第二十話 特務隊の義務
登場人物一名の名前を変更しています。
洋館の北側、一帯の木々は焼滅し、何度もうねり返されては炎に焼かれ続けた大地。至る所から湯気か煙か分からない灰黒い蒸気が上がっている。
そんな生命が死滅した大地に鞭打つような戦闘が繰り広げられていた。
勝炎が輝赤と漆黒が入り交じる炎を思うがままに放ち続ける。その一つ一つが家一つを軽く燃やし尽くす威力。火炎瓶の手軽さで焼夷弾を投げ続けているようだ。
それを麻美子が量だけはあまり余る黒い土砂を使って防ぐ。合流した光と大樹を守りながら。
「おららららああ!! 雑魚が増えて大変そうだな、副長殿よお!!」
「存外、そうでもないわよ。光くん!」
光の足元が一気に盛り上がり、炎から守る為の大きな土壁が出来上がる。壁が空に伸びる勢いを使って高く飛び、燃え上がる炎を超えて勝炎に切っ先を定める。
槍に天力を集中させ、その威力を高めた。
重力を利用して穿つ落星の槍。
「おおおおお!」
ーー宝星流槍術[降龍]ーー
「来いよ、槍小僧!」
勝炎と目が合う。楽しそうに口角を上げていた。が、すぐにその勝炎が後退する。
「ちっ」
勝炎がいた場所に、勝炎を狙った数十本の土棘が突き出ている。
光は後退した勝炎を追わず、技を出し切ってその土棘ごと雷槍を地面に突き刺す。棘は稲光を散らすように砕け散った。
次槍。
ーー宝星流槍術[鳳天衝]ーー
光は勝炎が右手で突き出してきた球炎に臆することなく、雷槍を叩き込む。
雷槍が球炎を貫通し、勝炎の掌に穂先が突き刺さる。穂先が手の甲まで貫通した。直後、貫かれた球炎は急激に膨張、炎熱が風船の膜のように広がり、火炎が起爆。光が爆発に飲まれた。
その爆発から難なく脱出した勝炎は、右手の傷を痛がるどころか喜びの声を上げる。
「やるじゃねえか! 刺し傷なんて久々だぜ」
振った掌から血が散り飛ぶ。血で真っ赤に染まるその右手を輝赤の炎で包み、血を燃料するが如く傷を燃やして癒やしていく。
暴発した僅かな間の大炎が止むと、腕で顔を覆ったままの光が現れる。逃れられないと判断して天力を防御に回していたようだ。肌が焼け焦げた腕で再び槍を構え、穂先を勝炎に向ける。
戦意を失っていない。
光が負ったダメージは決して小さくない。太い針を何本も刺されているような火傷が痛くない訳がない。しかし、心を固め、冷静な振りをして閉じた口の中で歯を食いしばって耐えていた。
その強がりに勝炎の口角が一層上がる。
「いいねいいね。もっと楽しませろよ!」
そのはしゃいだ隙き。
赤黒い蛇が四匹。勝炎を四方から囲い、渦巻き、戸愚呂を巻き、勝炎を締め付けて閉じ込めた。
「 大地の処女 」
それは鉄の処女を模した天術。中の勝炎に無数の棘が突き刺さる。術を行使した麻美子の顔は芳しくなく、その通りとなる。
土砂の戸愚呂から湯気が立ち昇った。内側から燃焼を示す赤い光が漏れ出ると周りの空気も揺らめく。土砂が真っ赤に染め上がり、光の色が赤から白へ。今にも爆発する寸前、細い黒い炎が戸愚呂の周りを雲のように揺蕩った。直後、黒い炎が地面から燃え上がり、勝炎を閉じ込める全てが一瞬で燃やし尽くされた。
「目玉潰されるかと思ったぜ」
輝赤と漆黒が入り交じる炎の中に勝炎がいる。ボディスーツには多くの穴が空き、全身の至るところに血の斑点が見え、血が流れた跡がある。それでも不敵に笑みを浮かべた。
「全力……出してもいいよな」
勝炎の炎が更に強く燃え上がり、陽炎がゆらゆらと漂う。
その強烈な炎熱は、麻美子や光の肌をチリチリと焼く。
(まずいわね)
