23. 神に選ばれし者
長くてすみません!!笑
23
一輝の病室には、大隈太一の押し殺したような嗚咽が響いていた。その苦しげな泣き声は、消毒臭い真っ白な壁に吸収され、病室の冷たさを一層、増幅させるようだった。
大隈は前かがみになって、鼻根を指でつまむように押さえ、泣き暮れている。
「長官……」
筑紫山で見たすべてを話し終えた一輝は、予想外の展開に驚いた。怒られることは想像していたものの、まさか相手が泣くとは思っていなかった。今は、困惑した表情で大隈を見ることしか出来ない。
兄の歩は、今は窓際の椅子に腰掛けて、大隈の様子を黙って伺っている。
穂花は、さすがに疲れたのか、歩に抱きかかえられたまま眠ってしまった。肩に顎を乗せて、大きく口を開けたまま深い眠りの世界に入り込んでしまったようだ。無理もない。時刻は既に十二時を回って日を越しているのだ。
負の感情をひとしきり解き放った大隈は、ゆっくりと体を起こし、ようやく口を開いて謝罪した。
「すまない……。この歳になると、どうも涙もろくていけないな」大隈は照れくさそうに鼻をすすって苦笑いした。
「あ、いえ……、そんなことはないと思います」一輝は、その後に続く言葉が見つからなかった。けれども、愛咲誠一の一件については、涙もろさの問題ではないと思ったのは確かだった。
昔から付き合いのある身近な人間が居なくなれば、きっと誰だって悲しい。
人の命が軽視される時代だとはいえ、人の死は、きっと悲しい。
僕だってきっと、みんなが死んだら、泣かずにはいられないだろう。
悲しければ、泣いたっていいんだ。
一輝は、あの日、絶命する瞬間の愛咲誠一の顔をふと思い出した。
(でも、あの人は、きっととても悲しいはずなのに、笑っていた……)
「あの……、これは僕の勘違いかもしれませんが……」一輝は、鮮明に残っている記憶の破片を掘り起こしながら口を開いた。「愛咲博士は……、亡くなる時、笑っていました」
大隈は顔を上げて、一輝を見据えた。
「こういう表現が正しいかどうかは分かりませんが、すごく穏やかな笑顔でした」
「そうか……。実に彼らしい……。光剣くん、すべてを話してくれてありがとう」大隈は、静かに微笑んだ。
「こちらこそ、こんなに重要なことを黙っていて、本当に申し訳ありませんでした」一輝はベッドに座ったまま、掛け布団の上に額を擦るように頭を下げた。
「いいんだ。君が謝ることではない。君たちは何も知らなかった。その状況で、あの事故を目の当たりにすれば、誰だって隠したくもなるだろう。それに、君の話してくれた通り、彼の……、愛咲くんの最期の微笑みは、もうやり残したことがないという自信の表れだったのかもしれない。私はそう思うよ」
「はい……」一輝は神妙な顔で頷いた。
「実はね、彼がこちらに向けて発つ前日に、少しの時間だが、電話で話をしていたんだよ」大隈は、過去を懐かしむように、部屋の窓の外に目をやり、穏やかに言った。もちろん、窓の外は暗闇で、常夜灯のオレンジに照らされた病室が微かに写り込んでいるだけだったけれども。
「その時、愛咲博士とは、どんなお話をされたんですか?」一輝は軽く身を乗り出して聞く。
「彼は、こう言っていた」大隈は、しばらくそのまま窓の外の暗闇をぼんやりと見ていたが、ゆっくりと室内に視線を戻して、一輝の目を見つめなおし、口を開いた。
「自分は近々、殺されるかもしれない……、とね」
一輝と歩は目を見開き、固唾を飲み込んだ。
「殺されるって……。まさか……」口元が微かに笑っていたかもしれない。でも、大隈の表情は到って真剣だった。
すると、しばらく黙っていた歩が、久しぶりに口を開いた。その目は真っ直ぐ大隈を見据え、大きく見開かれている。
「暗、殺……、ですか」
「そういうことになりますな」大隈は、歩を見遣って頷いた。
歩の口から飛び出た言葉は、一輝にとってはにわかに信じられない言葉だった。
「そんな……」一輝は、動揺に揺れ動いて彷徨う視線を、どこにやればいいかわからず、ただひたすら俯いた。
愛咲誠一は殺された?
事故ではない?
どういうこと……?
