第二十六話 白鷺の羽休め
間章に入れるか迷った話ですが、本編に入れることにしました。
あの昇格試験から、およそ一ヶ月経過した八月下旬。今年は昨年の大量の台風に悩まされたのが嘘のように強烈な日照りを繰り返す酷暑が続き、全国各地のダムが渇いて水不足に陥る地域が出るほど降水量が少なかった。鳴上の双神湖も観測史上最低にまで水位が下がっている状況だ。
そんな夏休みも終わり近づいた今、八月上旬に岳隠で行われた地獄の特訓を乗り越えた広輝と優里菜は、むせ返る暑さから逃れて東北地方にある日本海を臨む銀羽支部に来ていた。というのも、お盆前に鳴上支部の天守を通して銀羽支部の天守から連絡があり、任務助勢という名目の招待状が届いたからだ。
銀羽支部の天守ーー即ち白鷺家当主である。
天守の執務室で、広輝たちは白鷺拓真の腹違いの兄、白鷺向洋と対面していた。
向洋は強く出た頬骨と高い鼻が特徴的で、そのがっしりとした体格もあり拓真と雰囲気も似ても似つかず、なんなら櫻守一樹の方が似ているくらいだが、きりっとした目元だけは拓真よく似ていた。
「助勢の依頼、引き受けてくれて感謝する。それと、愚弟が迷惑をかけた。申し訳ない」
「……僕もちゃんと止めれられず、すみませんでした」
「絆から現場の様子と拓真の最期も聞いている。君が気にする必要はない」
向洋の側に控えている絆が悲しそうに眉尻を下げた。
「あいつもあそこまでの事をしでかしてしまった。それに、そういう任務が紅に下っていたようだからな」
向洋は絆の隣にいる翠に何か言いたげに目を向けるが、翠は全く気にせずに広輝を励ます。
「そうだぜ広輝。お前に気にされてちゃ、拓真さんに結構前に会っていたあたしが気に病まなきゃならなくなる」
「少しは気にしてほしいものだ」
「後ろめたさはありますが。後悔してませんよ。今でも貴方がなりふり構わず止めに動く姿が見えるので」
「……否定はできんな」
今でこそ向洋は冷静を保っているが、事件の首謀者が拓真だと知った時には、近年誰も見たことがないほど動揺していたという。そして、どんなに急いでも刻限までに現場に間に合わないとわかると、東北地方を統括する仙葉支部の天守である竜胆家当主に穏便に済むように嘆願もしていた。日が落ち、夜に事件の顛末を聞き、後日に絆を始めとした帰ってきた者から直接話を聞くと、その日だけはひどく消沈したものだった。
「それで、今回はどのような任務なのでしょうか。翠さんがいるということは」
「いや、あたしは別の仕事があるから同行しない。あの後、忙しくてお前たちと話す時間がなかったから、この場に同席させてもらった」
広輝と優里菜は目を見合わせ、再び翠に目をやると、翠が二人の前に出て頭を下げた。
「一月にあった岳隠の件、話は聞いている。桑次郎の奴が済まなかった。これを謝りたかった」
梅川桑次郎ーー彼は、陰陽師の葦北常道と共謀し、広輝への復讐を果たすよう岳隠の面々を唆していた。その中で、封印から解いたダイダラボッチに飲み込まれた影響で魔力に侵され、岳隠の天守たちの手で救出されたが一週間後に死亡している。
「あの人の関係者だったんですか」
「そうだ」
翠は頭を上げて広輝たちにその経緯を説明する。
「あたしは、まあ、その、向洋さんに拾われる前は、いわゆる暴走族だったんだ。その桑次郎がいたグループと抗争中に、あたしが覚醒した」
始めは翠のいるブループが優勢だった。しかし、天術を使う桑次郎とその兄が出て来くると、すぐに劣勢になった。翠も二人の天術によって大怪我を負った。決着が付きそうになると、何人かの仲間の女子がどこかに連れて行かれ始め、翠がその後を想像した時、湧き上がる憤怒をきっかけに力は発現した。
