デートのお誘い
最近、アルクスが登校してくる日が増えた気がする。
私はアルクスに会えると思うだけで嬉しくなり、毎朝いつも以上に気合を入れて身支度をしていた。
そんな私の様子を、アンナは何か察しているかのように楽しそうに髪を編んでくれる。
「ありがとう、アンナ。今日の髪もとっても可愛い」
「いいえ。最近のお嬢様は、本当に可愛らしいですから」
「えへへ」
恋を自覚してから、もちろんつらい気持ちもあった。けれど、今はこうしてまた以前のようにアルクスと話せることが、とても嬉しかった。
そして改めて思う。アンナやリタ、フランシスくん、そしてコーネリア様。私は本当に、周りの人たちに恵まれているのだと。
「行ってきます」
今日も学校に着くと、真っ先に彼の姿を探してしまう。
「いた……」
あまりの嬉しさに、思わず声が漏れた。私の視線の先には、もちろんアルクスがいる。
ただ顔を見るだけで、自然と笑みがこぼれてしまう。するとアルクスも私に気がつき、こちらへ笑顔を向けてくれた。
それだけでこんなにも心臓が跳ね上がる。そんなことは、今までだって何度もあったはずなのに。
何気ない仕草も、視線も、態度も。今の私にはすべてが特別に見えてしまう。胸が高鳴り、体温が上がっていく。
ちゃんとアルクスに思いを伝えよう。そう決めていた。
告白のシチュエーションはいろいろ考えた。そして私は、アルクスと休日に出かけた時に伝えようと決めていた。
今日は、その約束を取りつける日だ。いつ言おう、なんて誘おう。そんなことばかり考えていると、アルクスが不思議そうに私の顔を覗き込んできた。
「スピカ、おはよう」
その顔があまりにも近くて、思わず飛び上がりそうになる。
「うぇ!? お、おはよう!」
「ははっ。なにそれ。変なスピカ」
「あ、あの、アルクス!」
「ん?」
「今週末って、何か予定あるかな?」
「何? スピカからのデートのお誘い?」
彼はいつものように、からかうような笑顔を浮かべる。
「うん」
私は迷わず答えた。
「……は?」
今度はアルクスが固まった。きっと私が本当にデートだと言うとは思っていなかったのだろう。
「と、とにかく! 空いてるの? 空いてないの?」
「スピカのためなら、どんな用事があっても空けるよ」
またそんなことを言う。いつものアルクスらしい言葉なのに、今はそれだけで胸が苦しくなるほど嬉しい。
恋煩いとはよく言ったものだ。本当に恋とは、病気なのではないかと思ってしまう。
「それで? どこに行きたいの?」
「ローズガーデンなんてどうかな?」
「ああ、いいね」
アルクスはすぐに頷いた。
「じゃあ、またスピカの家に迎えに行くから。ちゃんと待っててね」
「うん。ありがとう」
こうして、アルクスとのデートが決まった。日程が決まっただけなのに、ふっと胸を撫で下ろす。リタにこの話をすると、まるで自分のことのように楽しみにしてくれた。




