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22. チャンスはたったの一度きり

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22


「いや、これ無理だろ! 絶対無理!」

 化け物の振るった巨大な腕を、間一髪で回避した平太の目の前を、鋭い風圧が通り過ぎた。


「無理じゃない! やるの!」

 エミリは怪物の周囲を、円を描くように駆け回りながらレーザガンを連続して撃ち込み、叫んだ。


 銃口から迸る青白いレーザ光が、次々と怪物の体に突き刺しては消える。手応えはあった。閃光が当たる度に、相手の傷口からは大量の粘液が吹き出す。辺りの床は既に、溢れ出した体液で海のようになり果て、真夏のどぶ川のような、鼻腔を突く生臭い匂いが周囲に充満していた。


「橘、お前、なんかすげえ力があるんじゃねーのかよ」平太は、肥満の体躯に似合わず素早い動きで相手の攻撃を飛び避けながら、伽羅色のレーザ光をひたすら撃ち込み続ける。


 しかし、相手は相手で、巨体に似つかわしくない猛スピードで六本の野太い腕を振るわせ、巨大な脚を振り上げ、こちらの行動を先読みするように封じてくる。その度に床面は崩れ、ひび割れた床材は激しく隆起し、立ち上がれないほどの激震がフロアを襲う。


「他人に頼るその悪癖、いい加減に止めて欲しい」エミリは独り言のようにつぶやきながら、トリガを引き絞る。反面、躰から迸ってはいるものの、延々と燻っているだけの力に苛立ちを覚えていることも確かで、つまり、開花した能力の使い方がまったくわからなかった。


 彼女は、相手の隙を見計らって銃のエネルギィゲージに目をやった。


 残量は、残りわずか三分の一程度。平太の銃も、恐らく同じ程度だろう。


 エミリは、相手の状態とエネルギィ残量を元に、瞬時に計算する。


(絶対足りない……)エミリは顔を顰めて舌打ちした。


 こちらの都合など構いなしに、疲れ知らずの巨大な怪物は、猛然と襲い掛かる。


 接近された方が交わす、距離のある方が撃つ。エミリと平太は開戦から十分以上、その単調なルーティンをただひたすらに繰り返しているだけだった。


 床は割れ、壁は崩れ、ガラスは砕けた。あれだけ高級で上品だった官邸内部は、巨大生物の無差別な破壊行動によって既に廃墟のように成り果てていた。


 だが、エミリは気づいていた。


 相手は、ただ闇雲に暴れているわけではない。こちらの動きを計算して、周到に動いている。感情や意思は感じられない。だが、目には見えない何かに、正確に動かされ、操られているような動きには違いなかった。


(操作されてる……?)


「頼むぜ、お前ら」相手からかなり距離を取り、援護射撃を繰り返す後醍醐が、二人の新入隊員に声を投げかけた。「こんなバケモンに殴られたら、いくら俺たちでもひとたまりもないからな」


