第12話 楽しい思い出に
店を出ると、外はすっかり暗くなっていた。王都の街には魔導灯が灯り始め、昼間とは違う幻想的な景色が広がっている。
「もうこんな時間なんだ。」
未来は空を見上げながら呟いた。すると、お腹が小さく鳴る。
「……あ。」
マリは思わず笑ってしまった。
「ふふっ。」
未来は少し照れながら笑う。
「お腹すいたし、ご飯でも食べて帰ろう?」
「えっ?」
マリは驚いた表情を浮かべる。
「でも……今日はカフェでもご馳走になりましたし、お洋服まで買っていただきましたし……。これ以上お世話になるわけには……。」
未来は首を横に振った。
「いいの、いいの。それに、さっき私の代わりに契約書へサインしてくれたでしょ?本当に嬉しかった。」
マリは少し俯く。
「でも、あれは当然のことをしただけです。」
未来は優しく微笑んだ。
「私はね。いつか今日のことを思い出した時に。異世界へ召喚されて嫌な思いをした日じゃなくて、楽しかった思い出として覚えていたいんだ。」
「だから……。私のわがままに付き合ってほしいの。」
その言葉を聞いたマリは、少しだけ目を潤ませた。
「……はい。喜んで、お付き合いします。」
その夜、二人は王都の食堂で温かい夕食を食べた。今日あった出来事を話しながら笑い合い、気づけば時間はあっという間に過ぎていた。
宿へ戻る前。
「今日はありがとうございました。」
マリが深く頭を下げる。未来は笑顔で手を振った。
「こちらこそ!」
「また明日ね!」
「はい。また明日。」
そう言って二人は、それぞれの部屋へ戻っていった。
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翌朝。窓から差し込む朝日で未来は目を覚ました。
身支度を整え、部屋の扉を開けると――。そこには、すでに準備を終えたマリが待っていた。
「おはようございます、ミク様。」
「おはよう、マリ。」
未来が笑顔で挨拶を返すと、マリは昨日よりもどこか嬉しそうな表情を浮かべていた。
「本日は『Luna』へ向かいましょう!」
その声は、昨日までの遠慮がちなものではなく、やる気に満ちあふれていた。未来は思わず笑う。
「ふふっ、今日はマリのほうが楽しみにしてるみたい。」
「……そ、そんなことはありません!」
そう言いながらも、マリの表情は期待に満ちていた。
二人は顔を見合わせて笑い合うと、新たな一日の始まりとともに、平民街にある本屋『Luna』へ向かった。