麻美子は冷静に戦況を鑑み、覆りそうにない劣勢に立たされたことを悟った。勝炎が正樹たちの主張に思入れがあるとは到底思えず、彼の昂った闘争心を発散さえしてあげれば、後は叱って終わると思っていた。それが正樹の一言をきっかけに昂っていく一方だ。加えて勝炎の底を見誤っていたことも然ることながら、離れたところで観戦している正樹がやっかいだった。麻美子の直感では、正樹の力は天位:黒に匹敵している。仮に勝炎を凌ぎきったとしても、後が無い。
「おい、No.2。どこ見てやがる」
麻美子の意識が勝炎に戻る。
「あら、本当にババア呼ばわりはお終いかしら」
「御託はいい。本気で行くぜ」
勝炎を覆っていた炎が縮小し、代わりに両手に天力が集中する。今までよりも黒の強い炎玉が手のひらにあった。
麻美子は光を下げさせ、自分も全力を出す準備に入った。
紅と呼ばれる天子協会の特殊任務執行部隊、歩く災害とも揶揄されるその本領を発揮する為に。
二人の天力が高まり、一触即発にまで緊張が極まる。何か合図一つで始まりそうだった。
「あんた、紅なのにそんな使い方しかできないのか?」
「ああん?」
今まで戦闘に関与できず、ひたすら溜め込んだ天力を解放する機を見計らっていた大樹が割って入る。
「下がりなさい」
「大樹、よせ」
大樹は二人の制止で足は止めたが、勝炎との会話は止めない。
「陽本が実力主義だってことは知ってる。あんたが当主な理由が少しわかった」
「だからなんだ」
全力解放の寸前で止められている勝炎の機嫌は悪い。八つ当たりで炎を大樹に放ちそうだ。
殺意に似た荒々しい敵意が大樹に突き刺さる。
以前の大樹ならば、その敵意に飲まれていたところだ。でも今は、多くの疑問と覚悟を持って戦場に立っている。思わず一歩下がってしまいそうだった足で確かに地面を踏みしめて勝炎へ対峙する。
陽本と櫻守、奇しくも"火"の天子が生まれやすい血統同士であり、共に鳴上を担ってきた古き家系。地下室で義朋と頼人によって知った血統主義の表と裏。義朋の建前も分かるし、頼人たちの目指す場所も分かる。対立した二つの主張の間で、大樹にはまだ答えはない。だけど、少なくとも大樹が父から教わった力の使い方だけは、正しいと信じられる。
皆々、守る為だから。
義朋も行き過ぎてはいるが、根っこは天子の"よすが"を守る為。
頼人たちは、その"よすが"を守る為という大義による犠牲を無くそうと奮起した。
しかし大樹には、この目の前の男の、行動理念が分からない。
「何の為に俺たちと戦ってるんだ。何がしたくてその力を使ってるんだよ」
「ああ? 刄の野郎みたいなこと言いやがって」
勝炎は心底面倒くさそうな顔をして、変わらぬ答えを唾を吐くように言った。
「ーー知るかよ。その身で喰らえば分るんじゃねえか」
「わかった。受けてやる」
大樹は即答する。むしろそれを待ってましたとばかりの早さだった。
右手を胸に当て、奥底から絞り出すように握りしめる。意識するのは、力の底にあった根源。天力を空っ空に出し尽くした時に垣間見た涅色の球体。それを割り、全ての天力を解き放つイメージ。
「……ぉぉおおおおああああああ、っはああ!!」
右手を外へ振り抜き、大樹は豪炎を纏う。
天術・火炎の化身
「いいんじゃねえか? 中々。けど、足りねえな。全然足りねえ」
勝炎が下した評価は概ね正しく、勝炎と大樹の炎を比べると大樹の炎は見劣りしている。
だが、大樹もそれは承知の上。
「足りないかどうかはお前自身で確かめろ。神の息吹を撃ち抜いたこの炎でな!」
右手に天力を収束させていく。大樹の勝利のイメージは地下室に捕まる前、勝炎の炎玉を破った時の炎だ。
その様子を勝炎は退屈そうに眺める。麻美子との戦いを邪魔されないように先に潰しておこうかと考えるくらいだった。