「海坊主にあそこまでやられて平気だったおっさんが、よく言うよ」平太は、相手のイヤモニタに聞こえるように、わざとらしく呟いた。


「お前たちNFIのメンバは、頭はさておき、ロートルの俺らとは躰のデキが根本から違うんだ」


「全部押し付けっすか……、マジで」平太は額に汗を浮かべながら、激しい呼吸の合間に叫んだ。


「確かに俺たちもやるとは言った。だがしかし、これは想定外だ」後醍醐は口を斜めにする。


「やっぱりひでえ隊長だあ!」平太が片膝を立てて座り撃ちをしながら必死に答える。


 次の瞬間、辺りの空気が変わった。


 標的の周囲を取り囲んで様子を伺っていたSAT隊員たちが、突然踵を返して撤収し始めた。


「おいおい、お前ら一体どこ行くつもりだ?!」後醍醐は、近くの隊員を怒鳴りつけた。「援護射撃はどうした!」


「我々は、四階の総理を救出に向かう」隊長らしき男が無表情で答えた。そもそも、目出し帽にヘルメットという装備のため、相手の顔はほとんど見えない。


「寝ぼけたこというな」後醍醐が怒鳴る。「残った敵はあのバケモンだけだ。あいつを撃破せずになにを言ってる」


「上からの命令だ」男はそう言い残すと、周囲の隊員に合図を出して、止まったままのエレベータを駆け上がっていった。大勢の隊員が後ろに続いて、一階から去っていく。


 周囲には、負傷したSAT隊員が数十名、取り残される形となった。


 上階に駆け上がっていく隊員の後ろ姿を見送った脇坂と永峰は、苦笑いを浮かべて肩を竦めた。


「ニーナ、どういうことだ」後醍醐は、低い声で司令室に声を投げた。


「すみません……」ニーナがバイザモニタに顔を出した。「こちらからも応援要請と負傷者の救護依頼を出しましたが、突き放されました。軍部から……、いえ、もしかしたらもっと上からの指示が出ているのかもしれません。総理の救出のみを最優先しろと……」


 ニーナの説明を聞いた瞬間、後醍醐は、すべてを察知したかのように舌打ちをし、少しだけ口元を緩めた。「そうか……、なるほどな……。俺たちはただの(おとり)で、このまま見殺しにするっていう算段か。後発部隊の俺たちは、いつまでも肩身が狭くて、永遠に優遇されることのない運命だってことか」


「これ以上の応援は見込めないっていうことですか?」脇坂が聞いた。


「そういうことになるかもしれません」ニーナが申し訳なさげに答える。


「俺たちが持っているのは潜入任務用の装備だけ。こんなちゃちな武器で、こんな得体の知れない化け物の相手は無理ですよ!」永峰が声を荒げて言う。「戦車の砲弾やミサイルでないと、あの不気味な生き物の撃破なんて……」


「永峰……」後醍醐がくぐもった声で永峰を見据える。「お前、勝手に限界決めてんじゃねえよ!」


「しかし隊長……!」永峰は、切迫した事態に遠慮することなく顔を顰めた。


「目の前のバケモンを沈めない限り、神代は元より、俺たちも全員ここで死ぬ……」後醍醐ははっきりと言い切った。「お前、それでもいいのか?」


「いえ……」永峰は眼鏡の奥の瞳を曇らし、俯きながら答えた。「……よくないです」


「人間誰でも、諦めた所がてめえの限界点なんだよ」後醍醐は永峰をまっすぐに見据えて続ける。「永峰……。お前、神崎からもらったこの命、こんな所で無駄遣いするつもりか?」


 後醍醐の口から神崎という名前を聞いた瞬間、永峰だけでなく、脇坂までも、目を見開き、神妙な面持ちで目を伏せた。


「お前、神崎のこと、忘れたわけじゃねえだろ」


 永峰と脇坂の二人は、乾いた喉に固唾を送り込むように、ゆっくりと首を縦に傾けた。


「だったら、こんな所で諦めるな。それがNARDスペシャルフォースだろ」後醍醐はいくらか表情を緩めて続ける。「どんな相手にも必ず弱点はある。これまでの任務だってそうだったじゃねえか。俺もお前らも、結構な修羅場をくぐり抜けてきたんだ。あんな怪物、どうせただの作り物……。突破口はどこかにあるはずだ」