翠を中心に竜巻が起こり、敵味方関係なく吹き飛ばし、周辺の建物含めて廃屋を破壊。多くの人間が瓦礫の下敷きになった。
「あいつは相手グループでリーダーやってた男の弟で、敵味方含めてあたし以外の唯一の生き残りなんだ」
広輝は、能力の暴走で慧輔たちを殺したと嘘をついたが、翠は本当に力の暴走で多くの人を殺めていた。
病院で目が覚めた翠は、その顛末を知ると、病院を抜け出し、全ての繋がりを捨てて、宛もなく放浪を続けた。持ち金が底をつき、空腹で思考がぼやけ始めたある日、防波堤で海を眺めているところを向洋に声をかけられ、天会に所属することになった。
桑次郎も翠と同じ病院で目が覚めたが、既に翠が失踪した後だった。桑次郎は兄と仲間を殺し、なおかつ彼女自身の仲間をも皆殺しにした翠に対して憎悪と侮蔑を向ける。その後、訓練所で出会った[仲間殺しの堕天子]の広輝を仲間を蔑ろにした点で翠と重ね、消えた翠の代わりに広輝を標的にして岳隠で報復を画策したのだった。
「桑次郎の奴が岳隠にいなければ、そこまでややこしくならなかっただろう?」
翠が珍しく面目なさそうな表情を浮かべているが、広輝は翠の見当違いを割とあっさり指摘した。
「いや、翠さん。それ気にしてくださるくらいなら拓真さんの件を気にしてください」
「え」
「あの人がいてもいなくても、事態は既にややこしくなっていて、遅かれ早かれいずれ爆発していました。岳隠の件は、完全に僕のせいです。だから、どうかお気になさらないでください」
桑次郎は確かに事態を助長させてはいた。しかし、復讐に賛同しない者を巻き込んだり、事情を詳しく知らない小学生以下の児童に堕天子を吹聴したり、協力するように唆したりすることはなかった。
翠は優里菜にも目を向けると、優里菜は瞼を閉じて軽く頷き、広輝との同意を示す。
「ーーそうか。ありがとう」
翠は今度はお礼の意味を込めて頭を下げた。
翠の話が一段落したところで、優里菜がここに招待された理由を向洋に改めて尋ねる。
「えっと、向洋様」
「様はいらないよ。月永優里菜」
「あ、はい。ありがとうございます。今回はどんな任務なのでしょうか」
「うん。見てもらったほうが早い。一緒に来てくれ」
優里菜たちは翠と別れ、向洋の車に乗り込んだ。
***
向洋が運転する深青色の高級ワンボックスカーに揺られること一時間超。
その途中で広輝と優里菜は拓真があのような事件を起こすきっかけとなった白鷺家の騒動を向洋と絆の口から聞いた。この話は優里菜にとって、鳴上で起こった櫻守正樹の姉と陽本勝弘の弟の悲恋についても既に聞いていたこともあり、決して他人事ではなかった。人を想う気持ちが強ければ強いほどに、想いよりも先に決められていた約束事が、多くのしがらみよって発生した二人の繋がりを別つ決め事が、彼らを思い悩ませて今までの全てを投げ捨てさせる選択肢を選ばせる。その決死の決断を絶対に許さじと、彼らを蝕む異常が異状を作っていた。
その異常は、どれも人間の一面だった。白鷺は嫉妬と支配欲、櫻守は凝り固まった慣習。その二つとも、原因の二人ともが、それができる立場にあり、止めることができる人間が一人もいなかった。加えて彼らを後押しするかのように、環境とタイミングが醸成されてしまっていた。
向洋の車が森の中に入り、車で行ける限界まで辿り着いた山奥に停めると、向洋は三人を引き連れて三十分ほど獣道を進んだ。少し話が逸れるが、この時点で優里菜が別の意味で必死になっていることは想像に難くない。
そして深い森の中、向洋が指し示した先に、その存在はあった。
「あれが今回の討滅対象だ。お前たちどう見る?」
広輝と優里菜は目を瞠った。
遠目でも十分に理解できる。その神々しさは妖魔などではない。
「えっと、向洋さん。本当に命令が下ってるんですか」