「もちろん、現時点で得られている少ない情報の中だけで、それを断定することは出来ない。だが、我々NARDSFやNFI、自然研究所の存在、活動を好意的に思っていない組織や集団、人物は、政府や軍の内部はもとより、国内外、あらゆる場所に存在しているはずだ。つまり、我々のやろうとしていることはそれだけ大きな危険が伴うことであり、愛咲くんがこの国に持ち込もうとしていた技術も、あちら側にとっては、事前に排除しておきたいものだったということだろう」
「ちょっと待ってください」歩が突然大きな声を上げて、大隈を軽く睨んだ。「大隈さん、すみませんが、話が全然見えてきません。この国や国防軍の中では、一体なにが起こっているんですか? 一輝が配属されるNFIという部隊は、なにを目的として設立された組織なんですか? 」
「それは、関係者以外には機密事項となっています。ここで申し上げる訳には……」
「私は彼の保護者です。私たちが飛行機の墜落現場に居合わせたことと、一輝が今日、銃で撃たれてこうなってしまったことは偶然かもしれませんし、確かに直接の関係はない。でも、ここまで関わってしまったからには、私にだって、少しくらいは知る権利がありませんか?」歩は真剣な表情で大隈に言い募った。
大隈は、しばらくの間、なにかを考える様子で沈黙していたが、やがて、覚悟を決めたように重い口を開いた。「分かりました……。お兄さんにも、私の知る限りのことをお話しましょう。ただし……」
歩は、大隈の様子に片方の眉毛を上げた。
「この話を聞いたからには、あなたのような民間の方にも、私や、彼ら隊員たち同様の危険や危機が迫る可能性もある。そのことを事前に承諾していただけるのなら、というのが条件です」
「覚悟は出来ています」歩は頷き、ベッド上の一輝に目配せをした。
兄の視線を受け止めた一輝は、大隈の方を見て力強く頷いた。
*
「少し長くなるがね……。話は、もう随分と昔、四十五年前に遡る。そう、2054年だったかな。まだ君達がこの世に生を受ける前のことだろう」
大隈は、一度咳払いをした後、静かな語り口調で話を始めた。
「私は、亡き父の意志もあって、若干二十六歳という若さで政治の世界に入った。いわゆる、世襲議員というやつだ。周囲からは結構なやっかみもあったがね……、私は、自分で言うのも躊躇われるが、この世界に足を踏み入れて以来、環境問題やエネルギィ政策、国防問題など、誰もがあまりやりたがらない様々な国内問題に真っ向から取り組んだ。ただの世襲議員という周囲からのレッテルと世間のイメージを払拭する為に、がむしゃらに走り続けた。しかし、私はある時を境に、この世界に入って程なくして、この国のおかしさに少しずつ気づくこととなった」
「おかしさ……」一輝は目を開いて呟いた。幼少の頃からずっと自分が感じていた違和感を、もしかしたら大隈も感じていたのではないか、と、胸が膨らむ思いだった。「それは……、どういうことだったんですか」
「そうだね……。一言で言えば、正しいことができない、ということだろうか」大隈は遠い目をしながらゆっくりと穏やかに答えた。
「正しいことができない……」一輝は、大隈の言葉を繰り返す。
「そう……。私が体験してきたことを例にあげればきりはないが、この国では、いや、もしかしたらどこの国もそうなのかもしれないが……、国益を真に考え、国民の為の本来の政治をやろうとする政治家ほど、目に見えない弾圧や妨害、徹底した圧力にさらされる。私は、長い政治家生命の中で、それを、嫌という程思い知らされた」
「なるほど……」大隈の話に聞き入っていた歩が、納得したように頷いた。「でも、お言葉ではありますが、本来、政治なんて、そういうものでは?」
大隈は、歩に視線を移してじっと見つめる。
「政治家である長官を目の前にして言うには大変失礼かもしれませんが、あえて言わせていただけるのならば、政治家なんてみんな、自分の利権や選挙の票のことばかり考えていて、国民の生活の事なんて二の次……。もっともらしいことばかりを言葉で述べるばかりで、実際の行動は後手後手。中には、当選した途端に手のひら返して、民意を裏切る輩だっている。多くの国民は、政治家をそういう目で見ていますよ」
大隈は、しばらく歩の目をじっと見つめていたが、力ない様子で口を開く。「……なるほど。確かにそうかもしれません。あなたのおっしゃる通りだ」
「そうでなければ、国中に、ここまでの貧困や格差は広がらなかったはずだと、私は思っています」
大隈はゆっくりと前かがみになり両手を膝の間で組む。そして、暗い床の底を見つめながら、ゆっくりと続けた。
「私は、自分がそうだというつもりはないが、中にはそうではない政治家もいるのです。少数ではあるものの、確実に」
「それは……、体感したことこそありませんが、感覚的には理解できます」歩は大隈を見つめながら小さく同意した。
