第19話 白髮の少女
「ミク様、なんだか嬉しそうですね。」
マリが微笑みながら尋ねる。未来は思わず笑みをこぼした。
「えへへ!エレナさんのお兄さん、本当にありがとうございます!」
ガレスは穏やかに頭を下げる。
「私はガレスと申します。またご縁がありましたら、その時はよろしくお願いします。」
「はい!」
未来も笑顔で頭を下げた。
「よし、終わったね。それじゃあ次は、あたしの番だ。」
エレナはガレスへ向き直る。
「ガレス、話があるんだ。」
そう切り出した、その時だった。
「おとうちゃーん!」
店の奥から、小さな白髪の少女が駆け寄ってきた。
「待ちなさい、リリー!」
その少女を追いかけるように、淡いピンク色の髪をした女性が慌ててやってくる。
「申し訳ありません!お話の邪魔をしてしまって……。」
未来は慌てて首を振った。
「私は大丈夫ですよ!こんにちは。可愛い子ですね!」
その時だった。マリが小さな声で呟く。
「……白髪。」
その一言を聞いたガレスの表情が一変した。未来たちの前に立つと、深く頭を下げる。
「お願いします。このことは、誰にも話さないでください。どうか……お願いします。」
未来は戸惑いながらマリを見る。
「ねぇ、マリさん。どういうこと?」
マリは少し言いづらそうに口を開いた。
「この国では……白髪の者は『呪い子』と呼ばれています。その存在が教会に知られると、保護という名目で連れ去られてしまうんです。」
未来の表情が曇る。
「連れ去られる……?こんなに小さい子供を?」
エレナは静かに頷いた。
「あたしの息子も、白髪だった。」
店内が静まり返る。
「7年前、教会に知られて……連れて行かれた。それから一度も帰ってこなかった。生きているのか、亡くなったのかも分からない。」
未来は言葉を失う。
エレナはリリーを優しく見つめながら続けた。
「だから、この子だけは守りたいんだ。魔道具のピアスで髪色を変えて、みんなと同じように普通の人生を歩めるように。」
ガレスは拳を握り締める。
「もし、あの頃にも魔道具が手に入っていたら……。レオンの人生も、変わっていたかもしれない。」
エレナは小さく頷いた。
「ガレス、あたしね。これからセレス村に向かおうと思うんだ。レオンを見たっていう人がいてね。」
「駄目だ!」
ガレスは思わず声を荒げた。
「あんな危険な場所へ行くなんて!」
未来は驚いて尋ねる。
「あの……。セレス村って、自然豊かな場所なんですよね?」
ガレスは目を見開いた。
「いったい、誰からそんな嘘を聞いたんですか?」
未来はゆっくりとマリを見る。マリは唇を噛み締め、震える声で言った。
「ミク様……申し訳ございません。私は……セレス村について話すことを禁じられていました。話したら、どうなるか分からないと……そう命じられていたんです。」
そう言うと、マリの目から涙がこぼれ落ちた。未来は優しくマリの肩に手を置く。
「マリさん、泣かないで。そんなふうに脅されていたら、言えなくて当然だよ。」
マリは涙を拭きながら小さく頷いた。未来は改めてエレナへ向き直る。
「エレナさん。実は私、明後日セレス村へ行くことになっているんです。だから今、その準備をしていて……。よかったら、セレス村について詳しく教えていただけませんか?」
エレナは未来をまっすぐ見つめ、静かに頷いた。
「……分かったよ。知っていることは、全部話そう。」




