↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

35/56

十年前の魔物

 コーネリア様と昼食を取った日の放課後――。

 私は、十年前の魔物についてアルクスに聞いてみることにした。


「ねえ、アルクス。聞きたいことがあるんだけど」

「なに?」

「十年前に、大きな事件とかってあったのかな? 魔物が関係するような」

「十年前?」


 その瞬間、アルクスの顔が、ほんの少しだけ強張った。


「なんで急に十年前のことなんか聞くの?」

「実はこの前、エイダン隊長と話したんだ。母のことを聞こうと思って」

「ああ」

「それで、お母さまの生い立ちとか、魔法のこととか……お父さまとの出会いとか。私が生まれた頃の話も聞いたの」

「ああ」

「それでね」


 私は一度、言葉を区切った。


「今から十年前に『あの魔物が現れた』って、エイダン隊長がはっきり言ったの」


 アルクスの顔を見る。


「ただ……その後、エイダン隊長はそのことを私に話そうとしなかった」


 きっと……私には聞かせたくない理由があるのだろう。


「その後、グレヴァードさんに会った時にも、お母さまについて聞いてみたんだけど」

「うん」

「もし十年前に、母に関係するような大きな事件があったなら、グレヴァードさんも知っているはずだよね?」

「……そうだね」

「でも、そんな話はまったく出なかったの」


 私は今まで感じていた違和感を、すべてアルクスに話した。エイダン隊長の言葉、グレヴァードさんの反応。

 そして、もしかしたら十年前の出来事が自分自身にも関係しているかもしれないということ。

 図書館でも調べてみたが、それらしい資料は見つからなかったことも。アルクスは黙って、最後まで私の話を聞いていた。


「そうか」


 しばらくして、彼は静かに口を開いた。


「スピカに関係することかもしれないなら、俺も少し調べてみる」

「本当?」

「ああ。でも、あんまり危ないことするなよ」


 ぽん、と頭に手を置かれる。彼の優しい表情を見ただけで、胸がどきりとした。

 ……告白してからというもの、以前よりもアルクスの一つ一つの仕草を意識してしまう。


「うん」


 私は小さく頷いた。



 ◇◇◇


 その後、数日間、私とアルクスは別々に、十年前の魔物について調べることになった。


 しかし――。


「俺も数日間調べてみたけど、驚くくらい何の資料も出てこない」

「やっぱり?」

「うん。普通じゃないくらい、何もない」


 十年前の魔物の出現については、公になっていないのかもしれない。もしかして、国が意図的に隠している……?


「隠しているとしたら……禁書の棚?」


 私が呟くと、アルクスが少し考える。


「ああ。可能性はある」


 禁書の棚。そこには、国にとって都合の悪い歴史や、危険な魔法、一般には公開できない資料などが保管されている。

 もちろん、生徒は立ち入り禁止。ごく一部の限られた人間しか入ることを許されていない。

 もし生徒が勝手に入ったことがバレれば、退学になってもおかしくはない。それでも行ってみる価値はある。


「スピカ」


 アルクスが真剣な顔でこちらを見る。


「俺、今日から三日間学校にいない」

「うん」

「わかるな?」

「……一人で無茶するなってことでしょ?」

「そう」


 アルクスは少しだけ目を細めた。


「絶対するなよ」

「わかってる」

「じゃあ、四日後」


 彼は小さく息を吐いた。


「決行しよう。それまで準備を進めておいて」

「わかった」


 ……でも。本当にアルクスまで巻き込んでいいのだろうか。禁書庫に侵入するなんて、バレれば退学になる可能性だってある。


 それに彼は公爵家の子息だ。もし問題になれば、私とは比べ物にならないほど大きな騒ぎになるだろう。

 まだ入学して半年ほどの私なら……なんとかなるかもしれない。そう思ってしまった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。