「ただ、正しいことをやろうとして懸命に動く政治家は、ありもしないスキャンダルを捏造されて失脚させられることもある。過去には、明らかに不審な謎の死を遂げ、けれども自殺と処理されこの世を去った者さえいる。だから、はじめは大志をもってこの世界に入ってきた若い新人もベテランも、少しずつ、自らの失脚や命の危険に怯えるようになり、やがて、牙を抜かれたように大人しく萎縮した政治屋に成り果ててしまう。私はこれまで、そういった政治家を何人も見てきた。そして、もちろん、それは今も昔も、さして変わらない」
「それは、なんとなくですが、分かります。皆、誰でも自分が可愛い……」歩は、なるべく棘の少ない言い方を選んで口にした。
一輝は、黙って、息を呑むように大隈の話に聞き入っている。
深夜の病室は静かだった。三人の吐息以外に聞こえる音といえば、穂花の平和な寝息くらいだろう。相変わらず、消毒くさい空気は鼻につく。
大隈は続ける。
「この国では、長い間、悪政がはびこっている。国益を削ぎ、国民を苦しめる政策ばかりがまかり通り、それらを押し進める、面の皮の厚い政治屋たちが、肩で風を切って議事堂を歩く。そして、それは、今もまったく変わっていない。私が政治家になってから今日まで、この国では、なにか特別な意図を持った外部の者や、企業と癒着し利権に擦り寄る者、極少数の特権階級の人間たちの利益の為に動く者たちが、多く政治家として登用され、彼らばかりが政権を握る。我が国の政界は、そういった魑魅魍魎が跳梁跋扈する弱肉強食の世界だ……。私はある時から、そう思うようになったよ」
大隈は一呼吸置いて、一輝を一瞥すると、しばらく沈黙した。歩の用意した紙コップのお茶を一口飲んでから、続ける。
「若い頃の私は、それが不思議で仕方なかった。本来であれば国民のため身を削って働くべき公僕が、真の国益のために動こうとすると、必ず邪魔が入る。逆に、国益を削ぐ政策や法案ばかりが容認され、メディアや世論からはなぜか不思議と賞賛される。私は、その構造の謎を解明したいと思った」大隈は少しずつ上気しているようで、声が大きくなっていた。「私は徹底して調べた。だが、詳しい事は未だに分からない。何かを知っているであろう者は、恐怖に怯え口を閉ざし、事実を知ろうと深入りした者は、命を落としてこの世を去った。さすがの私も、ある一定の所までは調べがついたものの、危険を感じることもあった。周囲の反対もあり、残念ながら身を引かざるを得なかった……」
一輝は、これまで政治に興味を持ったことがなかったせいもあって、正直、大隈の話だけでは、あまり具体的なイメージが湧かなかった。大隈が何を言おうとしているのかも、ほとんどよくはからない。けれども、この話の中に、自分がこれからNFIのメンバとして戦っていくことの、なにか大きなヒントがある。この人はきっと何かを知っている。そんな予感めいたものだけは感じていた。
ふと横目で兄を見ると、これまでに見たことがないほど真剣な面持ちで大隈の話を聞いている。
「だが、ひとつだけはっきりとしたことがある。それは、この国に、我々には計り知ることの出来ないなんらかの大きな力が働いていることだ。そして、その力の及ぼす影響は、政治だけではない。経済、エネルギィ、テクノロジィ、農業、食料生産、金融、科学、宗教、教育、医療、法廷、警察、マスコミ。そして、軍事……。この国のあらゆるところに、目には見えない大きな力が働いている。確証をすぐに提示することはできないが、私はそれが事実だと、直感的には確信している」
一輝は、やはり大隈の言わんとしていることが、俄かには信じられなかった。それと同時に、筑紫山の飛行機墜落事故について、すべてのマスコミが沈黙していることを思い出す。
あれだけの大事故を、どこも報道しないなんて……。
そういえば、あの時、食堂にみんなで集まった時、達也が言ってた。
『政府や軍の指示で、特定の事件や事故の情報が報道されなくなるっていうのは、なにも特別なことじゃないと思うよ』
もしかして……。
まさか、そんなこと……。
一輝は息を飲んだ。
大隈は続けた。
「私は、長い政治家生命の中で、それらの現実を数多く垣間見てきた。しかし私は、真剣に国を思うひとりの人間として、いつしか、この国の病理、病魔、目に見えない力と戦うという決意を固く心に決めていた。この自然豊かな美しい国が、真の独立国家として、健全で正常な国家に生まれ変わる為に、命を捧げようと……」
大隈はそう言うと、再び紙コップを傾け、お茶を一口飲み込んだ。
深い皺が多く刻まれた、けれどもがっしりと太い、たくましい喉元が露わになる。
しばらくの沈黙。
すると、歩が沈黙を破って口を開いた。
「大隈さん、私は、なんとなくわかってきました。あなたが先ほど言おうとしていた、NFIの任務には大きな危険が伴うという意味が……」