しかし、観戦するだけだった櫻守正樹が勝炎の近くまで来たことで勝炎の楽しみが増える。
「勝炎」
「邪魔すんなよ。今力の差ってのをーー」
「本当の本気でやれ。今あいつが言ったことが本当なら、喰われるぞ」
「! へえ、あんたと同じってか」
「本当なら、な」
正樹は従甥を一瞥し、勝炎から少し離れる。大樹の炎を観察できる場所まで。
勝炎のような異材を抜きにして、正樹は神のーー神堕とし級のーーブレスを撃ち抜ける炎を一つしか知らない。
それが本物かどうか、正樹は大樹を注視した。
「いくぞ、陽本勝炎!」
「来いよ、櫻守大樹!」
大樹が紅蓮の炎を右手に宿し、勝炎が黒炎を左手に生む。
二人の視線は相対する一人のみを射抜く。利き腕を引き、逆の手で狙いを定める。
大樹が歯を食いしばり、勝炎が白い歯を見せた。
二発の銃声が響き渡る。
「ぐ……」
櫻守正樹が左腹を押さえて膝を付く。彼の前に煙を上げる小さな穴が一つ空いていた。
「そこまでだ」
現れたのは荒々しい長髪をなびかせる強面の男。耳横から顎のライン、口周りの無精髭をきれいに整えている。迷彩色のジャケットの上からでも分かる隆々とした筋肉を携え、両手には二丁の大型自動式拳銃。雷の残滓が彼の体に二筋走った。
彼は特務隊・紅が一人、松永匠。
「匠? 貴方別の任務があるんじゃ」
「その通りだぜ、おかん。おっと勝炎、お前もそこまでだ」
匠は左の銃口を正樹に向けたまま右の銃を苛立つ勝炎に向けた。
「今いいところなのわかんだろ。邪魔すーー」
匠の全身に雷が一瞬迸ると、普通の拳銃の何倍もの大きさの銃声が鳴り、弾丸が勝炎の左肩を掠めた。弾道に残った雷が一筋走って消える。
「次は当てる。ここまでだ」
「ちっ、だからてめえは嫌いなんだ」
「だから俺が派遣されたんだ」
匠の異名の一つに[異能者殺し]がある。
実弾をも燃やし尽くす勝炎だが、匠の弾丸は簡単には防げない。電磁砲を応用した銃弾の速度と弾丸に付与させた雷のせいだった。弾丸に纏った雷が防御の天術を食い破り、炎熱で燃え尽きる前に人体を突き抜ける。逆に実弾を防ぐ小細工を天術でしようものなら、付与された雷が弾丸に成り代わるおまけつき。
匠は多くの異能者にとっての天敵であり、死神だった。
「っだあああ! くそが! くそったれめ!」
大樹に放つはずだった黒炎を勝炎は地面に叩きつけると、空を覆ってしまうかのような黒き闇の炎が荒野に轟音と共に爆誕。隕石でも落ちたかのような巨大な灼熱のクレーターが彼らの直ぐ隣に一瞬で出来上がった。
勝炎はクレーターの縁で大の字になって空を仰ぐ。
「てめえが来たってことは終わったんだろ? はーやってらんねえ。せめて夜になってから来やがれ」
完全に不貞腐れた子供である。
匠は苦笑いを浮かべ、勝炎への銃口を下げた。それから勝炎の炎から味方を守りきり、戦意を削がれている大樹にも念を押す。
「お前さんもいいな?」
「え、あ、はい」
「匠?」
「もうちょい待っててくれよな、おかん」
匠は顔を覗き込んでくるおかんよりも"任務"を優先した。それが特務隊[紅]だから。
「櫻守正樹。天子協会:黒の決定を伝える」
一、天子協会は、本人の合意の無い婚姻をさせない。
二、天子協会は、いかなる犯罪行為に対しても法に則りこれを罰する。
三、天子協会は、本部直下に監察官を置き、定期的な支部の査察を実施する。
「ーー以上だ」
「……それ、だけか」
「詳細はこれから詰めるんだろうが、全部だ」
正樹の表情が痛みに耐えるから怒りに変わる。
