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隠された真実

 家に帰ると、アルクスが今日の怪我について父に説明してくれた。捻挫は、すぐに医者に診てもらえることになった。


「今日はありがとう」


 そういうと、アルクスはいつものように笑う。


「なんてことないよ。また明日ね」


 父に軽く挨拶をしてから、アルクスは去っていった。その笑顔を見送ったあと、部屋には父と私だけが残った。


 私は一度、深く息を吸う。そして、ずっと気になっていたことを聞くことにした。


「あの、お父さま」

「なんだい? 気になることがあるなら、なんでも聞いてごらん」


 父は優しく笑う。父は魔法使いではない。

 だからもしかしたら、何も知らないかもしれない。それでも、聞かずにはいられなかった。


「私って……何かの魔法がかかっているのかな?」


 その瞬間、父の表情が変わった。


「……!」


 驚いたように目を見開く。そして突然、私の肩を両手で掴んだ。


「どうして、そう思ったんだい?」


 父の声は明らかに焦っている。


「何かあったのかい?」


 初めて見る父の表情に、私の身体がびくりと強張った。


「実はさっき、アルクスに痛みを感じなくなる魔法をかけてもらおうとしたんだけど……」


 私は今日の出来事を説明する。


「うまく魔法がかからなかったの。それで、何か別の魔法がかかっているのかもって……」


 父を見つめる。


「お父さまは何か知ってる?」


 すると、父は「ふぅ」と大きく息を吐いた。その表情は少しだけ安堵したように見えた。

 そして、もう一度、ため息をつく。私の肩に優しく手を置き、まっすぐに私の目を見た。


「スピカ」


 父の声は、とても穏やかだった。


「君はララに大事にされていたから」

「……」

「もしかしたら、ララがスピカを守るための魔法をかけたのかもしれないね」

「お母さまが……?」

「私も、スピカにかかっている魔法については何も知らないんだ」


 父はそういって、柔らかく微笑んだ。


(……違う)


 胸の奥がざわつく。


(きっと、お父さまは何か知ってる)


 先ほどまでの異様な焦り、私が魔法のことを聞いた瞬間の表情。そして今の、あまりにも用意されたような答え。


(お父さまは、嘘をついている)


 そう確信した。

 けれど、父はきっと、そのことを私に話すつもりはないのだろう。

 だから、私は父の望むように笑った。


「……そっか」

「うん」

「じゃあ、この魔法は……お母さまが私を守ってくれているんだね」

「そうだね」


 父は優しく私を見つめた。


「かわいいスピカ。君が心配することは何もないよ」


 そういって、父は私を抱きしめる。私も父の背中に腕を回した。


「何か気になることがあれば、すぐに教えてくれ」


 父の声が耳元で響く。


「スピカを安心させるためだったら、私はなんだってするからね」

「……ありがとう、お父さま」


 その後、私は自室へ戻った。

 部屋に戻り、ソファへ腰を下ろした瞬間。全身から力が抜けるのがわかった。


「ふぅ……」


 思わず、大きなため息が漏れた。

 冷静になって、今日一日の出来事を整理する。


 アルクスの話から考えると、私には何らかの魔法がかかっている可能性が高い。そして、父はその魔法について、何かを知っている。それなのに、私には教えてくれなかった。


(よほど、私に知られてはいけないことなのかな……)


 あの時、父は明らかに焦っていた。


(私は……何者なんだろう)


 自分の身体にかかっている魔法、父が隠している秘密。そして、十年前の出来事。

 すべてが少しずつ繋がりそうで、けれどまだ何もわからない。そんなことを考えていると、なかなか眠ることができなかった。


 気づけば外はすっかり明るくなっていた。私は不安を押し込めるように、自分の身体を両腕でぎゅっと抱きしめる。そして、ようやく重くなった瞼を閉じた。


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