大隈は意表を突かれたというように目を丸くして、大きく息を吸った。その息を、鼻から勢い良く吐き出し、口を開く大隈。
「今、私がお話したように、国防軍でさえも、名前は国防とありながら、実態は、海外奉仕を目的に作られた戦闘集団です。我々政府や国民の与り知らぬ力に操られているに過ぎない側面が多分に含まれています」
「なるほど……。だからあなたは、国防省直轄の国防軍とは別に、自分の意思で動かせる部隊、つまり、NARDSFとNFIを、環境エネルギィ省の直下に設立した……」
「察しが早いですね。そういうことです……」
「ということは、一輝は、あなたの私設部隊の隊員ということですか? そして、その部隊の任務は、大物政治家のあなたでさえも身の危険を感じるほどの謎の解明……」
歩は、早口で攻め立てるような口調になっていた。
「兄さん……」一輝は小声で言い、兄の顔を見た。
理由は分からないが、一輝は、義理の兄が、自分を庇っている。弟がなにかの意図に翻弄され、騙し取られることを警戒しているのではないかと感じた。厳しい口調と表情は、目の前の大隈を疑っているようにも思える。
でも、それは兄さんの勘違いだ……。
そう言おうとした時、大隈が口を開いた。
「……否定はできませんな」大隈は、迷うことなく返答した。「ただ、勘違いしないで頂きたいことがあります」
そう言われた歩は、少しばかり高まっていた心を落ち着かせ、相手の言葉に耳を傾けるよう、居住まいを正した。
「私個人は、我が国が、現在の高域核戦争、聖戦に片足を踏み入れていることはもとより、軍や兵器の拡充にも反対の立場です。それは、今も昔も変わりません。しかし、戦火は、わずか数年の間に世界中に飛び火した。今でこそ、事態はこう着状態であるものの、戦地では大量の核兵器が広範囲に使用されるまでの大きな戦争になってしまった……」
そこまで言うと、大隈は胸ポケットからハンカチを出して、額にうっすらと浮かんでいた脂汗を拭いとった。
大隈は、「失礼」と一言告げ、再び続ける。
「戦争がここまで大規模になっていった経緯や原因に関する理由は諸説あります。私もまだ、正確なところは把握していません。しかし、このような状況下で一つだけ言えることがあります。それは、このままでは我が国も、ただでは済まされないということです」
「それは……、確かに」歩は頷いた。
「今お話したように、我が国の内部事情は、長い間、国民や国益にとって、非常に思わしくない状況が続いています。その状況の中で、国防軍は、我が国民の負託に応えるだけの意志と実力を備えた組織なのだろうか……。私は自分に問いました。でも、答えはノーでした。そこで私は、今から十七年前の2082年。国防軍の下部組織、世界に冠たる防衛組織の編成という名目でNARDSFを設立しました」
大隈は、手元の紙コップに目を落とした。中身が空になっているのだろう。喜多川歩はそれに気づき、すぐにペットボトルのお茶を継ぎ足した。
「ありがとうございます」頭をさげる大隈。
「いえ」と言い、話の続きを促す歩。
大隈は軽く頷き、話を再開する。
「……もちろん、これまで国内において、大きなテロや騒乱が起こることはありませんでした。国防軍が海外派兵されることはあっても、我が国が国外から攻撃を受けるということは、幸いにしてありませんでした。しかし、当時の私は、今後戦火が広がった場合、我が国も、いつか必ず、なんらかの形で危険に晒される。それから逃れることは恐らくできない……。そう考えていたのです。そしてとうとう、私が長年危惧していた事態が起こってしまった。それが、今日です……」
そう言った大隈は、横目で一輝を見やってから、再び歩に視線を戻した。
「私はこういった不測の事態に即時対応できるように、微力ながらNARDSFを設立しました。そして、その選択は功を奏したと感じています。現に、国内がここまで大規模なテロ行為に晒されているというのにも関わらず、国防軍の大半の主力部隊は、現在でも海外に駐留しており、まったくと言ってほど国内に帰還する様子がない。国内に残された少数の国防軍の各部隊は手薄になり、各地での対応が後手に回っているという報告も既に上がっています。そこを、完全ではありませんが、私たちNARDSFがカバーし、現在、各地で救出任務にあたっています」
「なるほど……、そういうことでしたか」歩は大きく深呼吸して息を吐きながら呟いた。「大体のお話は分かりました。私は、なにか誤解していたかもしれません。私は一輝以外のNFIメンバ、つまり、一輝の同級生たちとも昔からの顔見知りです。だから、彼らがなにか政治的な意図に巻き込まれることがないのかと心配になっただけなんです。でも、私の発想は逆でした。まさか国防軍こそがそういう力の元に動かされているとは……」
