第24話 SALE品のピアス
みくは袋の中から、小さな箱を取り出した。
「そうだ。このピアス、せっかくだから私もつけようかな。」
箱を開けると、淡い虹色の宝石が揺れる一対のピアスが姿を現す。その瞬間、エレナの表情が変わった。
「……みくちゃん。」
「はい」
「そのピアス、少し見せてくれないかい?」
どこか焦ったような声だった。みくは不思議に思いながらピアスを手渡す。エレナは慎重に受け取ると、宝石を光にかざし、じっと見つめた。小さく息を吸い込み、鑑定スキルを発動する。
「【鑑定】」
淡い光がピアスを包み込む。しばらく沈黙が続いたやがてエレナは驚いたように目を見開く。
「そんな……。」
「どうしたんですか?」
「このピアスどこで手に入れたんだい?……これ普通の宝石なんかじゃないよ。」
「え?」
「あたしの鑑定でも、名前も性能も表示されない。」
エレナはゆっくりと答えた。
「わかるのは『鑑定制限対象』ってこと。」
「鑑定制限ってなんですか?」
「この表示が出るのは、ごく一部の超高位の魔道具や、古代の遺物だけなんだよ。あたしの鑑定レベルでは、これ以上先を読み取れない。」
みくは思わずピアスを見つめる。
「でも店員さんが偽物って……。」
「ありえないね。」
エレナは静かに首を振った。
「むしろ逆だよ。本物だからこそ、あたしでも見抜けないんだ。」
彼女は宝石をそっと箱へ戻した。
「お店のSALE品を買ったんですけど…。」
エレナは信じられないという表情を浮かべる。エレナはそっとピアスを未来へ返した。
「おそらく鑑定した方の鑑定レベルが足りなかったんだろうね。鑑定スキルには見抜ける限界があるから。一定以上のスキルのレベルがなければ『偽物』『価値なし』と誤判定されることもあるんだよ。」
「そんなことが……。」
「この先どう変化するのか、どんな力を秘めているのかは、私の鑑定でも読み取れなかった。」
みくはピアスをじっと見つめる。
「じゃあ、今は何も分からないんですね。」
「でもね、一つだけはっきりしていることはあるよ。」
エレナは穏やかに微笑んだ。
「この宝石は、本物の希少な宝石で、鑑定結果には、『膨大な魔力を蓄積することで変化する』って表示されてたよ。」
「変化する……。」
「その"変化"が何を意味するのかは分からないけどね。」
エレナは一度言葉を切り、続ける。
「噂で聞いたことはあったけど、こんな鑑定結果が表示される宝石をあたしも初めて見たよ。」
「そんなに貴重なピアスを私なんかがつけてもいいんでしょうか?」
「これからどんな変化が現れるのかは分からないけど、身につけていれば、いつかその答えが分かる日が来るかもしれないね。大事にしな。そんで、何か起きたらすぐに伝えな!」
みくは嬉しそうに頷く。
「分かりました。大切にします。」
そう言って、みくはピアスを耳につけた。
淡い虹色の宝石が、窓から差し込む光を受けて静かに輝く。エレナは満足そうに微笑んだ。
「とてもよく似合ってるよ。」
その言葉に、みくは少し照れくさそうに笑った。
誰も気づかなかった。耳元で揺れる小さな宝石の奥で、数百年もの間眠り続けていた何かが、ほんのわずかに反応したことを。




