第20話 思わぬ強敵
第3層へと続く階段を降りた先は、青々とした森が広がっていた。上2層と比べて視認性が低く、木の根が張り巡らされている場所もある。足元にも注意せねば。
ロイド曰く、この階層では階段はひとつだけで、場所も近いとのこと。指定された方向へと進む道中、樹木の上から巨大な何か降ってきた。
丸っこいフォルムの赤い体色に黒い斑点…そして発達した顎をもつ巨大なてんとう虫だ。てんとう虫といえば小さく穏やかなイメージなのだが、目の前の魔物はこちらに敵意を向け、襲い掛かってきた。
先頭にいた僕に勢いよく突っ込んできたので、剣を抜き構える時間はない。なので、両顎が閉じるよりも速く拳を口内へ叩き込む。
突進の勢いを利用した一撃は口から胴まで到達し、瞬く間に光の粒子と化した。
「……ロイド、エルシオン。何であいつ巷で『無能王子』って呼ばれてんだ?」
「剣も魔法もろくに出来ず、一芸に秀でているわけでもなく引きこもってる……これが俺達の知るサウザー殿下なんだが……」
「とてもそうには見えないっスね」
「――追加で来たぞ!」
たやすく討伐したはいいものの、今度は1メートル程のカブトムシが群れで迫ってきた。僕の一声で集中し直した3人は、各々攻撃を仕掛ける。
「【スパイラルエッジ】!」
「『風よ斬り裂け――〈ウィンドカッター〉!」
「【血閃】」
ロイドは縦横無尽に斬撃を繰り出し、エルシオンは風の刃を放つものの、外殻に阻まれてしまいそこまで効いていない。対してヤタガラスの放った斬撃は、血煙のようなオーラを纏い、巨大カブトムシの体をいともたやすく斬り裂いた。
攻撃技を持たない僕は飛来する一体の羽を掴み、地面へ引きずり下ろす。角による突きを避け背後から上に乗り重い一撃を食らわせる。
【鉄の拳】のおかげか、外殻に大きなヒビが入り、衝撃が内部に伝わる。スタンした所に追撃しとどめを刺した。
「カブトムシって群れないはずだろ!どうなってるんだ!」
「んなことオレにはわかんないっスよ!」
決定打に欠ける二人は焦り、次々と攻撃を食らってしまう。回復のためにポーションを使用するも、その隙にまた被弾するという悪循環に陥ってしまった。
その間ヤタガラスは僕の周りから処理し、僕は一体ずつ対処していた。が、このままでは二人が危険だ。
「ヤタガラス、二人に加勢しろ!」
「……わかった!すぐ片付ける!」
これで二人は大丈夫。孤立した僕の周りには……6体か。統率もなくバラバラに動くから、何とかなるだろう。
メビウスリングを起動し、体内の魔力を循環させる。半ば無意識に行ったのだが、それにより以前銃で撃たれた際、過剰回復により一時的に身体能力が増したのを思い出した。
準備中にもかかわらず、カブトムシ共は角で貫こうと近づいてくる。右腕に魔力と生命力を集中させ、角に向かって殴りかかった。
少しは威力が増す――そう思い放った拳は、強固な角ごとカブトムシの体をぶち抜いていった。
「……マジか」
思わずつぶやいたその時、倦怠感と鋭い痛みが僕を襲う。生命力を振り絞ったのと、別の個体から攻撃されたせいだろう。
懐から取り出したポーションのビンを握り潰し、少しだけ回復する。破片が刺さった痛みで倦怠感を吹き飛ばし、再び拳を握りしめる。
そして、攻撃を気合で耐えて殴り続け――ついに最後の1体を打ち砕いた。