黒の決定は正樹と拓真が求めたものから程遠い。まだ「口で言い逃れができる」部類の条項だ。これでは幹部が握り潰せてしまい、狂った因習も幹部の好き勝手も止まりはしない。悲劇が繰り返されてしまう。
この条項では、事を起こしたリスクに合わない。
「要求は撤廃だったはずだ。人質を傷つけても、勝炎が数人殺してもそれか」
「……殺してねえ」
「……何?」
「あんたらがどっかから買った人型の人形。あれを霧散しない程度に表面を焼け焦がしただけだ」
継続して不貞腐れて大の字のままの勝炎が面倒臭そうにネタを明かすと、匠の制止で止まった理由が垣間見えていく。
大人気ない大人に光から質問を投げかけられる。光たちが勝炎のいた場所に駆けつけたのは、悲鳴を聞いたからだ。
「俺たちの対戦相手は?」
「人形と一緒に外縁守ってるぜ。お前らを捜すのが面倒だったから悲鳴を上げさせた」
「じゃあ、あの異臭は」
「お前、丸焦げになった人間の臭いを嗅いだことあんのかよ」
光ははっと息を呑んだ。
光たちは、嗅いだことのない焦げ臭い異臭を人が焼けた臭いと直結させ、その時の状況にそれが正解のように後押しした。勝炎に作られた状況に。
「[氷帝]から変なもん渡されたから使ってみたが、まあ似た臭いだったぜ。ホンモンの臭っせい臭いには足りねえがな」
クククッと嗅いだ時を思い出してか、勝炎は投げやりに笑った。
その狂人ぶりには正樹も考えを改めそうになる。
「……戦力に紅を使うのは失敗だったか」
その誰に訊いたわけでもない独り言を匠が拾った。
「俺は正解だったと思うぜ。紅だからこそ極秘に動けて、この危機を演出できて、何も知らない下が焦って上を突き上げた。さっきの三項も引き出せず、人質ともども問答無用に制圧されたか、お前さんたちが闇の中で始末されていたか、どっちかだろう」
そのような結果になる可能性も十分にあった。前者は各方面から恨みと反発を買いすぎる為、おそらく後者を派遣されて秘密裏に処理されていたに違いない。
「急に物事を変えるのは難しいってな。ここ一年、隊長も根回しに東奔西走してたんだぜ」
「一年? ……漏れるのは考慮していたが、そんなに口が軽いとはな」
「伝えない訳にはいかないだろ。紅にとって命令は絶対なんだからよ」
それは匠がよくやる手だ。自分から言ってはならない事があった場合に紅の隊長である将弦の周りをうろちょろして、彼に命令させる事で報告する。今みたいに仕方がなかったという免罪符を得るのだ。その報告時には正樹と拓真の枝葉がどこに居るかわからない旨とバレた時のリスクも一緒に説明して、不自然無く隠密行動に徹してもらうように念を押して完成である。
匠は正樹に目を細めて睨まれ、銃口を向けたまま肩をすくませたようなジェスチャーをした。
「不服ならこの場から生き残って、お前さんが守ればいい。鳴上の天守から聞いたが、その為の櫻守なんだろう?」
正樹の眉がピクリと動いた。
「知った風な口を……」
正樹はゆっくりと立ち上がり、一息に踵を返した。全速力で森を目指す。
匠は躊躇なくすぐに引き金を引いた。
「ん?」
一発目が当たらなかった。続けて二発三発と鼓膜を射抜くような銃声を響かせながら撃ち続けるが、どれも当たらず、正樹は遠くの森に消えた。
匠は銃身が狂ったのかと、色んな方向から銃を見るが、その様子はない。もう一度正樹が去った方を見て、揺らいだ景色で納得した。
「ああ、熱で歪められたのか」
正樹は一種の蜃気楼を起こし、匠の標準から逃れていた。
「匠、追うわよ。人質がまだ中にいるわ」
「大丈夫大丈夫、心配ご無用」
匠は拳銃をホルスターにしまうと、ジャケット裏から無線機を取り出し、麻美子たちにも聞こえるように音量を調節した後、通信を開始した。
