第8話 久しぶりのケーキ
気づけば、空は夕焼けに染まっていた。王都中の本屋を巡り、大量の本を集め続けた一日。未来は大きく伸びをした。
「ふぅ……」
すると、隣を歩くマリが優しく声をかける。
「ミク様、少し休みませんか?」
「そうだね。」
未来はお腹をさすりながら笑う。
「ちょっとお腹も減っちゃったし……あそこのお店に入ってみない?」
未来が指差した先には、おしゃれなカフェがあった。ショーケースには色鮮やかなケーキやタルトが並び、店内からは甘い香りが漂ってくる。
「そうですね。でも、大丈夫ですか?」
「えっ、何が?美味しそうじゃない?行こう!」
二人は店内へ入り、窓際の席へ案内された。メニューを開く未来は目を輝かせる。
「わぁ……どれも美味しそう!」
一方、マリはメニューを閉じた。
「私は…大丈夫です。」
「え?」
「私は付き添いですので、お気遣いなく。」
未来は少し困ったように笑う。
「一人で食べてもつまらないよ。それに、今日はまだ買い物に付き合ってもらうんだから。遠慮しないで。」
その言葉に、マリは少しだけ目を潤ませた。
「……ありがとうございます。お言葉に甘えます。」
「何にする?」
「では私は、カフェラテとフルーツタルトを。」
「私はカフェラテとモンブラン!」
注文を終え、しばらくすると料理が運ばれてきた。焼きたての香りがするモンブラン。色鮮やかなフルーツがたっぷり乗ったタルト。氷の入った冷たいカフェラテ。
未来はモンブランを一口食べる。
「ん~~~!」
思わず笑みがこぼれた。
「めっちゃ美味しい!」
その様子を見て、マリもタルトを口に運ぶ。
「……美味しい。」
その一言とともに、自然と笑顔になった。そんなマリの笑顔を見て、未来も嬉しくなる。食後、店員が伝票を持ってきた。
「お会計は、銀貨2枚になります。」
未来は思わず固まった。
この世界の料金は
銅貨1枚約100円
小銀貨1枚約1,000円
銀貨1枚約10,000円
金貨1枚約100,000円(10万円)
白金貨1枚約1,000,000円(100万円)
「えっ!?ケーキと飲み物で!?」
(ぼったくり…?)
恐るべし王都……。思わず心の中で呟く。マリが心配していたのはこれだったのか…。マリは申し訳なさそうに頭を下げた。
「やっぱり、高かったですよね……。」
未来は苦笑しながら財布をしまう。
「うん…。でも、すっごく美味しかったし、たまにはこういう贅沢もいいかな。毎日は無理だけどね。」
二人は顔を見合わせ、思わず笑ってしまった。店を出ると、マリが尋ねる。
「このあとは、何をする予定ですか?あんなにスキルを使って疲れてませんか?」
未来は少し考えて答える。
「日用品を少し買いたいな。それに全然疲れてないよ。心配してくれてありがと!セレス村へ行く前に、必要な物を揃えておきたくて。」
マリの足が止まった。
「今、セレス村とおっしゃいましたか?」
未来は不思議そうに首を傾げる。
「うん。三日後から、セレス村の領主として暮らすことになったんだ。自然が豊かな場所なんだって!」
マリは言葉を失う。
「そんな……。」
その表情から笑顔が消えていた。未来は初めて、マリの様子がおかしいことに気付く。
「マリさん……?」
マリは何かを言いかけたが、小さく首を振る。
「……いえ。」
そう答えたものの、その表情には隠しきれない不安が浮かんでいた。
未来はまだ知らない。
マリが、セレス村という名前を聞いて驚いた本当の理由を。