「本当に警察の部隊が引き上げていく……」暴れ狂う怪物に銃の照準を合わせたエミリは、上階に上がっていく隊員たちの姿を横目で追いながら呟いた。


「俺たち、見捨てられたみたいだな」平太が口を斜めにする。


「笑い事じゃない。それから、しゃべってたら本当に一発でやられるわよ」エミリは、ふざける平太に檄を飛ばした。


「まあ俺さえ居れば大丈夫だろ、こんな化け物」平太は懲りずに茶化す。


「こんな時でも、相変わらず楽天主義ね」


「それが俺だしな」平太は、お決まりの口調でへへっと品のない笑いを浮かべた。「お前の方こそ、俺のこと誤射するなよ」


「それ、誰に向かって言ってるの?」エミリは、ドスの効いた声で言う。


「はいはい、すみません。射撃成績ナンバーワンの橘さんなら、心配はいりませんよね」


「私が外すわけないでしょ」冷たく言い捨てたエミリは、平太を追い回す怪物めがけて、トリガを何度も引き込んだ。


 青白い閃光が、怪物めがけて真っ直ぐに進み、対象の皮膚を焼き切り、肉を焦がす。確かに彼女の射撃は正確無比で、狙った部位を確実に、的確に、射抜いていく。


 怪物の体は、徐々に削れている。全身の至る所に突き出た不気味な口が、苦しげな断末魔を上げて、血反吐を滝のように流した後、緑色のヘドロのような体液を吐き出す。


 だが、決定的なダメージを与えることができていない。


 エミリは楽観していなかった。


 怪物の動きは、銃で撃たれるほど鋭くなっているようだった。


 今も、重厚な躰を不気味に打ち振るわせて、勢い良く平太に殴りかかる。

「いくら腕に自信があるからって、そう無闇に撃つなよ」平太は怪物の打撃を回避しながら、息を切らせて独り言のように言う。「こっちはもう回避だけで手一杯だっつうの」


「エネルギィが足りません」エミリが誰へともなく言う。「私たちのレーザ銃だけでは限界があります。このままでは、恐らく持ちこたえられません」


「橘」後醍醐が離れた位置から応答する。「詳しくは分からん。今この場で問い詰めるつもりもない。だが、お前、四階の侵入者を逃亡するまで追い詰めた手段は、もう使えないのか」


 言われてエミリは、自分の背中に意識を集中した。だが、ついさっきまで咲いていたはずの紫陽花は、今はどこにも見当たらない。全身を包み込んでいた激しい冷気さえも、今はもうほとんど残っていないように感じた。


「自分でもよくわかりません。一体何が起こったのか。あれが、なんだったのか……。ただ、とてつもない力だったことは確かですが……」エミリは悔しげに告げた。


「そうか……」後醍醐は落担した。


 その時、一同の耳元に、意外な人物の声が届いた。


「エミリ、平太、聞こえるか」

 声変わり前の中学生のように甲高く、鼻づまりの時のようなクセのある声色。荒田守の声だった。


「守じゃねえか! お前、戻ってきたのか?」平太が嬉しそうに叫んだ。


 荒田は、バイザモニタには表示されない。音声のみで会話を続ける。

「ああ、たった今、司令室に戻ってきた。ちょっと自分の研究室で色々やっとってな。ええか、時間がないから一度しか言わんぞ。よく聞け」荒田は、喉の奥を鳴らして咳払いをする。「大体の状況はワイも研究室から見とって把握しとる。化け物を簡易解析した結果、そいつの弱点は腹や」


「腹部……?」エミリが確認するように聞き返す。


「せや。そいつが何の生きモンかはワイもまだよお分からんが、そいつのすべてはどうやら腹に詰まっとる。だから、腹を吹き飛ばせば、そいつはイチコロになるはずや。ただな、今、そこにある銃をどれだけかき集めても、一発でそいつの腹に風穴あけるほど威力はもう残っとらんやろ。だからエミリ、平太。もうレーザ武器は、銃もブレードも両方使ったらあかん」


「撃たなきゃ勝てねえぞ」平太は怪物の攻撃を一心不乱にかわしながら叫んだ。


「勘違いすな。今な、ネットワーク通じて、お前らのレーザ銃とレーザブレードのファームウェアをアップデートしとる。本体側面を見れば、赤いLEDが点滅しとるのが分かるはずや」


 エミリはすぐに銃本体を傾け目をやる。荒田のいう通り、ついさっきまでは見かけなかった小さな赤いLEDの光が細かく点滅していた。


「でも、武器にファームウェアって……」エミリが不審そうな顔をして片側の眉をつり上げる。「どういうこと?」


「結論から言うと、今残ってるレーザエネルギィを一つの武器に集めて、最大出力で放出するんや。使う側のお前らには直接関係あれへんけど、NFIに支給されとるすべてのロータスウェポンには、構造上の精度と操作性向上のために、それぞれ独自のCPUが搭載してある。ただ、武器の開発が慌ただしくて、全部の機能を盛り込むことができなかったんや。いやあ、ほんまにすまんなあ。もう少しワイがしっかり準備しておけばこないなことにならずに済んだんやけどなあ……」