「見せた指令書の通りだ」
彼の存在の見た目は、大きな鹿だ。野生の牡鹿よりも二回り以上も大きい。しかしそれだけではない。
木漏れ日差す深緑の中で、その身体から黄緑色の光が溢れるように淡く輝き、天を衝くように花開く大きな角は蒼碧に煌めいている。そして彼の存在の周りは、活力を与えられたかのように生命の息吹に満ち満ちていた。
緑豊かなこの森に、この山に彼が居るのではなく、彼がこの山林を抱いている。彼が在るから、この一帯の生命が活き活きと息づいている。
そんな印象が優里菜と広輝に刻まれていた。
「……土地神様、だよね?」
「[神堕とし]、ですか」
「そうだ」
「このメンツで?」
「そうだ」
優里菜の確認で広輝も確信し、向洋は高難度任務である[神堕とし]であることを肯定した。
広輝は優里菜と顔を見合わせ、もう一度彼の存在を視直す。広輝は一度、[神堕とし]を経験しており、その時の事を可能な限り思い出して、あの時の神と眼に映る神を比較する。あの時は、肥大化した妖魔の浄化ではなく、害を振り撒くようになってしまった神の討滅だった。元々持っていた神としての気高さやあらゆる生命を平等に視る思考をそのままに、怨念や寂しさ、嫉妬や悲しみを吸収してその御力を暴力に使うようになってしまった、光闇を併せ持った神。
あの時の闇い力を眼に映る神には認められない。討つ理由が見当たらなかった。
「降ります。もう一度査定してもらってください」
「ならない。これは三度目の査定結果だ」
「どう視たって、健全な土地神様です。今だってこの山をお守りくださっている。攻撃すれば荒御魂に変容されてしまうかもしれません」
「今だけだ。すでに人間に害を与えている。被害が出ているのだ。もう看過できる状況にない」
「ならそれは警告です。これ以上、山を、森を犯すな、というお告げです。きっと破り続ければ、今の被害以上に回り回って大勢の人間が死んでしまう」
今だけを視た広輝と今までの経緯を知る向洋によるお互いに一歩も引かない問答の応酬。
広輝は向洋が折れないと判断すると、その場で片膝を付き、頭を下げた。
「銀羽支部天守、白鷺向洋殿。大変申し訳ありませんが、僕はこの任務から辞退致します」
「私も同じ意見です」
優里菜も広輝に続いて片膝を地面についた。
「和御霊の神様も、荒御魂の神様もどちらも拝見したことはありませんが、人に害を為す存在がどんなものかは理解しているつもりです。どうかご再考を」
優里菜が岳隠で相見え、戦い、解放したダイダラボッチ。あれこそ人に害を為す存在だった。それを思えば、遠くに見える優しい光を纏う大鹿は森と共に在る。可能不可能を置いておいて、神堕としに対して優里菜の直感は強い拒絶を示していた。
二人の若い天子が頭を下げて、命令を拝受するのではなく、天守に意向を撤回するように上申している。中々見ない光景だった。
傍らで事の成り行きを見ていた絆が、向洋が黙ったまま二人の意見を受け入れないのに耐えられなくなり、種を明かす。
「向洋さん、もう良いのではないでしょうか」
向洋が絆に目を向けた瞬間、誰のものでもない声が四人の脳に響いた。
『そうだぞ、向洋。若人をあまりいじめるものではない』
広輝と優里菜が顔を上げて、向洋と絆の視線を追うように振り向くと、そこには光を纏う大鹿が直ぐ側にあった。
「……え!?」
「!」
大鹿は広輝と優里菜が驚いて動けないでいるのを構わずに二人をじっと見つめる。それは二人の奥底を見つめるような、全てを見通すような視線であり、この表現は真実だった。
大鹿はーー神は、二人の魂の在処を識ると、感心したように確認する。
『二人とも精霊の系譜だな。特にお主は曾孫……いや玄孫くらいになるのか?』