「あーあー、こちら松永匠。応答願う」
『……こちら江口理介。どうしました? 匠さん』
「おう、どうだ首尾は」
『人質全員地下室から脱出。現在寄宿舎に移動中です』
「お見事。引き続き頼むぜ」
『了解……っておい、待て!』
「どうした」
『一人脱走。避難させたら捜しに行きます』
「お前さんはひよっこどもを守れ。どっちに行った?」
『了解。西……いや南西か? そっち方面です』
「了解した。また連絡する」
『はい。お気をつけて』
「って訳だ。少しは安心した?」
麻美子はこめかみを押さえて、眉を潜めており、安心とは違う負の感情が見て取れる。
匠は理論武装を急いだ。
「もしかして私だけが知らないのかしら?」
おそらくこれは『紅の中で』を指している。誤魔化した時に降る雷を考えて、匠は嘘をつかずに事実を伝えた。
「いや? 翠と蓮王も知らないと思うぜ。美怜は白蓮が伝えてるかどうかだな」
「……! ーー紅の貴方の任務は?」
何か言いたげな麻美子の眉間のシワが深くなっている。光と大樹が傍に居る為少し逡巡したが、命じられた任務を紅の副長に告げた。
「櫻守正樹と白鷺拓真の味方についている紅に任務の終了を告げる事。と、黒の議決を二人を伝え、二人を殺害する事」
光と大樹が目を見開いて驚いている。"人殺し"なんて命令が天会から下されていることに。
反対に麻美子は深く潜めた眉間を緩め、眉尻を下げた。
「殺せ、も出たのね」
「事件の落とし前と反発勢力の溜飲を下げる為だろうな」
紅の二人に動揺は無い。哀愁漂う遣る瀬無さを感じながらも仕方がないと受け入れている。
人殺しに、人を殺す事に疑問を持っていなかった。
それをまだ疑問に思える二人の内、気持ちを言葉にできる光が疑義を唱える。
「殺さなければならないんですか? 誰も死んでいないのに」
「運が良かっただけだ」
匠がにべもなく即答する。一つ歯車が違えば死人が出ていた可能性は十分にあった。それが防げたのは紅隊長・将弦の尽力であり、極秘任務を遂行した紅と理介、事情を知らない麻美子たちが真面目に解決に当たったからである。
光は頭では分っているが、彼らが事件を起こした理由を十二分に聞かされた。裏側で行われた非人道的な愚行の数々。変革の必要性は痛いほど共感できてしまう。
「あの人たちは、あんなことをさせない為に」
「悲劇を繰り返させたくないだけだったのに」
大樹も光に同意する。自分の知らないところで、もし鳴上でも同じようなことが行われていて、それが正樹の理由なのだとしたら……大樹は怖さと申し訳なさを覚えた。そしてそれを知らないことを恥じていた。
そんな二人の同情を匠が一蹴する。
「おいおいおい、瀬戸と櫻守。お前たちはその結果だろ? 成果を享受している奴が言ってもなあ」
これからそのやり方で強くなっていくはずだった者が言うのなら、まだ。
「中途半端な、正統血統から外れた分家とかが言うなら響くところはあるんだけどなあ」
「匠」
「……あー、すまん。言い過ぎた」
麻美子に窘められ、匠は後頭部を掻いた。
「それとやっぱり櫻守正樹を追うわよ。さっきの通信で離れた子が鉢合わせしちゃうかも知れないわ」
「そうだな」
麻美子は、完全に不貞腐れて動く気が全く無さそうな勝炎を放置し、他三人を引き連れて森へと向かった。
松永光匠 → 松永匠 に変更しました。
理由としては、"光"の字が瀬戸光と被っているのと、"コウ"が広輝と被っている為です。
匠の二つ名を"光弾"にしようとした名残ですね。
お読みいただき、ありがとうございました。
事件も後少しで閉幕しますので、次回もよろしくお願いします。