「謝罪はいいから」エミリが早口で言う。「で、どうすればいいの」


「あ、ああ、まずは、お前らの武器のアップデートが終わるまで、もうしばらく待ってほしい。あと十分もあればなんとか終わるはずやで」


「十分?!」エミリが呆れ調子で叫んだ。「長すぎる。五分にして」


「アホか、無茶言うなや」荒田は説得するように言う。「それでもかなり努力したほうなんやで! ほんまは三十分以上かかるもんを緊急に圧縮したんやから、それくらいは耐えろや。お前らなら、なんとかなるやろ」


「……分かった」エミリは舌打ちしてから頷いた。「それで、次は?」


「アップデートが終了したら、エミリの持っとる銃にすべての武器のレーザエネルギィをチャージする。銃とブレードの持ち手のところのケツんところ見てみい」


 エミリは言われた通りの箇所をすばやく確認する。円形状に彫り込まれた模様がコネクタとなっているようで、そこに接続用と思われる金属製の端子が埋め込まれているのがわかった。


「そのコネクタ同士をつなげて、武器と武器を接続する。そうすれば、自動的に銃の方にチャージするように、こちらですでにソフトウェアを設定してある。あとは、そいつの腹めがけてがつんと一発打ち込むだけや。ほんまは達也の持っとるもんも一緒にできればええんやろうけど、今は緊急。お前ら二人のブレードにチャージされとるレーザエネルギィはかなり強めのもんやから、まあこれだけ残量があれれば、そんな怪物くらい一撃でなんとかなるやろ」守は、手元にあるモニタの残量ゲージを確認しているのだろう、軽く視線を落として言った。


「やってみる」エミリは短く答えた後、なにかを思いついたように目を丸くした。


「荒田くん」

「なんや」

「どうして?」

「なにがや」荒田は怪訝そうな顔で聞く。

「あなた、さっき、研究室に帰った」


「ああ……」荒田は、急に表情を和らげ、今度は照れくさそうにうつむいて答えた。「ワイの作った武器で人が死ぬのは、確かにあんまりええ気持ちはせえへんが、ワイの作った武器が弱すぎて、使こてる大事な仲間が死ぬっていうのはもっと耐えられへんからな。それだけや。なにか問題、あるか」


「いいえ」エミリは口元をかすかに緩めた。「あなたの負けず嫌い……。昔から変わってない」


「アホ。んなことどうでもええから早よせえや。大鎚、ほんまに死んでまうで」


「そうね」エミリは微笑して頷いた。


「早くっつったって、俺がこんな状態でどうするんだよ」平太が息を切らしながら言う。


 怪物は、ターゲットを完全に平太に絞ったのか、彼ばかりを徹底して追い回している。怪物から逃げ回ることに必死で、立ち止まる余裕などないと言いたげだった。


「アホンダラ!」守が平太を一喝する。「忘れたんか。今こそメタマテリアル使うとこやろ。光学迷彩で透明になれば、そいつから逃げれるやろ」


「あ、そっか」拍子抜けした調子で平太が答える。


 バイザモニタの守は、片手を額に当てて呆れた表情で首を振ったが、瓶底メガネの目は見えない。「……ただし、お前ら二人が光学迷彩で見えなくなっているその間……」


「俺たちがやる」守が言い終える前に、若手隊員たちのやりとりを静観していた後醍醐が口を挟んだ。「その間は、俺たちがあいつをなんとか制止すればいいんだろ」


「さすがはNARD隊長、後醍醐はんや。ほんまに話が早いな」荒田は口を斜めにする。


「大鎚、橘。俺たちがそいつを引きつけ始めたら、とにかく奴から二メートル以上離れろ。そうしないと、光学迷彩の効果がない」後醍醐は逃げ回る平太を見ながら、真剣な表情で告げた。


