第4話 商業区-アルカディア-
商業区へ向かう馬車の中で未来は窓の外を眺めていた。召喚されてから、まだ数時間。知らない世界、知らない言葉、知らない常識。これからセレス村で暮らすなら、まずはこの世界のことを知らなければならない。
「マリさん」
「はい、ミク様」
「まずはいろんな本を買いたいんだけど、どこかいいお店知らない?」
「本屋ですか…」
「うん。できれば、なるべく安く買えるところがいいんだけど…」
未来がそう言うと、マリは少し考える。
「それなら大きな本屋がいいと思います!お店の中というより別の方法になるけど…」
「別の方法?」
未来が首を傾げる。
「王都の本屋では、貴族向けに新しい本をどんどん仕入れています。なので、古くなった本や流行が終わった本は、処分するためにお店の裏に置かれます。本の回収は月末の火曜日、つまり明日の予定なので、今なら本が置かれてると思います」
未来は目を輝かせる。
「それって……」
少し間を置いて。
「無料?」
マリは小さく笑った。
「はい。もちろん、お店によっては少しお金がかかるところもありますが、無料で譲ってもらえる可能性があります。」
未来は驚いた。
「本を捨てるなんてもったいない……」
前の世界でも、本は大切な知識だった。誰かが書いたもの。誰かが残したもの。それは未来へ繋ぐものだと思っていた。
「他にも方法があって」
マリが続ける。
「下町の本屋でしたら、平民向けの本が多いです。貴族向けではないので、比較的安く買えます」
「なるほど……」
未来は頷く。
「じゃあ、まずは無料の本を探して。それから必要なものを買おうかな!」
「はい。」
---
商業区へ到着すると、街の景色が広がった。大きな建物。行き交う人々。店に並ぶ商品。未来にとって、すべてが新鮮だった。
「ミク様、着きました!」
「すごい……」
思わず声が漏れる。マリは優しく説明する。
「ここが王都の商業区です。魔法道具や薬、食料など、様々なものが集まっています」
未来は周囲を見渡す。
「本当に異世界なんだ……」
改めて実感する。しかし、不思議と不安にならなかった。隣にはマリがいるから。
「まずは本屋に行ってみよう。」
「はい、ミク様」
二人は歩き出した。




