6話
「ええと、たしかこの辺りの…近道こっちだっけ」
なるべく教会には近づかないルートで、リヒおばさまの家へ向かう。
教会って、神様の教えを聞いたり、自分自身を見つめたりするところじゃないっけ?どうして魔法を使える人を集めて、何をしているんだろう。
私は歩みを進める。
小さな路地、建物と建物の間の少し狭い隙間。
パタパタと壁を走るリス。
あの角を左に曲がった先におばさまの家が…!
そう思った瞬間、
ずどん!と大きな音に目を瞑る。
肌にひんやりとした冷気があたり、
目を開けると、先ほど私の横を走り抜けたはずのリスが凍り、辺りが薄く霜が降ったように薄く凍っていた。
私の足元、靴も少し影響を受けて、足を動かせばパキパキと音が鳴った。
「これ、魔法…?!」
道の先を見れば、リヒおばさまの家とは逆の右の道に向かって、霜が大きくなり冷気が強くなっている。
もしかして、さっきの奴隷の子の…?!
こんなに大きな魔法を使ったということは、ピンチかもしれない。そう思ったとき、私は考えるより先に走り出していた。
「クソ!!離せ!!ゔっ…!」
幼い少年の声が聞こえる。
声のするさらに暗い路地の方へと足を踏み入れながら、私は肺に大きく息を吸い込んで怒鳴り込んだ。
「その子をどうするって言うんです?!」
私の目に飛び込んできたのは、
氷で拘束されて意識を失っている、ヴェールお兄ちゃんそっくりな少年と、冷酷な顔で振り向いたフードを被った男の人。
「一般市民が、奴隷の少年が捕まっていることくらい普通のことだとなぜわからない」
なんとも無い顔でそう言ってのけた。
その言葉と態度、そしてヴェールお兄ちゃんに重なる少年の姿に、私の堪忍袋の緒が切れた。
「奴隷?人の価値に優劣なんてないわよ」
もし、お兄ちゃんもどこかで魔法が使えることがバレてしまっていたら。こうなってしまっていたかもしれないと思うと、怒りがさらに強まる。
威勢の良い私を前に、表情の動かない男。
「うるさい小娘が。眠らせてやる」
男が魔法を繰り出そうと腕を構える。
私だって、何も無防備でこんな凄い魔法を出せる相手と戦おうだなんて思ってもいない。
でも私は私を信じているし、私は私の作ったマフィンを信じている!!
バケットからマフィンを取り出し、口に入れてから男の方に突っ込んでいく。
「は?」
突然マフィンを食べ出した私に一瞬呆気に取られたような反応をした瞬間、魔法を繰り出そうと伸ばされていた腕を掴んで背負い投げをした。
「私のマフィンは、本当に元気100倍になるんだから!!」
「ゔがっ…」
まさかこんな小娘に背負い投げされると思わなかったのだろう、油断した男は見事に投げられ、地面に背中を打ちつけた。




