君に話したいこと
次の日――。
俺は朝から学校へ登校した。いつものように校門をくぐると、俺を見つけた名前も知らない女の子たちが、頬を赤らめながら話しかけてくる。
身分や肩書、外見だけで判断されることには、幼い頃から慣れていた。
毎日よく、そんな表面だけの会話ができるものだと思う。けれど、そんなことを口にするわけにもいかない。
幼い頃から受けてきた厳しい教育の中で身につけた笑顔を浮かべ、適当に会話を返す。すると、俺の笑顔を見た彼女たちはさらに頬を赤らめた。
(彼女たちは一体、俺の何を知っているのだろう……)
そんなことを考えながら廊下を抜け、教室へ向かう。けれど、そこにスピカの姿はまだなかった。
その代わり、また別の女の子たちが俺の周りに集まってくる。……本当に不毛な時間だ。そう思っていた時だった。
聞き覚えのある笑い声が耳に届く。どうして彼女の声は、こんなにもよく聞こえるのだろう。
大勢の人間がいる中でも、俺はいつだって、スピカだけを見つけることができる。
視線を向けると、そこには友人と楽しそうに笑うスピカの姿があった。
ずっと俺だけを見ていてほしい。そんなことを思いながら彼女を見つめていると、スピカもこちらに気づいた。彼女は片手を挙げ『おはよう』と声には出さずに口を動かした。
そんな何気ない仕草が、どうしようもなく愛おしい。思わず笑みが零れる。
今日、俺の過去を話した時、彼女はどんな顔をするのだろう。悲しむかもしれない。傷つくかもしれない。もしかしたら、俺のことを知りたくなかったと思うかもしれない。
それでも、もう誤魔化すことも、嘘をつくこともしたくなかった。
意を決して、俺は彼女の元へ向かう。
「スピカ」
名前を呼ぶと、彼女は嬉しそうにこちらを振り返った。その笑顔を見て、一瞬だけ迷いが生まれる。
……こんな顔を曇らせることになるかもしれない。それでも、伝えなければならない。
「今日の放課後、話がしたい」
「え?」
「できれば二人きりで話したいから……俺の屋敷に来てほしい」
彼女は、ひどく驚いた顔をした。