「了解」

 平太とエミリは同時に答えた後、首の後ろに垂れ下げていたフードを片手で掴み、頭にかぶった。


 後醍醐は、脇坂と永峰に片手で合図をして、暴れる怪物に駆け寄って行く。三方に散ったNARD隊員たちは、怪物を取り囲むような位置に立ち、銃を構える。


「おいバケモノ、お前の相手はこっちだ!」後醍醐が大声を上げ、背中目掛けてサブマシンガンを撃ち放った。


 猛然と暴れていた怪物は、状況の変化に気づいたのか、電池切れを起こしたラジコンのように動きを止めた。一階のほぼ中央の位置で固まったように動かない怪物。辺りは一瞬、時間が止まったかのような静けさに包まれた。


 その隙を狙って、平太は後ろに飛び退き距離を開け、片手を耳元にかざして光学迷彩を発動した。エミリも同様の動きで機能をオンにする。


「すげえな、本当に消えたぜ……」後醍醐は、二人の姿が見えなくなったことを確認すると、再び怪物に向かって銃を発砲する。


 始めは、目の前にいた人間の姿が見えなくなったことを不審に思ったのか、怪物は、平太を探すように周囲を見回していた。しかし、すぐさま後ろを振り返った怪物は、後醍醐目掛けて勢いよく突進を始めた。


 再び時間が動きだした空間には、怪物の激しい咆哮と足音、NARD隊員たちの放つけたたましい銃声が鳴り響く。


「こっちに」


 周囲の状況を素早く察知したエミリは、平太に音声で合図を出した。マスコミの三人が隠れている会議室とは反対側の、館内と外庭を隔てるガラス張りの壁の角に設けられている扉の中に駆け込んで行く。後醍醐たちに襲いかかる怪物を横目にしながら、平太も後に続く。





 二人が駆け込んだ部屋は、食堂のようだった。

 縦長の部屋には大きな長テーブルが置かれ、左右には豪華な椅子が並べられている。

 中央ホール同様、外庭に面した壁はガラス張りで、三日月のかすかな光が差し込み部屋を照らしている。

 二メートル以内に接近しあった二人は、お互いの姿を確認することができた。


「ちょっと、すごい汗じゃない……」エミリは、追いついてきた平太を見て声を上げた。「顔色悪いけど?」


「あれだけ……、動きまわりゃ、はあ、はあ……、誰だって汗だくにもなるだろ……、馬鹿野郎」平太は両手を膝に当てて体を屈め、全身を上下に動かしながら激しく呼吸している。「あのバケモン、俺ばっかり狙いやがってよお」


「大槌くん、二つの意味で太り過ぎよ」エミリは冷たく言い捨てる。


「どういう意味だよそれ。俺のは太ってるんじゃなくて、ガタイがいいって言うんだよ」平太は苦笑いしながら、自分の腹を指差す。「ほら、触ってみろよ」


「気持ち悪いからいい」即座に言い返すエミリ。


「気持ち悪いってなんだよ!」と平太。


「そんなことより、これを渡すわ」唾を飛ばす平太を半ば無視し、エミリは自分の持っているレーザ銃とブレードのグリップを差し出す。「アップグレード終了まで約七分。アップデートが終わったら、荒田くんから説明を受けた通りにこの銃に全エネルギィをチャージして撃って」


「おい、俺がやるのかよ」平太は、手渡された武器を見ながら言う。「チャンスは一度しかないんだぜ。銃の腕はお前の方が上なんだから、お前が撃てよ」


「止まってる相手なら、誰だって撃てるでしょ」エミリは早口で答える。


「はあ? どういうことだよ」平太は顔を斜めにしてエミリを覗き込む。


「チャンスはたったの一度きり。私が今から言うこと、よく聞いて」エミリは平太に視線を返し、厳しい口調で言い放った。

※この物語はフィクションであり、実在する人物、法律、団体、名称とは一切関係ありません。


※当作品内に掲載されているすべての文章、画像等の無断転載、転用を禁止します。すべての文章、画像等は日本の著作権法及び国際条約によって保護を受けています。

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