「残念ながら、それがこの国の実情、実態です。ですが、私の説明不足で、いらぬ誤解を招いてしまった。申し訳ない」大隈は深々と頭を下げた。
「いえいえ、そんな、大臣ともあろう方が、よしてください」歩は、慇懃な様子の大隈に困惑し、片手を上げて制止する。
大隈は頭を上げて続けた。「NARDSFも、光剣くんが配属されるNFIも、決して私の個人的な意思のための組織や部隊ではないことをお約束致します」
「そういうことでしたら安心です」歩は一輝を一瞥して続ける。「私も、彼も……、当たり前ですが、戦争なんて嫌いです。一日でも早く、この戦争が終わればいいと本気で思っている。それは、他のメンバたちも皆同じ気持ちだと思います」
「存じております」大隈は深みのある声で頷く。
「もちろん、戦争が好きな庶民なんているわけがないんでしょうけど……」歩は少し笑いながら続ける。「でも、きっと、戦争や争いを望ましく思っている人たちも、この世の中には多数いるんでしょうね」
「残念ながら……」大隈は少しだけ視線を落として言う。
「しかし、そのNFIの初任務が、官邸占拠テロの解放というのが……。皮肉なものですね」歩は口を斜めにして苦笑する。
「同感です」大隈も口元を緩めた。「しかし、人質の中には、多数の民間人がいます。これは総じて我々にとっても、国にとっても必要な任務であり、私たちに与えられた最初の試練かもしれません。でも、彼らなら、きっとやってくれる……。私はそう信じています」
「そうですね」歩は笑顔で答えた。「橘さんがいれば、問題ないでしょう」
一輝は、二人の表情を交互に見比べ、打ち解けた様子に安堵した。そして、たった今、大隈から聞いた話を頭の中で振り返りながら、改めて口を開いた。
「それにしても、今のお話を聞くと、愛咲博士の暗殺ということも頷けますね……」
大隈は一輝に向き直り、「そうだな」と頷いた。
「実はね、私も過去、いつか自分は殺されるかもしれない……。そう思って、恐怖に震え、眠れない日々もあったよ。まあ、それは今も大して変わらないかもしれないがね……」大隈は、疲れ切ってクマがちな顔を顰めて微笑した。
一輝は、無言で首を縦に振りながら、大隈のぎこちない笑顔をしっかりと見据えた。
殺されるかもしれない恐怖と戦いながら、何十年も政治家としてやってきた男の顔。その顔に深く刻まれた皺には、辿ってきた道のりの激しさや、それらを乗り越え続けた苦労や想いの数々が、無数に入れ込まれているような気がした。
自分だったら、どうだろう。
死ぬかもしれないとわかっていて、果たして本気で戦えるだろうか……。
そこまでして、自分は、誰か他人のために生きることができるだろうか……。
「それにしても……」歩が感心した様子で話し出した。「大隈長官は、よくここまでご無事で……。ここまで来られるのに、相当な思いをされているのではありませんか」
聞かれた大隈は、ゆっくりと歩に視線を送り、目を細めながら言う。
「ありましたね……。特定の組織を利用した暴力、脅迫、メディアの誹謗中傷、銀行からの資金凍結……。実に様々な妨害を受けてきましたよ。時には命を落としかけたこともありました」
「そんな……」一輝は驚きに口を開いた。
「本当だよ」大隈は穏やかに頷いた。
「それでも、どうしてここまで……?」歩が言う。
「幸いにも、私には、曽祖父よりも前の代から、代々受け継いできた大きな経済的な政治的支持基盤がありました。人脈にも資金にも恵まれ、そのお陰で、かろうじて、政治家としての立場と生命を奪われることなく今日まで来れたのかもしれません。全て、周囲の協力のお陰です」
「大隈財団ですよね」歩がはっきりとした口調で言う。
大隈は驚いた様子で目を丸くした。「……ご存知でしたか」
「ええ、もちろんです。まあ、こう見えても少しは勉強しましたから……」歩は後頭部を撫でながら照れ笑いを浮かべた。「でも、いくら資金が潤沢にあったとしても、それだけではここまで大きなことは成し遂げられなかったのではありませんか?」
「大きなことだなんて……、私はまだなにも成し遂げてはいませんよ。終わりはないかもしれない」大隈は口を緩める。
「それは、そうですね……」
「でも、強いて言うのなら……、なんでしょうか……。自分でもよくは分かりませんが、これが、信念というものなのでしょうか」大隈は、遠くを見つめるような表情で続ける。「世界中が貧困や飢餓に喘いでいるのを……。多くの罪なき人が、戦争に巻き込まれて死んでいく姿を……。私はただ黙って見ていることは出来なかった……。世界の実情を知れば知るほど、当時の私の気持ちは高まっていきました。もしかしたら、私は、ただのお人好しなのかもしれません……」
「いえ、決してそんなことは……ないと思います」歩は控えめに口を挟む。
