第2話 保存という名のスキル
「王都にいる間は、この部屋をお使いください。」
案内された部屋は、思っていたよりも広かった。最低限の家具が置かれ、ベッドも用意されている。
「三日間、ミク様のお世話をさせていただくことになりました。マリと申します。」
メイド服を着た女性が丁寧に頭を下げる。
「何かありましたら、いつでもお呼びください」
そう言って、部屋を出ていった。扉が閉まる。
一人になった未来は、ゆっくりと息を吐いた。
「……」
まだ現実感がない。異世界召喚。帰る方法はない。そして、自分は無能だと言われた。
「まずは、状況を整理しないと」
未来はマリに頼んでいた紙とペンを机に置く。今分かっていることを書き出していく。
・異世界に召喚された
・帰還方法はない
・魔力はない
・スキルは【保存】
・三日後、セレス村へ向かう
「保存……か」
自分の唯一の力。物を腐らせないだけ。そう言われた能力。
「でも……異世界なら、あれがあるんじゃない?」
未来は少し考える。
「ステータス…オープンだっけ?」
すると――
目の前に光の文字が浮かび上がった。
〈ステータス〉
名前:ミク
年齢∶18
性別:♀
スキル:【保存】
魔力:0
「本当に出た……」
驚いていると、その画面の上にに新しい文字が現れる。
『新たに【魔力保存】が解放されました』
「え……?」
続いて表示される。
【魔力保存Lv.1】
・魔素を保存可能
〈レベルアップ条件〉
・魔素を保存上限まで保存すること
(所要時間∶1h)
『魔素を保存しますか?』YES / NO
「魔素……?」
意味は分からない。しかし、試す価値はある。
「……YES」
『魔素を保存中です……』
何も起こっていないように見える。未来は椅子に座り、待つことにした。
――1 時間後。
『魔素の保存量が上限に達しました』
『【魔力保存】がレベルアップしました』
【魔力保存Lv.2】
・魔素を魔力へ変換可能
・変換した魔力を保存可能
『魔素を魔力に変換しますか?』YES / NO
「もちろん……YES。」
すると、さらに文字が浮かぶ。
『新たに【生活品保存】が解放されました』
『新たに【知識保存】が解放されました』
【生活保存Lv.1】
・硬貨を保存可能
・保存した金額を表示可能
・必要に応じて出し入れ可能
※硬貨10枚につき保存魔力を「1」消費
〈レベルアップ条件〉
・金貨10枚を保存
「お金も保存できるんだ……銀行ってこと?」
未来は国王から渡された袋を見る。中には金貨200枚。
「金貨10枚くらいなら、試してみてもいいかな」
机の上に金貨を10枚並べる。
すると――
『金貨10枚を保存しますか?』YES / NO
「……YES」
その瞬間、金貨が光に包まれて消えた。
『【生活品保存】がレベルアップしました』
【生活品保存 Lv.2】
・本人より小さい物であれば保存可能
・同じ物は10個まで状態を維持したまま保存可能
・保存期間は1年間
※1つ保存するごとに保存魔力を「1」消費
〈レベルアップ条件〉
・生活品を50種類保存すること
「……」
未来は画面を見つめる。最初に言われた。ただ物を腐らせないだけの能力。倉庫スキルと変わらない能力。
でも――
「これ、本当にそんな簡単なスキルなのかな……?」
まだ知らない。
【保存】という力が、ただ物を保存するだけではないことを。この能力がセレス村を、そしてこの世界の未来を変える力になることを。




