第27話 セレス村の現状
領主の屋敷へ着くと、未来はさっそくスキル【保存】を発動した。
「それじゃあ、どんどん出していきますね。」
光が弾けると同時に、保存していた荷物が次々と現れる。
「まずは掃除道具です。」
ほうきや雑巾、バケツが山のように積み上がる。続いて、鍋や食器、調理器具。さらに、野菜や肉、小麦粉など、夕食の材料まで次々と取り出していく。
「す、すごい……。」
「エレナさん、このくらいで足りますか?」
「あぁ、十分だよ。あとは悪くならないようにそのまましまっておいておくれ。」
「分かりました!」
屋敷の掃除を手伝いに来ていた村人たちは、目を丸くしていた。
「こんなにたくさんの荷物を、一体どこから……。」
「これが、ミク様のスキルなんですか?」
マリは嬉しそうに胸を張る。
「はい!ミク様の【保存】は、とっても便利なんですよ!」
村人たちは感心したように何度も頷いていた。そんなこんなで荷物を運び終えた頃、トーマスが屋敷へやって来た。
「ミク様、お迎えに来ました。」
「あ、ありがとうございます。」
未来は振り返る。
「それじゃあ、皆さん後はよろしくお願いします!」
「お任せください!」
マリたちは笑顔で答え、掃除や荷解きを続けていく。
未来はトーマスとともに、村長の家へ向かった。温かいお茶をいただきながら、トーマスはゆっくりと話し始めた。
「まず、この村の人口ですが……。」
現在の村人は、全部で68人。
30歳から45歳までが30人。20歳から三十歳までが18人。二十歳未満の元気な子どもが10人。そして、病で寝込んでいる子どもが10人。
「病気の子どもが……そんなに?」
未来は思わず息をのむ。
トーマスは重々しく頷いた。
「原因は分かりません。年々、症状は悪化していますが、治療法も薬もなく、見守ることしかできないのです。」
部屋には重苦しい空気が流れた。
「それから……。」
トーマスは窓の外へ目を向ける。
「今は春になったばかりです。今年も何とか冬は越せましたが、食料はほとんど底をついています。結界が張られてからは、この村へ商人が来ることもなくなりました。今では自給自足で食いつなぐだけで精一杯です。」
未来は静かに話を聞いていた。想像していた以上に、状況は深刻だった。貧しいだけではない。病気、食料不足、人手不足。未来への希望すら失われかけている。
(……このままじゃ、この村は。)
未来はぎゅっと拳を握る。
(絶対に、この村を立て直さなきゃ。)
領主としての本当の仕事は、ここから始まるのだった。