「でも、周りの政治家たちは、私のことをよくそう言いましたよ……。お前はお人好しだ、政治家には向いていない、もっと冷酷になれ……、とね」大隈は軽く俯き、力なく笑った。「でも、そんな人間に、私はどうしてもなれなかった。だからこそ、作ったのです。政治的なしがらみや、カネ、権威や権力に左右されることのない、真の国防部隊を。そして、そんな私の理想と空想を、微塵も笑い飛ばすことなく賛同してくれたのが、愛咲誠一くんだったんですよ」
大隈はそう言うと、視線を少しだけ落として、歩の腕の中で、天使のような寝顔のままぐっすりと眠る穂花の姿を見つめた。
大隈は、穂花の姿に、愛咲誠一博士の姿を投影しているのだろう。眠る幼子の顔を見て、微かに口元を緩めた後、口を開いた。
「愛咲くんと出会ったのは、確か、NARDSFを立ち上げてすぐの頃。この基地の中央棟、応接室で長い時間、話をしました」大隈は、遠い過去に想いを馳せるように、目を細めた。「実は、彼は、私の妻の遠い親戚でねえ。妻から紹介された当時から、とにかく真面目で優秀な研究者でした。ちょっと真面目すぎる堅物なところが玉に瑕ではあったのですが、そんな彼は私と出会った時、開口一番こう言ったんです。
『政治的なしがらみや利権、権威や権力に振り回されることなく、真に平和利用できるクリーン且つニュートラルな技術研究を自由に研究できる組織を作りたい』
……とね」
大隈は、大きな白い前歯を見せてにっこりと笑顔を見せた。
「いやあ、あの時は嬉しかったな……。そして、おかしかった。なにせ、私たちは、お互いが、それぞれの業界で常に異端扱いされていた者同士。そんな二人が、同じ時期の、ほぼ同じようなことを考えていたのです。だからこそ、私にとって愛咲くんとの出会いは奇跡でもあり、実に喜ばしいことでした。私たちは、政治家と研究者という違いはあったが、目指すところは同じ。すぐに打ち解けることが出来た。彼の提案は、NARDSFを立ち上げた直後の私にとっても、願ってもないことだった。何しろ、当時でさえ、我々人類の作り上げた技術は、長い歴史の中で行き過ぎ、行き詰まっていた。自然を奪い、壊し、汚染することでしか成長することのできない資本主義という経済システムは、とうに限界を迎えていた。だからこそ彼は、それとは逆の、自然を愛し、尊重し、自然と共存共栄する為の道を真剣に模索していた。私は、彼の提案を一つの契機として受け入れ、二○八八年四月一日、国立自然能力開発研究所を立ち上げたのです。今から丁度十一年前、NARDSFを創立してから五年後のことです」
「なるほど……」歩は大きく頷いた。
一輝も、大隈の話を聞いているうちに、士官学校時代から気になっていたNARDSFの存在や自然研究所の目的が少しずつだが、理解できるようになってきた。
「自然研究所が設立されてからの愛咲くんは、人間離れしたスピードで、実に精力的に研究開発を進め、わずか数年で、数多くの成果を上げてくれました」大隈は嬉々として続ける。「食料生産技術、水質浄化技術、大気を汚さず、資源もほとんど消費しないクリーンエネルギィ。全て、当時の彼が研究し、開発し、残した、今でも世界をリィドする最先端技術です。そしてそれらは、愛咲くんの意志も含め、現今の自然研究所の職員たちが受け継いでいます」
そこまで聞き終えた一輝は、素朴な疑問を感じ、口を開いた。
「ちょっと待ってください。そもそも愛咲博士は、長年、海外で研究を続けられていた方だと聞いています。ということは、愛咲博士は、ご自身で開設に関わった研究所をわざわざ離れてまで、海外に渡った……と思っていいのでしょうか?」
「その通りだ」
「でも……、ご自身の目標であったはずの研究所がせっかく出来たのに、どうして、そこを離れてしまったのですか?」
「理由は二つある」大隈は、俯き加減のまま、目玉だけを上に上げて一輝を見た。「一つ目の理由は、彼にとっての、研究の限界」
「限界……、ですか」一輝は確かめるように言う。
「そうだ」大隈は深く頷く。「愛咲くんの研究分野は実に広かったが、中でも、彼の、植物研究にかける情熱はとてつもないものだった。時には、私と意見が食い違って、感情的にぶつかりあったことさえあるよ。あれは、情熱を超えて、過剰な執着だと感じたこともある。それくらい、彼の物事に対する集中力はずば抜けていた」
一輝は、ふと、自分たちがあの日、むやみに口にしてしまった、光る植物の種を思い出した。今でも、あの淡い光は脳裏に焼き付いている。
そういえば、あの光る種の残りは、どこにしまっただろうか……。
「だが、国内での植物研究には限界があった。なにしろ、植物と一口に言っても、その分野は多岐に渡る。農作物、花に加え、それらを栽培するための技術、肥料、農薬、土壌、遺伝子工学など、それらすべてを網羅した研究をするためには、やはり、資金面や設備面で、私たちの設立した自然研究所だけでは限界があったと、後の彼は言っていた」
