏡を押し上げたエルシオンがさらに背後から急襲した2体を阻むように土の壁を生成した。
左右に回り込もうとした所をそれぞれ撃破。目に付く魔物を一掃したところで、一度立ち止まって深呼吸する。その時、動きが鈍るタイミングを見計らったのか、一気に5体襲い掛かってきた。
「――〈アクアベール〉。行くぞ、総攻撃だ!」
全員にリジェネ効果を付与し、グレイウルフの群れへと突っ込む。果敢に突き出された爪に拳を合わせ破壊しつつ、反対の腕で顔面を殴り吹き飛ばす。同時に、背中に爪が振るわれ、頭を狙って噛みつかれる。噛みつきだけは前転して躱し、反転してひっかいた個体に裏拳を叩き込む。
噛みついてきた方は、僕にだけ注目し、機を伺っている。後ろ足を蹴り上げ走ろうとする直前に、死角から剣が投げ飛ばされ命中。何されたかわからないまま、光となって消えた。
僕はロイドのいる方角に親指を立て、まだ息のあるやつにとどめを刺す。二人に加勢しようとしたが、最後の1体に暴風が吹き荒れバラバラになっていることを確認し、踏みとどまる。
背中の傷をメビウスリングで塞ぎ、ドロップアイテムを回収。不意打ちを仕掛けてきたのでまとめて討伐し、3人揃ってヤタガラスに合流する。
「お疲れさん。こっちは何も出なかったぞ」
「それは残念。もう一回宝箱開けたかった」
「フィールドボスってそうポンポン出るもんじゃないっスね」
「俺としては第3層の方が手強く感じた。やはりあのカブトムシが異常だったんだな」
「私もそう思う。いい感じだし、ここで帰還しないか?」
ヤタガラスの提案にそろってうなずく。ダンジョン脱出用アイテム――『帰界のコンパス』を使用。僕たちの足元に魔法陣が出現し、入った時と同じようにまばゆい光に包まれる。浮遊感に身を任せ目を閉じ、しばらくしてから目を開けると、石造りの広間が広がっており、周囲には教員や生徒が僕たちを囲んでいた。
守衛に怪我の有無を調べされられ、解放された時、一人の生徒が心配そうに近づいてきた。懸念を吹き飛ばすよう、笑顔を浮かべ帰還を告げる。
「ただいま、セシリア」