近しい者以外には隠していたことをあっさりと明かされ、なんとも言えない複雑な気持ちになるが、広輝も神相手に無礼を働くなど出来ない。加えて、間違いのまま話を進めることも躊躇われ、広輝は渋々、境遇を明かす。この発言で広輝が精霊の血筋というだけで驚いていた向洋と絆の表情が、間抜けに見えてしまうほどに豹変してしまう。
「一応息子です」
『なんと。ならば最近来た風精の子供か。力をあまり受け継がなかったのだな』
"最近"というワードに広輝はドキリとしたが、神の時間基準が人間のものとは違うと常道に教わっていたので、父の生前だと悟る。
『よく笑う奴だった。奴と奴の獣魔は息災か?』
「父は事故で亡くなりました。獣魔は……見た記憶がありません」
『む? ……そうか。また話し相手が一人いなくなってしまった』
神が少し気落ちし、会話が途切れた隙きに優里菜が事の説明を天守に求めた。
「それで、向洋さん?」
優里菜は目をひん剥いて驚いている向洋(と絆)に吹き出しそうになって、とっさに口を手で塞ぐ。広輝も再び向洋たちの方を向くと、腹から出てきてしまいそうなものを堪え、目だけを細めることに成功した。
それでようやく自身の表情に気づいた向洋が恥ずかしそうに咳払いし、一つ深呼吸を置いて、二人に説明という名の釈明をし始めた。
「[堕天子]の評判と絆から聞いた久下広輝の人柄の乖離。[堕天子の真実]が本当なのかどうか、君の人となりから確かめたかったーーのだが、これをどこからか仕入れたこの神様が一枚噛ませろと言ってきたんだ」
横目に絆を見ると、絆がさっと目を逸らした。
『以前、水精が人と混じったと言っていたのを思い出して、興味が湧いたのだ』
「ではあの指令書は……」
「一応本物だ。今まで何度も出ているから、依頼主を説得させる為の形式的なものだ」
「何度も出ている?」
「田舎にしては立地条件が良いから、所有者が変わる度に、な」
「「??」」
広輝も優里菜も要領を得ず、二人が揃って首を傾げると、向洋が慣れたように一連の流れを順番に説明していった。
「この辺の土地を開発しようと買ったは良いが、この神様が止めろと警告するだろ? すると天会に調査を依頼が来て、結果から開発が駄目だと報告すると、泣く泣く彼らは撤退していく。その後再び売り出されたこの土地は、天会のことは一般人には他言無用だから土地神様の情報が公開されない→何故か売地に出ている良さげな土地→最初に戻る、だ」
「えっと、じゃあ土地を買う所有者って」
「数年で結果を出し続けたベンチャー企業が多いな」
広輝は無駄金をはたいてしまった彼らに同情しつつ、得心がいった。少なくとも半世紀以上続く企業ならば、取締役クラスが神霊・妖魔の存在が眉唾物ではないことを聞いたことくらいはあるはずで、戦前から続くような大企業であれば間違いなくその存在を知っているばかりか天子協会とのパイプがある。岳隠の天守も、天々館や子どもたちの為に地元との繋がりを大事しており、地元行事にも積極的に関与し、節目節目には挨拶回りを必ずしていた。天守に訪問される方からすれば、本来ならば出向かなければならないところを、逆に足労されて恐縮しっぱなしの人らもるらしいが。
そんな理由もあり、ある種の暗黙の了解を知る者は手を出さないが、天会に繋がりが無く歴史が浅い企業は買えるから買ってしまうのだった。
しかしそんなことが続くのであれば、こちらで買ってしまえば良い。そんな至極当然の発想を優里菜はするのだが、すぐに広輝に肩を掴まれる。
「国か天会で買えないんですか?」
「優里菜」
「え、なに?」
「オレも話にしか聞かないけど、山の管理って大変らしいぞ」
「……な、なるほど? ごめんなさい」