「なるほど」一輝は頷いた。
「二つ目の理由は……」
大隈はそこまで言うと、少しばかり何かを思い出すように目を閉じ、口ごもった。そして、しばらくして目を開き、重々しそうに言葉を吐いた。
「共同研究者の謎の死だ」
「共同研究者……?」歩が眉間にしわを寄せる。
「そう。彼と共に研究に取り組み、主に実用的な開発を担っていた人間が、自宅の自室で、自殺に見せかけた他殺体で発見された。そういう事件が過去にありました」大隈は、歩の目を見て言う。「その研究開発者の名前は、荒田潤次郎。光剣くんもよく知っている、荒田守くんの祖父にあたる人間だ」
「ああ……、荒田くんの」守は上目遣いで天井を見やり、納得したように頷いた。
「は、はい……。確かにそのことは守からもよく聞いていますが、まさか彼のお爺さんが、愛咲博士の共同研究者だったなんて……。それは知りませんでした」一輝は早口で言う。
守はいつも「ワイはじいさんの仇を取る」と口にはしていたけれど、その詳細を話してくれたことは一度もなかった。もちろん、自分から聞いたこともないのだけれど、彼は、僕がから聞いたら、果たして真実を教えてくれただろうか。いや、そもそも守自身も、真実をどこまで知っているのだろう……。
大隈は続けた。
「荒田潤次郎氏死亡の事件は、捜査もすぐに打ち切りにされてしまい、自殺とも他殺とも言えないという、実に中途半端な捜査結果のまま、有耶無耶にされてしまった」
「やはり、その事件にも、なにか得体の知れない大きな力が影響していた……、ということでしょうか」歩が聞いた。
「そうかもしれません。安易に否定はできませんな……。なにしろ、彼ら二人が残した、特にエネルギィ分野での実績は、既存科学の常識を覆し、既得権益を破壊するほどの勢いをもつものも多かった」そういうと大隈は、上着の胸ポケットを探り、黒い金属製の携帯端末を取り出して見せた。「私たちが近頃、当たり前のように使っているこのオムニスやホログラムの技術も、元となるテクノロジィを産み出したのは彼らです」
大隈は、端末をポケットにしまってから続けた。
「彼らはこれらの技術を世界の各企業に提供することによって、莫大な資金を稼いでくれた。もちろんその収益の一部は、私たちNARDや自然研究所の大切な礎になっていることも事実で、それがなければ、もしかしたらNFIの設立すらままならなかったかもしれない。だが、我々関係者の間では、荒田氏の死は、彼の成果に対すして嫉妬する研究者や他企業のやっかみが原因で、報復と妨害が目的だった、と密かに語られています。確かなことは未だ不明ですが、やはりここでも、世界に役立つ技術を研究し、実現した研究者が命を失うという、私の危惧していたことが起こってしまったのです」
「なるほど……」歩は深く息をついて答えた。「世の中、確かにどこか病んでますね」
「その後、愛咲くんがこの国を出たのは、その事件の直後。自然研究所の設立から約三年が経過した頃でした。彼は国を出た後、海外で小さな研究所を立ち上げて、密かに研究を続けていた」
「無理もないと思います。それだけのことがあれば、誰だって身の危険を感じるのは当たり前だ。逃げたくもなる」歩は、憎しみや怒り感情が込められた口調で言い放った。
ところが大隈は、歩の言を否定するように首を横に振った。「……いや、実はそうとは言い切れないのです。今思えば、愛咲くん自身は、あまり死というものを恐れてはいなかった……」
「……どういうことですか?」歩は首をかしげる。
「私は、彼がこの国を発ってからも、頻繁にやり取りを重ねていました。お互いの現状報告や今後の展望など、いろいろなやり取りをしました。その中で彼は、いつも、間に合わない、と口癖のように言っていました。
「間に合わない?」歩が聞く。
「ええ。彼は言っていました。自分はいつ死んでも、いつ殺されても構わない。覚悟はできている。ただ、今やっている研究だけは、どうしても完成させなければいけない……、と」
「なるほど……」歩は小さく頷いた。「素人の私が聞いても分かるかどうか自信がありませんが、愛咲博士は、自らの死と引き換えにしてまで、一体なんの研究をしていたのでしょうか?」
「私も研究者ではないので、詳しいところは分からない。とにかく、当時の彼は、自分の研究について詳しく語りたがらなかったものでね……」大隈は口を斜めに上げた後、核心に迫るような物言いで言った。「たが、彼はたった一言だけ、私に教えてくれたことがある。それは……」
一輝も歩も、身を乗り出すようにして、大隈の言葉を聞き逃さないように耳を傾けた。
「千年花を見つけるんだ、と」
「千年花……」歩は目を丸くして、その言葉を繰り返した。
「千年花を知っていますか?」大隈は低い声で歩に聞いた。
