第28話 病気の子供たち
トーマスから村の現状を聞き終えた未来は、静かに口を開いた。
「その子どもたちに、会わせてもらえませんか?」
トーマスは少し驚いたような表情を浮かべたが、すぐに優しく頷いた。
「分かり…ました。」
「何もできないかもしれません。でも、この村の領主として、まずは皆さんのことを知りたいんです。」
「ありがとうございます。」
二人は家を出て、村の外れへと向かった。
最初に訪れたのは、小さな一軒家だった。扉を開けると、一人の女性が頭を下げる。
「トーマスさん……。」
「急にすまない、クラリスさん。新しくこの村へ来られた領主様だ。子供の様子を見たいと言ってね。」
女性は静かに頷き、2人を家の中へ案内した。部屋の奥には、小さな男の子が横になっていた。
「この子はユウト。8歳です。」
ベッドに眠るユウトの顔色は青白く、呼吸も浅い。
未来はそっと近づき、優しく声をかけた。
「こんにちは。」
ユウトはゆっくりと目を開き、小さく微笑んだ。
「……こんにちは。」
その笑顔を見た瞬間、みくの胸が締めつけられる。ふと目を向けると、ユウトの髪は白髪に淡い水色が混じった不思議な色をしていた。
「トーマスさん、この髪……?」
「ああ。この子は来た時からこの髪色なんだ。この村へ送られてくる子どもたちは、みんな白髪に元の髪色が混じった髪をしている。水色だったり、赤だったり、緑だったり……色は違うが、必ず白髪が混じっているんだ。」
未来は不思議そうに首を傾げた。
「どうして、この子たちだけが……?」
トーマスは静かに首を振る。
「私たちにも分からない。ただ、王都では昔から、この子たちは『呪い子』と呼ばれているそうだ。」
「呪い子……。」
「毎年2、3人この村へ送られてくる。そして、送られてくる頃には、みんな同じ症状を持ってるんだ。」
未来は言葉を失った。
「お医者さんは……?」
「この村は結界の外だからね。危険を冒してまで来てくれる者はいない。だからね、子どものいない家庭で看病をお願いしているんだ。」
未来はユウトの小さな手をそっと握った。冷たく、力の入らない手だった。
「……つらかったね。」
ユウトは弱々しく笑う。
「でも……だいじょうぶ。」
その健気な笑顔に、未来は胸が痛んだ。
「大丈夫。絶対に助けるから!」
その瞬間――頭の中に、機械的な声が響いた。
『対象との接触を確認。』
『対象の状態を確認するには、魔力譲渡が必要です。自分の魔力が流れている場合のみ、ステータスで確認可能です。』
『対象へ魔力を譲渡しますか?』YES/NO
「えっ……?」
驚くみくの前に、新たな文字が浮かび上がる。
(状態を確認……?)
未来は迷うことなく、心の中で答えた。
(――YES。)
淡い光が、未来の手からユウトへと流れ込む。すると、ステータス画面に新たな表示が現れた。
〈対象情報〉
名前:ユウト
年齢:8歳
状態:魔力減少症
〈詳細〉
魔力使用量が限界を超えたことで、魔力回路が損傷しています。現在の症状は、魔力不足によって生命活動が著しく低下した状態です。
〈治療方法〉
・魔力譲渡 《マナトランス》… 一時的に症状を緩和可能
・光魔法… 損傷した魔力回路を修復し、完治が可能
「魔力減少症…」
「それは一体どんな病気なんだ?」
「魔力不足によって生命活動が低下する病気みたいです。でも光魔法なら……治せる。」
未来はステータス画面を見つめていると1,人の姿が頭に浮かぶ。
(そうだ……。マリさんなら、光魔法が使える。)
旅の途中、小さな傷を負った仲間に、マリが「回復魔法」を使って治していたことを思い出した。
未来はユウトの手を優しく握り直す。
「待ってて。必ず、助けるから。」
そう言い残すと、未来は急いで屋敷へ向かって駆け出した。