優里菜も話にしか聞いたことが無かったが、きっと想像以上の大変さがあるのだと無理やり納得するのだった。
広輝は優里菜から手を放し、向洋に向き直る。試されたのだから、結果を聞いておく必要がある。
「自分から聞くのもどうかと思うのですが、お眼鏡には適いましたか?」
「ああ、十分だ」
向洋は満足そうに頷くと、広輝に近づき、称賛という名の賛辞を贈る。
「よくぞ耐え抜き、やり遂げた。その貫徹した意志と、一人の男として君に敬意を」
それは向洋の心からの言葉だった。
今年の二月あたりから流れ始めた[堕天子の真実]。堕天子に都合の良すぎる説明をすぐに信じる者は皆無であり、向洋もその一人だ。ただ向洋が他の者と違ったのは、その境遇に自身を投影し、同じ光景を見ようとしたことだった。親愛する師を、大事な仲間を、操られたその手で殺めた。そのショックで心を閉ざした自分の妹分で大切な人の忘れ形見。自分が負った心の傷、彼女をどうにかしようと思う心、向洋は心を穿たれるようだった。
向洋は子供を褒める父のように優しい表情で広輝の頭に手を置いてクシャクシャに撫でた。
「よく頑張った。偉いぞ」
「え、あ、ありが……いえ、そんな褒められるような事ではありません」
広輝は向洋の手を撥ね退けないが、視線を落として向洋の称賛も受け取らない。
事実、広輝は自分の行いを間違いだったと認識している。もっと他の方法があったはずだと後悔している。
『未だに人間の機微は解らぬが、それは褒めて良い行いなのか』
神の指摘はもっともに思えた。優里菜も絆も広輝に同情しているが、広輝が取ってしまった選択は褒められることではないと思っている。
向洋は広輝の頭から手を下ろし、そこではないと広輝に言う。
「その選択は間違いで、歩んできた道は茨の道だっただろう。常に罪悪感に苛まれ、心を痛め続ける歩む必要のなかった道だ。そこから広輝は逃げ出すこともできた。決断した選択の責任を投げ出すこともできた。だけど、こいつは……お前はやり遂げた。逃げず、投げ出さず、自分で蒔いた種をちゃんと受け止めた。その責任を全うしたことに、俺は賛辞を贈る」
責任を果たす。それは当たり前にも思えるが、言うが易し行うが難しである。増して広輝のは、誰かに与えられた命令でも義務でもなく、自分で自分に課した贖罪である。いつでも泣いて投げ出せた。秘密を共有する岳隠の天守や円が広輝の肩を持ち、広輝だけが矢面に立つようなことにはしなかっただろう。しかし広輝はそれをせず、最後まで矢面に立ち続け、自分の選択を貫き通した。向洋は、それを『よくやった』と言っていた。
「大人でも自分で自分のケツを拭けぬ輩もいる中で、お前は自分で拭いたんだ。そこは胸を張っていい」
「……」
それでもやはり広輝には、向洋の言葉を飲み込むことはできない。広輝自身には、責任とかやり遂げたとか、そんな高尚な思いは一切無かったから。逃げ出さなかったのは、彼らを殺めてしまった強烈な罪悪感を、遺された彼らの復讐の対象になることで、和らげていられたからだ。
向洋は眉尻を下げて悲しそうな目をしてまぶたを閉じると、気持ちを切り替えるようにぱっとまぶたを開けた。
「さて、帰るぞ」
『もうか? 日は長いのだ。もう少し語らおうぞ』
「忙しいんだ」
『そう言うなて、向洋。せっかくツキエの子孫とスグルの子供がおるのだ。絆とともに語らせよ』
向洋も神のお願いを無下にはできず、諦めたようにため息をつく。仕方なくと言った雰囲気を醸し出しているが、レジャーシートや大容量の水筒、軽食が荷物から出てくるあたり、予想はしていたようだった。
お読み頂きありがとうございました。
昇格試験から始まった今章も次のエピローグで閉じます。
来週中には投稿する予定ですので、
もう一話、お付き合い頂けたら嬉しいです。