「ええ、知っていますとも。でも、あれは、一時期ネット上で騒がれただけのおとぎ……」
出てくる語尾を予測していたかのように、大隈は、歩が言い終わるよりも早く、言葉を継いでかき消した。
「そう、確かにあれば、ただのおとぎ話……。しかし、愛咲くんの研究は、そのおとぎ話を具現化することだった」
「そんな、まさか……」歩は少しにやけて、口元を上げた。
「だが、そのまさかを、彼は実現したようです」
大隈の執拗な返答に、歩は口を閉ざした。
一輝と二人で、真剣な大隈の、濡れた瞳をただ見つめる。
千年花……
一輝も、その花の名は知っていた。
インターネットを利用する人間なら、きっと知らない者はいない。千年花は、一時期それだけ話題に登ったのも、記憶に新しい。あの話題の広がり方は、大規模な戦乱に巻き込まれている世界の人がどれほど困窮しているかを如実に表していた。
それくらい、急速な拡散。
あらゆるサイトで、様々な推測が飛び交った。
信じる者。疑う者。あざ笑う者。話題の出元を探ろうとする者。
千年花にまつわると謳った画像、映像、伝説。
嘘か本当かも分からない雑多な情報が、ネットの海に溢れかえった。
(ただでさえ情報が溢れかえっているのに……)
でも、結局、なにも起こらなかった。世界はなにも変わってない。
そんな花、この世にはどこにもない。そんな都合のいい話があるわけない。
そもそも、千年花が、花なのか、それとも、何か他の違うものなのかさえ分からなかった。
つまり、誰かが、なにかの目的の為に作り出した、ただのおとぎ話。世間は、それで、一旦の落とし所を見つけたに違いなかった。
(でも、一体なにが目的で?)
当時、一輝はそう思った。
そのうち、誰もが予想していた通り、他の話題と同じように、千年花の話は、広まった時よりも早い速度で収束していった。
(所詮、ネットなんてヴァーチャルだ)
でも、まさか本当にそれを探し当てようとする人がいただなんて……。
ここでふと、一輝の脳裏に、あの日、自宅の食堂で口にした不思議な種がフラッシュバックのように、リアルに蘇ってきた。
指で摘んだ瞬間、冷たかった。
体温で溶けて、すぐに消えてしまうかと思うほどか弱い光で、ぼんやりと光ってた。
(まさか、僕らが食べたあれって……)
大隈は、一輝の思考を他所に、淡々と続けた。
「私は、愛咲くんがこの国を出てからも、何度か、電話やメールでやり取りをした。その度に彼は、この世のすべての謎を解く鍵は千年花にある。意気揚々と口にしていた。私は始め、なにかの冗談かと思っていた。しかし、彼は本気だった……」
大隈は一旦言葉を切って、大きく息を吐いた。皺の多い額に、じんわりと汗が浮かんでいるのが見える。
「それから七年後。つい半年程前のことだ。彼から久しぶりに連絡があった。そして、とうとう自分の目指していた人生最大の研究が終わった、近々国に戻る……。彼は私にそう告げた」大隈は、視線を落としながら、当時を懐かしむような遠い目で続けた。「あの時ほど嬉しそうな彼を、私は知らないなあ。彼はそれくらい嬉々としていたよ」
「その時、愛咲博士は……、なんと?」歩は、話の先を待ちきれない様子で尋ねた。
大隈は、ゆっくりと瞳を起こし、歩を見据えた。
「千年花の力を具現化したプラント・ニューロン、<ソリッド・カルス>。それを我々NARDSFとNFIに託す。彼は一言、そう言った」
「ソリッドカルス……」今度は、一輝が言葉を繰り返した。(あの種が……?)
「そして、結局その言葉が、私にとって、彼の最期の言葉となってしまった……」大隈は目に涙を浮かべ、力なく苦笑した。「私は、愛咲くんの凶報を知った時、愕然とし、絶望の淵に立たされた気分だったよ……。なぜなら、世界が混迷を極める中、私にとって愛咲くんの研究は、大きな希望の光でもあった。それが、あと一歩というところで灰になってしまった。そう思った。しかし、神は私を見捨ててはいなかった」
大隈はそう言うと、涙の浮かんだ大きな瞳で一輝を真っ直ぐに見据えて、力強く言い放った。「恐らく、愛咲くんが死の直前、君たちに託したアタッシュケースの中身こそがソリッド・カルス……、千年花の力。そう考えて間違い無いだろう」
一輝は、言葉を出すことさえできず、ただ口を開け放って大隈を見ることしかできなかった。
「君たちは、偶然にも、彼の意思を受け継いでいてくれた。しかも、彼の意図していた通り、ソリッド・カルスは、NFIである君たちの手に渡っていた。これは果たして偶然だろうか……。いや、これは奇跡。この国に住まう八百万の神の采配に違いない!」大隈は、溢れ出した感情をコントロールできなくなったのか、涙を流しながら、笑顔と悲しみの入り混じった表情で言い募った。
「君たちは、神に選ばれし者だ」
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